4話 入学準備
あれからもう二か月近く経った。
師匠が色々と手続きをしてくれたようけれど、僕は特に何もすることがなかった。
本を読んだりして軽く勉強しながら日々を過ごし、気づいたら入学が迫っていた。
「入学準備についての書類が届いたよ。揃えないといけないものが沢山あるから街に買いに行こうか」
「わかりました。どんなものを買うんですか?」
「ここに書いてある通りだよ」
師匠は必要なもののリストを見せてくれた。
見たことのない沢山の物の名前が書かれている。それらを揃えに行くことになんだかわくわくした。
「早速出発しても大丈夫かな?」
「はい!」
師匠は以前と同じように、外に出て僕を抱えると背中の翼を使って飛び立つ。
空中では遠くに飛んでいる人影が数体あった。
しばらく移動していると、栄えた街が見えてきた。
街は賑わい、僕以外にも入学準備をしに来ているような親子が何組かいた。
「制服から見に行こう」
しばらく歩いて行くと、《ゲマ服店》という看板を掲げた店があった。
中に入ると、様々な服がかけられている。
少しすると、奥から急いで男性が向かってきた。
「いらっしゃいませ!」
「こんにちは。制服の採寸をお願いできるかな?」
「ええ、もちろん。奥へどうぞ」
案内されて店の奥へ向かう、師匠が学校名などを告げて、僕は鏡の前に立たされた。
改めて自分の姿をちゃんと見るのは初めてだったかもしれない。
僕は灰色のポンチョのような姿だ。中は真っ暗で本体があるのかはわからない。フードの中にぼんやりと光る目が二つ。黒くとがった両手。脚はなくて浮いている。
人間とはかけ離れているし、もともと布に包まれているようなので服というとどうなるのだろうか。
「魔術生物のお客さんはたまにいらっしゃいますが、中でも工夫ができそうですね。腕がなります!」
僕は少し心配していたが、店主は問題ないというようにメジャーを巻く。
それを何度か続けると、僕は解放された。新しく作らなければいけないので何日か後になる、と言われ、僕たちは店を出た。
「次は杖か。最初は量産型で初心者向けのものにした方がいいだろうな。未熟なうちにいい杖を持つと杖に使われてしまう」
師匠はそう言いながら歩いていく。杖の店も近くにあったようだ。
「いらっしゃい」
「どうも。初心者向けの杖を買いたいんだけれど」
「ああ、そこに置いてるぞ。そこの棚にあるのは全部同じのだ。」
カウンターに座り込んだ店主が入口近くの棚を指す。
そこには緑色の細長い箱が積まれていた。
「この時期は学生がみんなあれを買っていくよ」
その杖を買い、次の店へ向かう。
本屋に行って教科書類を買ったり、文具屋で筆記用具を買ったりと順調に物を揃えていく。
「とりあえずこんなものかな」
そうして必要なものを揃え、帰った。