約束と愛言葉〜弍〜
「ありがとう。零くん」
美影への深い愛情を込めた、最高のプレゼントだった。零の温かな思い遣りが、孤独に耐えてきた美影の心を優しく溶かしていく。
ネックレスは、お世辞抜きで美影の好みにぴったりだ。
が、本当に嬉しいのは、零が真剣に考えて選んでくれたことだった。美影は箱から丁寧に取り出し、ネックレスをつけた。
「こんな綺麗なもの……本当にもらっていいの…⋯?」
大好きな零からの贈り物に感動するあまり、美影の撫子色の瞳は潤んでいた。
今までのような悲しみや苦しみの涙ではなく、本当に幸せな嬉し泣きだ。零はそんな彼女を愛おしく思い、そっと抱き寄せて頭を優しく撫でた。
人が来ないので、二人は少しの間そのまま抱き合って、心と身体が癒されていくのを感じていた
。
「美影。これから先、君との時間を沢山作りたい。早く家に帰って、君とくだらない話をして笑いたいと思う。…⋯ただ、毎日無事に帰って来られる保証はない」
神在は、常に想定外の事態を予測して最善の行動を取る義務がある。その「想定外」は勿論悪い意味だ。酒呑童子を圧倒した零が負けることはまず有り得ないが、「絶対」はない。
元々規格外の存在である妖怪のことだ。いつ零を超える強力なものが出現するか分からない。二人は、その「想定外」によって日常が破壊される恐怖を誰よりも理解していた。
「そのネックレスは、“約束”だ。何があっても必ず君の元へ帰る。絶対に一人にはしない」
零は美影の手を包み込むように握った。何の罪もない少女は、愛する家族を失った上に、般若という未知の恐怖に苦しめられてきた。
――もう二度と、彼女に寂しい思いをさせない。必ず般若から解放して、幼き日の笑顔を取り戻す。
それが、亡き将彦の願いであり、零の一番の幸福だった。
美影は零の手をしっかりと握り返した。不安が完全に消えた訳ではない。今も心配事は尽きない。神在として生き続ける限り、常に命の危険に曝されると言っても過言ではない。そんな理不尽だらけの世界でも、心から信じられるものはある。
―目の前にいる、愛する人の真っ直ぐな言葉だ。
「私も絶対にあの家に帰って、零くんに会いたい。“約束”する。あと…⋯」
「大好き」
桜吹雪が、二人を祝福するように舞い、夜風と共に儚く去って行った。
「絶対に俺の方が好きだ」
「私の方が好きだもん」
世界一幸せな口喧嘩をしながら、二人は手をつないで桜の絨毯の上を歩いて行った。
――命ある限り、この人の隣にいよう。
今この瞬間、二人はそう誓った。
たくさんの“愛言葉”は、不器用で愛おしい二人にかけがえのない“幸せ”をくれた。




