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梟と道化  作者: 升太
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2話 魔術を知る

「おはよう、クラウン君」

「おはようございます」

「昨日はよく眠れたかい?」

「はい。ぐっすり寝れました」

「それは良かったよ。朝ごはんを作ってあるから」


 そう言ってアルバートはキッチンに向かった。僕は彼について行き、机の上にあった朝食を食べた。


「そうそう、君は私の弟子になってもらおうと思っているんだが、私は研究も忙しい。そこで君には私の研究室もある魔術学校に通ってもらおうと思っている」

「魔術学校?」

「ああ、色々なことを学べるよ。魔術はもちろん、友人や先生との関わりも大切だ。君はまだ幼いが、教育を受ければきっと素晴らしい魔術師になれるだろう。どうだい?」


 別に断る理由もないので「わかりました」とその魔術学校とやらに通うことを決めた。


「そうかよかった。では早速校長に伝えるよ」


 そう言うとアルバートはポケットから小さな笛のようなものを取りだし、ヒューと吹いた。

 そして数秒後、大きな耳のついた不思議な形の鳥が窓際にやってきた。

 かくかくしかじかとアルバートがその鳥に話すと、鳥はまたどこかへ飛んで行った。


「あの鳥はなんなんですか?」

「デンゴンドリ。毎月1000マモ伝言屋に払うと笛が貰えて、それでいつでも呼んで伝言してもらえるんだよ。」

「なるほど。」

「まあ、ほぼ確実に入学は認めてくれるだろう。入学式の時期まであと二か月程度か、うーむ。その学校だがね、一応1年生から12年生まであるのだけれど、長すぎるし6年生まではほとんど魔術のことはやらなくてつまらないのだよ。だからどの学年からでも入学できるようになっているのだが……クラウン君、7年生からの入学でいいかな?」

「ええ?まあ問題がないのであれば」

「まあ足りなくなったら私が補えばいい!じゃあ決まりだ。いくつか用意するものもあるし追々揃えていこう」

「用意するもの?」

「ああ。まずは制服だな。それと、教科書や筆記用具、杖、上げだしたらキリがないが、新入生がみんなものを揃え始める時期に街へ行こう」

「わかりました」

「では、入学前に軽くお勉強だ。事前にある程度知識を持っておいて損はない」


 そう言ってアルバートは別の部屋からたくさんの本を持ってきて机に置き、僕と並んで机に向かった。


「アルバートさん」

「む、せっかく弟子になったのだから師匠とでも呼びたまえよ。こう見えて初めて弟子をとったのだからそれらしさを楽しませてくれ」

「ええ?じゃあ師匠」

「なんだい」

「軽くお勉強、でこんなにあるんですか?」


 僕は机に積みあがった本を見た。


「まあ今これ全てやるわけではないから安心するといい。ゼロから教えるとなるとどれを使えばいいか私もよくわからなくていろいろ持ってきただけだ」

「そうですか。よかったです」

「まずは魔術の始まりから知るべきかな」


 と、師匠は大きくて厚みのない本を取り出した。

 表紙には「まじゅつができたわけ」という文字とかわいらしい魔術師の絵が描かれている。


「これは絵本だが、わかりやすく歴史が描かれていてちょうどいいだろう」


 本を受け取り、開いてみる。


―――――――――――――――――――

むかしむかし にんげんはよわく ふしぎなつよいちからをつかう

あくまたちに こまらされていました


あくまは はたけをあらしたり かじをおこしたりして

にんげんの じゃまをしました


あるとき ふしぎなちからを つかえるにんげんが うまれました

そのにんげんは ふしぎなちからをつかって あくまたちをたおしました

にんげんのせかいに へいわがおとずれ にんげんのせいかつは ゆたかになりました


しかし あくまたちも  こりません ふしぎなちから

”まじゅつ” をつかえるようになった にんげんにたいこうして

もっとこまらせようと ちからをつけました


あらしをおこしたり じしんをおこしたり つよくなったあくまに

にんげんもたちむかいます


にんげんのあいだで  まじゅつはひろまり あくまをたおすために

どんどんしんかしていきました


やがてまじゅつをつかって あくまをたおすしごと

”まじゅつし” ができて いままでにんげんを あくまからまもっているのです

―――――――――――――――――――


「……読めたかい?」

「はい。おもしろかったです」

「ははっ、それはよかった。これに書いてある通り、魔術は主に”悪魔”への対抗手段としてこれまで発展してきた。他にも生活に役立てられているが、悪魔を殺すための魔術があって、それを応用しているに過ぎない」

「悪魔、ですか。この本に書かれてるのを見るとすごく強そうです」

「ああ。災害、と呼ぶ人もいる。しかし嵐を起こすような強力な悪魔は滅多に現れない。それでも現れたときはベテランの魔術師が複数で対処する。私も昔よく行ったものだ」

「魔術師……危険な仕事なんですね」

「ん、怖くなったかい?」

「いえ、まだよくわからないです。魔術とか、悪魔とか」

「まあ、その経験を積むために魔術学校がある。入ってみて考えればいい。君は強い魔術師になれる素質がある、と私は思っているが、無理に私に従う必要はない。君は魔術生物だから何なら人間社会に溶け込む必要もないのだしな。とはいえかなり知能が高いようだから、魔術師以外の職に就く道もある」


 色々と普通に受け入れているけれど、僕は昨日目を覚ましたばかり、生まれたばかりなのだった。

 この世界のこと、魔術や悪魔のこと、何も知らない。僕の世界はまだ師匠の手の中に過ぎなくて、従う以外にどうすればいいのかわからない。


「魔術学校、楽しみにしてます。師匠にも、もっとたくさんのことを教えてもらわないといけないと思います」

「ああ、可能性のために知ることは大切だ!少し休憩してから別の本も見てみようか」

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