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百妖の桜巫女 ~神宿し乙女は、愛を知る~  作者: 今際ゆき
零れ桜は、恋人たちを祝福す

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聖地・冥仙神宮


「ここに美影ちゃんを連れて来た後に⋯⋯僕以外の『白朧』の面々を集めるのが得策かな⋯⋯ふわあ〜ねむいよ⋯⋯」


ねぐせの目立つ白銀色の髪と瑠璃色の瞳が神秘的な、零と同じ年回りの青年がふわあとあくびをした。



世界遺産・(めい)(せん)神宮。

京都の金閣、銀閣に次ぐ名所であり、国の重要文化財にも指定されている。


堂々と聳え立つ緋色の鳥居の他、死を迎える際の自分の顔を映すと噂される「(かくり)()()姿(すがた)()」はテレビでも頻繁に取り上げられている。


また、「(けん)()()(こい)(むすび)」という(こい)()(くじ)を恋人と一緒に引き、引いた紙に書かれた通りにすれば幸せな結婚が叶うというおとぎ話のような言い伝えもある。


様々な見所があり、神社に堅苦しいイメージを持つ若者からも絶大な人気を誇る冥仙仁神宮は只の魅力あふれる観光名所ではない。



何物にも染まらぬ本殿の漆黒の屋根が特徴的な本堂。


大きく羽を広げる孔雀(くじゃく)が描かれた群青色の壺と、水墨画の掛け軸が目を引く書院造の和空間が心を癒やしてくれる。

客間と客間をつなぐ渡り廊下の下では錦鯉が優雅に泳ぎ回り、ししおどしがカーン、カーンと規則的に鳴り響き、清流の軽やかな音と調和する。


どこを眺めても自然の緑と風物が織りなす和を堪能することができる。


――冥仙神宮は人気の観光名所であり、神在の原点ともいえる場所だ。


人類で初めて神との調和に成功した黒条十六夜の生家であり、毎日多くの神在が一般人に紛れて参拝にやって来る。



「眠そうにしとんなあ五月雨。そんなんやったらモテへんぞ〜」


濃紫の髪の、糸目の男が薄笑いを浮かべながら青年――五月雨の肩を抱いた。



一九七センチという長身と、感情の見えぬその笑顔に、五月雨は一瞬ひるむ。


「急に来ないでくださいよ。鏡介さん」


鏡介の手を払い、「僕がモテない話はおいといて⋯⋯」と話を続ける。


「わかってるよ。美影ちゃんと“般若”のことやろ?」

「ええ」

「まあ、零くんがいない隙を狙えばいいやん」

「若干心は痛みますけど、そうしますか」


次の瞬間、二人の姿は忽然と消えた。


胸元で白銀色の紋章が怪しく光った。


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