爆発
正解はーーー引火させる♪
手から滑り落としたライターは、見事にガソリンに引火した。
凄い勢いで燃え上がる室内。ガソリンで濡れたありとあらゆる場所は、抵抗さえ出来ず炎に呑まれていった。
「ーーーーーーーーーーーーーーーー‼︎⁉︎」
其れは生き物とて例外ではない。
アステリウスの身体は、炎に包みこまれて焼かれていく。
どれだけ転がっても、どれだけ叫んでも、どれだけ動きまわろうとも、炎が弱くなることはない。
全てを侵すように、燃えていく。
何者にも邪魔は出来ない。勝手に消えるのを待つのみだ。
だが、俺が相手にしてるのは化物、人間ならココで終わりなんだがなぁ。
「ーーーーーーーーーーーーーーーー‼︎‼︎」
焼け焦げた部分が回復し、そして焼かれても治りやがる。到底理解出来ないような激痛だろうに、其れでも足を前に運び、歩いてきている。
その眼に宿るは化物の狂気。しかし、以外にも宿っているかもしれない。
ーーー悲しみ、とかな。
だとしてもな、俺は世界を救わせるわけにはいかねぇんだよ。
お前の夢を知っているが、こんなやり方じゃあダメだ。
「『世界で一番愚かな罪人』(カイン)」
目的の場所に辿り着き、其処にある物が出現した。
俺の隣に出現したのは、鉄塊と呼ぶに相応しい身体、中に詰まるは大量の火薬、海上戦にて獰猛な牙、艦にとって最恐の武器ーーー魚雷である。
mk46。其れがコイツの名だ。
魚雷の其の破壊力は、戦艦の大砲に勝るとも劣らないほどだ。本来コイツは水中で使われるが、そんなもんしるか。
体長は2mを超し、重さは200Kg以上する。
どーかんがえても両腕を負傷した俺に扱えるものではない。
だが問題はねぇ、もうすぐ来る。
「………来たか」
炎上しながらも、アステリウスはオレに狙いを定め、突進しようと構える。
しかし俺は警戒もせず、天井を見上げていた。
微かに聴こえる不協和音。そして感じ取れる〈魔術〉の気配。終わりだな………夢は夢の中にしかねぇよ。
「……だから眠っとけよ」
アステリウスが突進をする刹那、天井を突き破ってマロウがーーーバケモノ状態で降臨した。
「@aNd然傘g4242.♭●£<々々9′;間ノノノノgh0)]mw赤ラララmoe444;≒⇔$±溢シヤァAAAAAAAAAAAAAA‼︎‼︎」
絶叫、衝撃。アステリウスは危険を感じてか、動きを止める。
命取りになるとも知らずに。
「マロウ!」
呼ぶと顔を向ける。其れくらいの知能は残ってるらしい。
クイッと魚雷に視線を投げる。其れで察したのか、マロウは飛んできて魚雷を片手で持ち上げた。
200キロあるのにィ………。
「arrRr195★;※kl魔羅&_"〉¿nx÷\\#≪…命高塙デデJLbbj*23∥^^晴音i###賄新ZanpT ̄_,ァアアアアアアア‼︎‼︎」
大きく振りかぶり、天使がミノタウロスに向かって魚雷を投げた。 凄い絵面だな。
音速で飛ぶ鉄塊は直線にミノタウロスを狙う。流石の化物様も避けれないようで、目をまん丸にしてる。
魚雷は負荷がかかりながらもそのまま飛び、アステリウスに轟音をあげながら突き刺さった。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼︎⁉︎」
一瞬の閃光。 気が遠のくほどの爆音と共に、衝撃が身体を叩く。 痛い痛い!
オレの前にマロウが立っていたから、衝撃は殆ど消えていたが、マロウは傷付いてるように見えない。 少し汚れただけだ。
《魔術》の特性の違いとはいえ、オレのはホント使いがってが悪ィな。
その分マロウの特性は、存在昇華と肉体強化だからな。
存在昇華は、自分とゆう存在を高次元に置くコトだ。分かりにくいだろうから、天使を思い浮かべて欲しい。あーいった空想上の存在、人と比べ物にならない力を有する存在に自分を造り替えるコトだ。
肉体強化は読んで字の通り、肉体を強くするものだ。 この場合、存在昇華したコトにより、容れ物の強度が必要になるから、肉体を強化している。
こーいった点から、マロウは肉弾戦にかなり向いてると言えるな。
っと、そろそろこんがり焼けた頃か。
牛肉の焦げ肉を見つけるために、痛い身体を起こして爆発地を見てみる。
見事何もかも消し飛んでて、真っさらな状態だ。
床とかかなり頑丈なようで、表面は焦げてるが、傷一つない。魚雷に耐えるって硬すぎだろ。
そーやって見回すと、動いてる物があった。
「おーー? 生きてた生きてた。まさか身体が三分の一になっても生きてるとわ」
動いていたのはアステリウスだった。身体の三分の二が無くなり、殆ど身体が焦げているが、其れでも生きていた。スゲー生命力だと賞賛してやるよ。
だが、コレでコイツは動けない。もう勝手に事件解決させてもらうぜ。
直ぐにおさらばしようとしたら、マロウが立ち止まってた。ん?どーした?
何故かマロウは〈魔術〉を解き、アステリウスに自分の〈魔術〉を使った。何してんの?
「………俺の『越門辿人殺界』(カナンロード)の肉体強化で、この男の回復力を高めてる。もともとこの男の〈魔術〉の回復力と合わせれば、この状態からでも回復出来るだろう」
お前もお人好しだなぁ。ま、死んじまうかもって思ってたし、コレで心配ないだろう。
さておさらばといこうとしたら、扉から放たれるように新人が入って来た。
「所長! 大変ですッ!」
「どうした。てかお前今まで何処にいた?直ぐそこにいると思ってたらいなかったな」
「マロウ先輩呼んでましたって、何で分かったんですか?」
「気配だ」
「嘘つけって感じですよ。 ってそんなコトしてる場合じゃないです!外出てください外!」
「なんだよ〜、外に全裸の美少女がいるのかよ〜」
「いません、セクハラで訴えますよ」
やべぇ、新人の目が虫を見る目になった。話題変えよ話題。
「あー、分かった分かった。外に出ればいいんだろ」
身体痛いのにな〜と愚痴りながら、玄関で靴履けねぇよ!痛ぇんだよ!そう思ってたら人が出てきて履かせてくれた。 やっぱ交換出来ねぇかなぁ。
そんなポワポワな思考を一瞬で染めたのはーーー鮮紅。
目の前に広がる光景は、狂気の産物にしか見えない。
其処には、何人もの死体が転がり、其奴らの血で、世界を真っ赤に染め上げていた。