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百妖の桜巫女 ~神宿し乙女は、愛を知る~  作者: 今際ゆき
零れ桜は、恋人たちを祝福す

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12/39

幼馴染から恋人へ

ペンネームを、今際ゆきに変更いたしました。

またよろしくお願いします。


『私は…⋯榊を使い過ぎると般若の姿になるの……』


十年越しに記憶を取り戻し、美影は零への想いに気が付いた。

そして、彼女を最も悩ませてきた鬼化について、彼に正直に打ち明けた。

憎き仇に瓜二つの姿を、大好きな零に見せるのは怖かった。

拒絶されることも覚悟していた。が、彼は美影を優しく抱きしめ、改めて「好きだ」と伝えてくれた。


酒呑童子を圧倒する程の能力を持つ零は、美影の中に潜む般若の力を打ち消すことが可能だと分かった。


『俺は一人で鬼を倒せるくらい強くなった。だから、君が般若のことを気にする必要はない。いざという時は俺が止める。…⋯心配なのもそうだが、何より、君が好きだから一緒に暮らしていきたい』


美影は迷わず「よろしくお願いします」と返事をした。無論、美影も鬼化を直してもらうために同居を承諾した訳ではない。真面目で、不器用で、誰よりも優しい彼を一番近くで支え、笑顔にしたいと思ったからだ。




「いつもより寝ちゃったな…⋯」


美影はい草の香と、吹き抜ける優しい春風を感じながら朝を迎えた。厭らしい親戚のいない、零と二人だけの新しい家だ。

ふかふかの布団を綺麗に畳み、必要な教科書類をまとめて学校へ行く準備を整える。


『美影はこの部屋を使ってくれ。俺は隣の部屋にいるから、何かあれば…⋯いや、なくても…⋯呼んでほしい』


零は、小さいながらも上品で落ち着いた雰囲気のある和室を美影のために用意してくれた。

不安と孤独で気が滅入って、眠れぬ夜を過ごしていた美影には、安心して眠れることが何よりの幸せだった。


『さすが美影はんやな~めっちゃ元気になっとるやん』


よく寝たお陰で、美影は見事に回復を遂げていた。

相当な深手を負い、熱も一時は四十度まで上がったが、彼女の常人離れした体力と零の存在に助けられ、途轍もない速さで全快を迎えた。

美影ファーストの夜叉は、早速姿を現し、安堵している。美影を心配するあまり、熱が下がらない時、大袈裟に泣いては美影の睡眠を妨げ、零にお叱りを受けていた。

偶に迷惑な夜叉だが、良い相棒であることに変わりはない。


「零くんが隣にいてくれたから、気持ちが楽だったのかも。夜叉もありがとう」

『それはほんまに良かった。美影はんを一番に想ってくれる人がいて。…⋯でも腹立つわー。顔良い上に優しいし、一途やし、広い屋敷もあって…⋯ワイ勝ち目ないやん!』


零への対抗意識を燃やし、一人で悔しがって地団駄を踏む夜叉を微笑ましく思いつつ、今の幸せを噛みしめていた。

今日からは、零と二人手を取り合って歩んでいく。普段は何とも思わない些細な出来事も、彼が一緒ならきっと愛おしく感じられるだろう。



「美影。おはよう。朝ごはん、一緒に食べないか?」


大好きな声が聞こえてきた。美影は満点の笑顔を浮かべ、襖を開けた。流水紋の浴衣を着た零が彼女を出迎えてくれた。部屋着姿なのだが、朝から眩しい程の美しさを放っている。


「零くん、今日からよろしくお願いします」


美影は小さく礼をした。


「俺の方こそ⋯⋯よろしく⋯⋯お願いします」



二人の幸せは、始まったばかりだ。




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