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5話 ドラゴンと少女

大変申し訳ないのですが、ルーライラの口調というか性格が自分が書こうとしていたものからあらぬ方向に行ってしまいましたので修正しました。

盗賊を追い払い、さて会話を始めようと思ったところにクゥ~と可愛らしい音が聞こえた。


ドラゴンの腹の音はそんな可愛らしいものでなく、そもそも食事は終わらせていたのでこの音は目の前にいる小柄な魔法使いのものだろう。


それに彼?も月明かりしかない中でもはっきりと分かるくらいに顔を赤くし、フードを目深にかぶり直して顔を隠していた。




あらら、空腹みたいだね。


顔を真っ赤にしちゃってまあ。


可愛いなぁ・・・って。


ん?彼ではなくて彼女?男の子なら腹の音が鳴ったところでさほど気にしないだろうけど女の子だったら気にするよね。


ということはフードをかぶっていて分からなかったがこの子は恐らく女の子か。


危ない危ない。


別に差別するつもりは欠片もないが男女の扱いを間違えたら友好な関係を築くのに支障をきたす。


早めに気づいて良かった。


とりあえずもう暗いことだし休める場所を作るかな。




ドラゴンは魔法使いの少女に首を振ってついて来るよう促した。


「・・・・・ついて行けばいいの?」


言葉が通じるかは分からないがそう質問するとドラゴンは歩き出した。


それについて行こうと歩き出したが足が震えてまともに歩けず、転けてしまった。


「あっ」


それに気がついたドラゴンが【重力操作】を使い、倒れこむ前に空中で止めた。


「・・・・っ?浮いてる!?」


驚いて何か言っているようだがドラゴンには理解できない言語なので返事はできない。


故に問答無用で背中に乗せ、そのまま自分が寝ようと思った湖岸に向かった。


道中、背中に乗せた少女が何か感動していたみたいだがたぶんドラゴンに跨って移動していることにだろう。


自分がもし人間で民家程の大きさのドラゴンの背に乗せてもらったら感動していただろうけど残念ながら今の自分は生憎と乗せる側であるからその感動を味わうことができない。


僕、変身魔法を覚えたら人間になってドラゴンに乗るんだ!と変な誓いを立てながら移動すること数分。


目的地に着いたが、ここからひと仕事が待っている。


また【重力制御】を使い背中に載せている魔法使いの少女を下ろして頭の中に設計図を思い浮かべた。


「・・・・・どうしたの?」


言葉の通じない相手にほとんど拉致に近い形で(お互いにそうは思っていないが)連れて来られたのにその相手が無言(お互いに通じる言葉を修得していない)で瞑想を始めたので純粋に何をするのか気にならない訳が無い。


なので言葉は通じなくてもニュアンスで分かるだろうと質問してみたのだが、その返答は驚愕の結果でもって返された。


突然ドラゴンが目を開けたと思ったら大きな光が現れ、その光が消えるとそこには一軒の小屋が出来ていた。


その小屋は人が住むには十分の大きさがありちゃんと扉と窓、しかも窓にはガラスがはまっていた。


見た目は小屋なのだが艶のない金属でできているようでかなり頑丈そうだった。


「・・・っ!?いきなり小屋が・・・・・何故?」



魔法使いの少女は驚き、疑問を口にしたが言葉が通じないので答えは返ってこなかった。


ドラゴンはとりあえず中に入ってもらおうとスキルで小屋の扉を開け魔法使いの少女と小屋を交互に指さした。


「・・・・・私が小屋を使う?」


彼女も自身を指さし、その次に小屋を指さした。


それを見たドラゴンは頷きその場から離れた。


「あっ・・・・・・中で待ってよう」


ドラゴンが小屋に入るよう指示したのだからまた戻ってくるだろうから小屋の中で待ってようと思った。


「・・・これは」


外見は金属製という事以外普通の小屋であったが、中身はまるっきり別物であった。


まず入ってすぐに金属製の机と椅子のセットがあり壁際には寝台で硬そうではあるが地べたで寝るよりマシだろう。


そしてさらに奥、小屋の隅に小屋の四分の一ぐらいのスペースが個別で部屋になっており扉を開けるとそこには魔道具であろうお湯の出る蛇口と湯船そして排水口。


つまりは浴室が完備されていた。




こんなところで魔道具付きの湯船を見るとは思わなかった。


そんなもの貴族や一部の豪商でもなければ所持することなんてできないというのに、ドラゴンは少し目を瞑っただけで小屋を出現させた。


恐らく何かのスキルを使ったはず。


だけどドラゴンが小屋の外観だけじゃなく内装や家具、そして魔道具なんてものを知っているものだろうか。


・・・・・考えても答えはでない。


待っている間に汗を流しておこう。


空腹なのは辛いが日帰りのつもりで食料の用意はしてなかったので今日のところは我慢する。


でも頑丈そうな雨風をしのげる小屋があるので良かった。


・・・・・それにしてもあの盗賊達はあまりに失礼。


私にも少しは胸があるというのに。


確かに女性の平均値より小さいだろう。


・・・・・・・・はぁ。


彼女は自身の平坦な体つきを眺めため息をついた。


疲れを取るため浴室の中にゆっくり浸かっていると、小屋の外から物音が聞こえた。


恐らくドラゴンが帰ってきたのだろうと思い浴槽から出て着替え、外に出た。


「・・・・・帰ってき、た?」


するとそこではドラゴンが器用に爪でイノシシを捌きどこからか金属製の串を取り出して丸焼きにしている姿があった。




ん?ポカーンとしてどうしたんだろう?


って、そっかドラゴンが大雑把な丸焼きとはいえ調理していることに驚いたのか。


まあ仕方がないよね。


ドラゴンは彼女の表情に疑問を持ったがすぐさま理解し苦笑した。


しばらくしてイノシシが焼きあがり、切り分けてスキルで作り出した銀食器に盛り付けいまだ唖然としている少女に渡した。


「・・・・・・・ありがとう」


ドラゴンは少女が食事を終えて落ち着いたところで今度こそコミュニケーションをとろうと【古代竜言語】で話しかけた。


〔はじめまして〕


少女はその言葉を理解出来なくてもドラゴンが言葉を発したことに驚いた。


「っ!?・・・・・・貴方は喋れるの?」


だがしかしお互いに使っている言語が違うので会話が成り立たない。


そこで少女は思い出した。


念のためにと覚えておいた精神魔法の『テレパシー』を使えば意思疎通をはかれるのではないかと。


さっそく試してみよう。


杖を構え呪文を詠唱する少女をドラゴンは黙って見つめていたが詠唱を終え魔法が発動し少女から声をかけられ驚いた。


《・・・・・聞こえる?》


《ん!?頭に声が響く。いったい何が?》


《聞こえた。・・・・・私はルーライラ・オルスト・ルイカーン》


少女、ルーライラは口を動かしてはいないが礼儀正しくお辞儀しながらそう自己紹介をした


それを見たドラゴンは自らの胸に手を当て頭を下げ自己紹介を返した。


《ご丁寧意にどうも。僕は鋼装竜、ドラゴンの一種だよ。固有の名前は無いから名乗れないのだけどそれは見逃してもらえるかな?》


意外と礼儀正しいドラゴンに驚きつつも会話が成立したことに喜んだが、申し訳なさそうに謝ってくるドラゴンに慌てて返事した。


《・・・・・大丈夫》


《そう言って貰えると助かるよ。でもまあ、名前が無いと呼びづらいだろうからこれからはアルマと名乗ることにしよう。気軽に呼んでくれて良いよ?》


《・・・・・分かった。アルマ、私はルーでいい》


気さくなドラゴン、アルマに少々面食らいながらそれならと名前で呼ぶことにした。


《うん。分かったよルー》


《・・・・・それとありがとう。アルマが居なければあの時私は》


先ほどの事を思い出したのだろう。


自身の体を抱きしめながら少し震えていた。


《うん、どういたしまして。間に合って良かったよ》


アルマから労わりの感情を感じ少し気が楽になったところで疑問を解決しようと質問した。


《・・・・・何故、アルマがこの森に?》


大抵のドラゴンは自身の属性に合う秘境に引きこもっているため半ば伝説と化しており、一般的にはドラゴンといえば亜竜のことであり真のドラゴンは御伽噺の中でその名を語られるのみである。


故に、このアルマと名乗ったドラゴンが何の目的で人の領域に現れたのか疑問に思った。


《いや何。人間達に興味があってね。それでこの姿のままじゃ人間達は恐れ、交流するどころじゃないし君達の言葉を覚えてないから理解できない。なので変身魔法と君達の共通語を学ぶため魔法使いを探していたんだよ》


アルマは少し恥ずかしそうに頬を掻きながらそう言った。


《・・・・なるほど。でもごめんなさい、変身魔法については分からない》


ルーライラはせっかく恩を返せると思っていたが自分の分野から外れていたので気落ちしてしまった。


《いや、気にしなくて良いよ。そう簡単に行くとは思ってなかったからね。それにルーが『テレパシー』があれば意思疎通をはかることが分かったんだから。久しぶりに会話が出来て嬉しいよ》


《・・・・・・そう。あ、言葉については教えることができる。『テレパシー』で会話もできるから》


《うん?教えてもらっていいのかな?どのぐらいの時間を拘束するか分からないよ?》


《・・・・・・大丈夫。助けられた恩を返さずにいては両親や師匠に合わす顔が無い。・・・・・そういえば師匠なら変身魔法について何か知っているかも?》


《ホントかい?それならルーの師匠さんに紹介して欲しいのだけれど》


《・・・・・ん。ただ、今受けている依頼の達成と盗賊についての報告をギルドにしないと》


《うん、もちろん良いよ。それなら明日はそのギルドがある街まで送って行くよ》


《・・・・・ありがとう。報告をするギルドはここから歩いて半日ぐらい。でも師匠がいる都市まで馬車で三日はかかる》


《ふむ、馬車で三日なら明日、ギルドに報告した後に出発しても日が暮れる前には着くよ?》


《・・・・・すごい。馬車で三日の距離を一日。でもそれなら早めに師匠を紹介できる》


《移動は任せておいて。空を飛べば直線だし速度を出しても迷惑はかからないからね》


《・・・・・お願い。それと質問がある》



《うん?いいよ。答えられることならね》




そしてルーライラの質問に対しアルマは当たり障りの無い範囲で答えていき、アルマはルーライラに生活や文化、そして師匠の人となりについて話したりし、その後明日に備え眠った。


その夜、湖岸に現れた小屋から人間の匂いを嗅ぎつけた肉食の魔物や動物達がいたがそのすぐそばに眠る圧倒的強者の存在にまったく近寄ることが出来なかった。


たとえアルマが居なくてもその小屋は鍵を閉めてしまえばこの森に住む魔物程度の攻撃ではビクともしないのだが。


そうして無自覚にルーライラを守護するアルマの夜は更けていった。

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