4話 新たな出会い
一応この話に出てくる主要人物のイラストを載せてますが自分が描いたものなのであまり見たくなかったら挿絵OFFでお願いしますm(_ _)m
ほぼ変わっていませんが少し修正しました。
襲撃されていた馬車を助けてから一月後。
実際に魔物を相手に自身の身体能力だけで戦いサバイバルな生活を続けていたが周りには魔物しかおらず会話のない日々に寂しくなってきていた。
自分の戦闘能力はだいたい確認できた。
ここらへんの魔物では相手にならずほとんどが瞬殺、もしくは恐れをなして逃げていくばかりだったので弱い魔物しかいないのだろうと思っているがこの山に住む魔物は最低でもBランクであり、一般的には一流の冒険者が十全な準備をして挑むような場所であるのだが桁違いの戦闘能力を持つため本人?本竜?の感覚がかなりズレてしまっている。
さてこれからどうするかな。
一応、人間と遭遇しても問題が起こらないよう変身魔法と共通語を覚えることを目標に行動しようと思うけど当てがないからなぁ。
魔法使いなら変身魔法のことを知ってるかもしれないから魔法使いを捜すのがいいかな。
魔法使いを探すと言ってもいきなりコミュニケーションを取ろうと近づけば怖がられるだろうから何か困っているところを助けるとかして危なくないですよ、って伝えないとね。
恐竜から助けたときに姫様に話しかけていればこちらが意思疎通をはかろうとしていることが伝わったかもしれない。
あの時は初めての戦闘だったから考える余裕が無かったしなるべく怖がらせないように早めに離れようと思ってたからなぁ。
うーん、姫様達を助けた森の方に行くか山を越えて反対側の草原に行くかどっちにしようかな。
姫様を頼ってみるのもひとつの手かもしれないけど目立ちそうなんだよねぇ。
しかもあの森、何度か言ったけど最初にあった恐竜は一度も見ていないし、いくら弱いといってもあの森に住む魔物と恐竜じゃ比べ物にならない。
あの森にはゴブリンや角の生えたウサギとかちょっと大きめの猿の群れなど比較的魔物の中でも初心者向けっぽいのしかいなかったし、何だか面倒な事がありそうだから今のところは近寄りたくないんだよね。
人の姿になれたら観光に行ってもいいかもしれないけど。
よし!森とは反対に行こう。
うん、それがいい。
そうと決まれば草原側に向かおう。
まあ、ただ旅をしている人に見つかったら騒ぎになるだろうけど高度をとって飛行すれば下からは見つからないだろうしこっちからはしっかり見えるから問題ない。
さてと行きますか。
飛行を開始して数時間後。
数時間の飛行による疲労もないが夜になったので休憩のため草原を抜けた先の森にある湖へ降り立った。
はあ、なかなか困ってる人はいないなぁ。
まあ、いい事なんだろうけど人と接触する機会がない。
それにしてもホント異世界だね。
空から見渡してみたけどほとんどが草原か森もしくは山とか自然ばかりでたまに村が見えるくらいで村同士も結構離れてたりするし、そうそう人間を見ることもないからねぇ。
別に夜でも昼間並に見えるから夜に移動してもいいんだけどさすがに街や村に戻ってるだろうし夜に遭遇すると余計に怖がられそうだから活動は昼間にしておこうかな。
そう言って瞼を閉じ眠りにつこうとしたが遠くから何か言い合っているような声が聞こえた。
ん?何か聞こえる。
もしかして人がいるのかな?夜中にこんな森の中で行動してるなんて冒険者かそれとも盗賊?
降りてきた時は居なかったはずだから結構遠くにでもいたのかな。
まあいいか、せっかくだから近づいて様子を見てみよう。
目覚めてからの数日間で食料確保のために隠行を身に付け今では巨体にも関わらず、視界が悪い場所ならば10m付近まで相手に気づかれず接近できるようになっていた。
しかし本人は食料確保のためとはいえ隠行を行うドラゴンってシュールだ、と思っている。
気配を殺し騒ぎが起きている場所までほとんど無音で接近し見つかりにくいよう木と木が重なり相手からは視認しずらい位置に陣取った。
そこにはフードをかぶり杖を持った小柄な人物が錆びた剣や斧を持った小汚い男達に囲まれていた。
小柄な人物は杖を構えてはいるものの呼吸は乱れフードもところどころ土や葉っぱ等が付いており恐らく森の中を走り回ったのだろうと思われる。
周りを囲んでいた小汚い男達が小柄な人物に何か言っているようだがやはり何を言っているのか分からない。
まあこのような時は恐らく“有り金全部おいていきな”とかそういった類のことだろう。
これはこれは。
待っていた展開みたいだね。
見た感じ小柄な方は魔法使いっぽいしビンゴかな。
囲んでる人達は恐らく盗賊とかそんなんだろうし邪魔して問題ない!・・・・・・はず。
おっと考えていたら魔法使いさんが危ない。
まずは姿を見せてどう反応するかな。
相手の反応を想像し少し楽しそうに月が雲に隠れるのを待ち夜の闇に包まれ行動を開始した。
月が雲に隠れた瞬間に盗賊達が魔法使いに襲いかかろうとしたが突然、木々の間から巨体が現れた。
彼らはこの辺を根城にしている盗賊でどんな魔物が住んでいるか、どこに隠れられるか、この森を抜けるにはどこをどう行ったら最短か熟知していた。
なのに目の前に現れた大きさの魔物は今まで一度も見たことがなかった。
こんな大きさならそうそう隠れられる場所なんて限られるうえに森の中では目立ってしょうがない。
だが、この魔物の接近に気がつかなかった。
彼らの中には食い詰めた斥候系の技能を持つ元冒険者がいたにも関わらず誰ひとりとしてその存在を感知することができず魔法使いとの間に入られてしまった。
まずい、あの魔物が何なのか分からないが絶望的に格が違う。
そう思ったとき雲が晴れ月明かりにその姿が照らし出された。
全身が鋼色の鎧のような鋼殻に包まれ二本の角を持ち、巨大な翼を持つソレが。
「ド、ドラゴンだぁぁー」
彼らのうち誰かがそう叫んだ途端、思考停止に陥っていた者たちが一斉に逃げ出した。
「た、助けてくれー!」
「逃げろ逃げろ!」
「喰われるぞ!」
先程までは自分たちが追い、獲物を狩る側だったがドラゴンが姿を現した途端一気に逆転してしまった。
彼らは皆死に物狂いで逃げ惑い、後ろからドラゴンが追いかけてきてないことに安堵し、それでもなお距離を取るため自分たちのアジトへ急いだ。
おお、見事な逃げっぷり。
でもドラゴンに遭遇したら僕だってそうするだろうけどね。
翼の内側にいるこの子からはこちらに対して怯えの感情を見せていない。
むしろ好奇心満載の視線を感じる。
魔法使いというのはやはり研究者気質なのだろうか。
とりあえず意思疎通をはかるため【古代竜言語】で話しかけてみるかな。
SIDE ????
迂闊。
私の頭の中はその思いでいっぱいだった。
今回私が受けた以来はザウスの森に住むゴブリンを指定数討伐するという簡単な仕事だった。
冒険者に登録してまだ数日しか経っていないが、現役の冒険者である師匠に知識は合格点をやれるが実戦経験が足りないから冒険者として腕を磨いて来いと言われ少々不服に思いながらも師匠の言葉には逆らえない、と渋々冒険者をやっていた。
魔法使いとしての腕を磨くため討伐系の依頼ばかり受けていたが、師匠から鍛えられており並みの冒険者よりは実力はあると自負してはいるが冒険者ギルドに登録したばかりなので最低のFランクであり、受けられる依頼はゴブリンやホーンラビットなどあまり手応えのない魔物の討伐か薬草の採取等しか無い。
なので今回もゴブリン討伐の依頼を受けていたのだが本当に迂闊だった。
ギルド内でもザウスの森付近に盗賊らしき人影を見たと情報が流れていたのに対して気にせずにいつも通り一人で依頼を受け森に来ていた。
森に到着してからは順調にゴブリンを倒していき討伐証明部位である耳を剥ぎ取り、指定された数を集め終わってそろそろ帰ろうかと思っていたとき周囲を囲まれていることに気がついた。
「・・・・・一体何の用ですか?」
囲いの中から一人突出していた恐らく彼らのリーダーだろう人物に睨みつけながら話しかけた。
「おお、怖い怖い。なかなか活きがいいじゃねか。そんなに睨みつけんなよ。何の用かは言わなくても分かってんだろう?大人しく有り金と身ぐるみ全部よこしな。いくら魔法使いとはいえこれだけの人数に囲まれちゃあ手も足も出やしねぇだろう?」
確かに熟練の魔法使いである師匠ならともかく未だ見習いの域をでない魔法使いである私では彼ら全員を倒す事などできないだろう。
「それにしてもお頭。こんな坊主じゃなくてガキでも女だったらよかったっすねぇ。売り払う前にちったぁ愉しめたのに。」
「ああン?俺はもっと女らしい身体つきが好みなんだよ。ありえねえがこの坊主が女だったとしても犯ろうとはおもはねぇな。」
「そっすか?ガキを無理やりってのもいいもんですぜ?」
「そのガキ、女みたいな格好してるが実は女だったりしねえのか?」
「分かってねぇな。これはあれだろ最近流行りの男の“娘”ってやつだろう?じゃなきゃ鎧を着けてるとはいえこの平坦さはねえぜ。」
男と勘違いされてるのは都合がいいけど、流石にムカつく。
何ですか男の娘って。
私だってホンの少しくらいは膨らみが有る・・・・・はず・・・・いや有る、といいなぁ。
いや実際この鎧は男性が使っていたものらしいが師匠から“まあ、貴女なら問題ないでしょうね”と言われてなんのことか分かりませんでしたが。
良い物らしいし貰える物ならと思い、使っていたが改めて考えてみると屈辱。
・・・・・思考があらぬ方向に行ってました。
しかしこれは本当にマズイ。
男だと思われているうちは貞操の危機が来ないだろうが、身ぐるみ剥がされ下着姿になったら流石に女だとばれます。
このまま大人しく捕まるなんて選択はありえない。
何とか隙を突いて包囲から抜け出さないと。
私が攻撃に使えるの攻は水魔法の中級まで。
その中で制圧力が高いのは『アクアスプレッド』
彼らが話し込んでいる間に聞こえないよう詠唱しておく。
「・・・・だな、っておい!聞いてん「アクアスプレッド!」っなあ!?」
詠唱に集中していた私が話を聞いてないことに気がついた男が怒鳴ろうと意気込んだ瞬間その男に向けて魔法をぶつけ包囲が崩れたところ走り抜けた。
「っち!てめら逃がすんじゃねぇぞ!」
いきなりの魔法に驚いていたようだが私が包囲を抜けた瞬間にすぐさま他の男達を怒鳴りつけ追いかけてきた。
ゴブリンを討伐し終わった頃は夕方ぐらいだったが森を走っているあいだに日が落ちあたりは月明かり以外は光源はなく木々のあいだは闇に包まれ正体不明の恐怖を感じる。
夜間行動を得意としているわけでもなく普通の人より体力はある方だと思うが、冒険者の範囲でならやはり体力はない方に分類される私は途中途中木の根っこに足を取られ転けそうになったり木の枝にひっかかって少し頬を怪我したりしながら開けた場所を目指した。
既に自分がどこに向かってるかは分からないが後ろから聞こえてくる怒号に押されひたすら走った。
しかし成人男性と未成熟な私の体格差は歴然で彼らがダウンするまで体力が持つはずもなく、ついに追いつかれてしまった。
「やっと諦めたか。さんざん走り回りやがって。奴隷として売り払うから少しは優しくしてやろうと思ったがやめだ。お前ら!歯向かえないようきっちり教育してやれ!」
「「「「「おう!」」」」」
私はすでに体力がつきすでに逃げ場はないという状況を認識し改めて恐怖を感じた。
彼らは恐らくこれから暴力を振るってくるだろう。
女だとバレたら辱めを受け奴隷して売り飛ばされる。
そんなのは嫌だ逃げなければ。
そう思っても体は限界で一歩も動く事ができない。
月が雲に隠れあたりを闇が覆い、それに合わせて彼らが襲いかかってくるその瞬間をただ待っていることしかできず目を閉じようとしたとき。
ソレは現れた。
今までどこに隠れていたのか分からない。
いや、そもそも隠れていたのが信じられない程の異質さ。
未だ月は隠れ暗闇に浮かび上がる影はとても大きく一般的な民家を余裕で超える大きさだ。
ソレが私と盗賊の間に音もなく現れた。
この巨体が音もなく現れたというのは何らかのスキルだろうか。
でなくばこの魔物の技術という事になるがありえない。
だが何故かこの魔物に対してそこまで恐怖を感じてはいなかった。
それは私を守るかのように広げられた翼のおかげか、畏怖は感じても害意は感じないからだろうか。
盗賊達はいきなり現れた魔物のせいで動きが止まっていた
そして雲が晴れ月明かりが魔物の姿を照らし出しさらに驚愕した。
その魔物は全身に鋼色の鎧を纏ったドラゴンだった。
その姿を見た盗賊達は悲鳴を上げ、次々と逃げていった。
後に残ったのは私とドラゴンだけ。
私を食べようとしている訳ではないだろう。
それならばあんなふうに現れたりせず問答無用で襲いかかってきただろう。
このドラゴンからは知性を感じる。
何か私に用があるのだろう。
このように貴重な体験は滅多にできないし助けてもらった恩もある。
私に出来ることなら答えたい。
そう思いこちらを見つめるドラゴンに声をかけた。