二人の幸せと葛藤
本当にすみません。
中々調子が戻らず、千文字以上書くのがしんどい日が続いています。
それでも、定期的に投稿を続けていきたいと思います。
『美影。妖怪のことは俺に任せて、安心して学校へ行ってくれ』
同棲生活を始めて一週間が経った夜、二人で読書をしていた時に零からそう切り出された。
『もう君に傷付いてほしくない。だから、美影が抱えてきた不安を俺に預けてほしい』
零は美影の手を優しく包み込み、そのまま肩を抱き寄せた。
美影も、温かく頼もしい零の手をそっと握り返し、遠慮がちに頭を彼の肩に乗せた。
一つ屋根の下で、大好きな零と手をつないで過ごす静かな夜は“幸せ”以外の何物でもない。いっそこのまま時間が止まってくれたら良いのにと、ひそかに願ってしまった。
零に出会えたことが、美影の人生で一番の幸運であり、幸福だった。
両親と兄を失くし、閉ざされた心が、零の笑顔と言葉で溶かされていった。
零を本当に愛し、慕っているからこそ、彼への罪悪感が募っていった。
零は美影が戦わずに済むよう、これまでより多くの仕事を一人で引き受けるようになった。
酒呑童子ほど強力な妖怪は出現していないとはいえ、零にかかる負担は相当なものだった。
『零くん。私に手伝えることはない?』
『…毎日元気に過ごしてほしい。あと……時間がある時は俺のそばにいてくれ』
仕事で疲れがたまっていても、零は常に優しい笑顔を向けてくれた。疲れて機嫌を悪くし、美影に冷たい態度をとることもなかった。
――そんな零を、恋人として一番近くで支えたい。
“鬼化”というハンデが無ければ、小さな少女の願いはすぐに叶っただろう。
しかし、現実は甘くない。
戦闘に参加すれば、鬼化が進行する事は確実だ。心優しい零は一般人と美影のどちらも助けようとするだろう。妖怪の脅威から人々を守るはずの神在が、新たな危険を生むことなどあってはならない。
十年修行を積み、大抵の妖怪は瞬殺出来る実力を身に付けたのに、一番大切な人の支えにすらなれない自分に心の底から腹が立った。その原因を作った般若への憎しみも増していった。
黒条本邸から、黒条十六夜が遺した般若に関する書を持ち出し、片っ端から読み漁った。古語で書かれているので、読むには相当な時間と労力を要した。
しかし努力は報われず、鬼化を解決する術は何一つ見出せなかった。
「ごめんね……零くん」
撫子色の瞳から、涙が零れ落ち、美影の頬を静かに伝った。




