第5話 for Zinnia & Camellia
ジニアを視た魔女は衝撃だった。
「あなたね、しつこい!今やってること全て止めなさい!それで趣味を見つけなさい。音楽でも刺繍でもパトロンでも何でもいいから!楽しいことを増やしなさいね。」
ジニアは一息に捲し立てられ目をパチパチさせた。
だがまだ魔女は止まらない。
「それで、楽しいことが見つかって、毎日が楽しくなってきたら侍女に仕度を全て任せてみて。また新しい自分を発見するわよ!」
言い切った、というように魔女はやり遂げた顔をしていたが、ジニアも固まっていた状態から復活した。
「なんて?……彼とは、会えないの?」
「え?彼?会わせないわよ。今の状態のあなた達、相性最悪なわけ。あなたが変わらないと彼も心変わりなんてしないわよ!わかった?」
相性最悪という言葉にがーんと効果音が尽きそうなほどに落ち込むジニア。
彼にはぜひ心変わりをしてもらいたいため苦渋の決断で返事をした。
「・・・わかりましたわ。」
魔女も了承を得られて一安心している。
そして視線を赤い瞳の少女へと向けた。
「あなたで最後ね。」
「はい、私はカメリアと申します。」
他の令嬢たちとは違いここに、いや、店頭に来てからずっと居心地悪そうにしていたカメリア。
「あなた、婚約者の前でも緊張しちゃっているのね。」
図星でカメリアはなにも言えない。魔女の言う通り、カメリアは緊張でなにを話せばいいのか分からず、結局いつも黙ってしまう。
そんなカメリアに助け舟を出す。
「カメリア、理想のデートとか恋人としたいことってある?」
「恋人としたいこと・・・」
少し思案しているカメリア。
「あるなら言ってみてほしいわ。」
話すことに躊躇っていたが、意を決して話し出した。
「ケーキを街に食べに行ったり、帰りに手をつないでみたり、お家で読書して感想を伝え合ったり、美しい湖を見に行ってみたりしたいです。」
好きな小説にある、憧れていた場面を思い出しながら答えた。
「ふむふむ。カメリア、今言ったこと全部 彼におねだりしに行きなさい。」
カメリアは口を開けるほど驚いた。淑女なので実際には開けていないが。
話すことも出来ていないのに、おねだりという高難度なに言葉が出ないカメリア。
魔女も難しいことを言っている自覚はある。
「その時 怖いかもしれないけれど、前髪を上げておでこを出して行くのよ。」
それから魔女による指導がはじまった。
「それで、おねだりの仕方だけど、彼と二人きりになって、正面から近づいて彼の袖口を人差し指と親指だけでつまんで、目が合ったら " 私、今までずっと言えなかったことがあるのです。" って言ってから、さっき言ったおねだりを敬語を使わないで~したいって言いきるの。最後はつまんだ指先に少し力を入れて握り込んで " 叶えて、くださいますか? " って首を少し傾げながら言えばもう大丈夫よ!恥ずかしくても顔をずっと見ていて。目を逸らされてもね!」
5人とは違い、いやに具体的に説明をする魔女。
カメリアはまだびっくりしているがそれでも真剣に聞いている。
「反応が返ってこなかったら " ダメ......でしょうか…? " って言いなさい。その時目線は相手のお腹辺りで。これでお出かけしてくれるわ!まずあなた達に必要なのは一緒にいる時間と会話よ!」
まだ戸惑いが見えるカメリア。
だが、彼女なら大丈夫だろうと思う魔女。
「さあ、帰った帰った!しっかり言ったこと守るのよ~。」
そう言うと魔女は令嬢たちを追いだしていった。
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