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第3話 for Iris & Nemophila



 聞き終えた魔女は、そうなのねと(うなず)いた。自分が視たものと話を整理して全員の顔を見ながら話し出した。


「まず、あなた達の(くだん)の女性に対する悪感情と、あなた達の婚約者たちがその女性へ向ける好意は、その女性のスキル『増長』により育てられた感情よ。わざわざ作られたものってわけ。」


 自分たちを悩ませ、婚約者を変えてしまったのがスキル、人為的なものと聞き、6人は言葉を失ってしまった。


 しかしジニアはスキルという言葉であることに気付き、喜色を浮かべ魔女に尋ねる。


「スキルによる事象ということは、元に戻すことも可能、ということかしら。」

「そうね、可能よ。」 


 魔女の断言にほっと息をつく6人。安心した様子の令嬢たちに温かい笑みを浮かべた魔女は少女たちの悩みを解決するべく動く。


「取りあえず、一人ひとり視させてもらってもいい?まずはアイリス、あなたからね。」


 隣に座る紫眼の少女を見て言う。一番目立っていて名前も分かるアイリスから始めることにした。


 ふむふむ、とじっくりアイリスの顔を見る魔女。

 だんだんその顔色が変わっていき不安になるアイリス。


「あなた......毎日毎日 婚約者が誰といても所構わず見かけたら突撃しすぎよ!!」

「な!?」


 突然のダメ出しに驚くアイリス。


「まず、それをやめなさい!あ、ちょ、」


 構わず話し続けようとしていたが、どんどん泣きそうになっていくアイリスに焦る魔女。


 アイリスは幼い頃からずっと一緒にいて構ってくれていた――ここ一ヶ月は会えても話すことも出来ていなかったが――婚約者に会いに行けない、関わることが出来ないことへの喪失感に打ちのめされていた。


「待て!待ちなさい!七日!七日よ、七日我慢しなさい。」


 アイリスに手のひらを広げて腕を伸ばす。

 思わず犬猫にするような態度になってしまったが今はそれどころではない。少女を無暗に泣かせる趣味はないのだ。

 落ち着くように一拍おいて優しく問いかける。


「今日は会った?」


 泣くのを我慢しているアイリスは顔を見られたくなくてうつむいていたが首を横に振って否定した。


「まだね。会っていないのなら今日からよ。今日会わずに七回眠りなさいね。あなたがちゃんと我慢したら向こうから絶っっっ対来るから。」


 幼女に話しかける様になったが傷心のアイリスには効果があった。

 彼が自分のもとに来てくれると聞き顔を上げて「本当に?」と聞き返していた。

 魔女もしっかりと頷いて見せ、


「何なら三、四日で近づいてくるけど、その時も絶対答えちゃダメよ?無視して逃げなさい。七日だけ、がんばって耐えて?がんばれそう?」


「七日......本当に七日会わなければ、ディオス様は(わたくし)のところに戻って来てくれますの?」


「えぇ、本当よ。それよか一週間後には今までで一番ラブラブよ!」


 抑揚(よくよう)にこたえた魔女にアイリスは少し呆然としたように「ラブラブ・・・」とつぶやいている。その顔は誰が見ても嬉しそうだ。


「分かったわ。(わたくし)、ディオス様とは会わない!(七日間限定で)」


 アイリスは宣言した。

 ぱちぱちぱち

 周りの5人はアイリスに拍手を送った。


「すごいわ。あのアイリス様が。」と感嘆されたり、

「毎日会っていたのに大丈夫かしら。」と心配されているが、きっと大丈夫!と魔女は思うことにした。


「じゃあ次は・・・」と誰を視ようか選んでいると、


「それでしたら次はフィー姉様をお願いします。」


 アイリスが自分の左隣を見ながら提案してきた。

 問題もないのでアイリスの隣に座る、碧眼の少女と目を合わせた。


「そう。あなた、お名前は?」

「ネモフィラと申します。」


「ネモフィラね。ちょっと失礼。」


 視てみると、ネモフィラはどうやらアイリスとは真逆で婚約者になにも言えていないようだ。

 葛藤、嫉妬、不安、不満、要望など様々な思いが彼女の中で渦巻いていた。


「ん~。あなた、結構心の中に抱えているわね。そんな我慢する必要ないと思うのだけど。そうね・・・」


 魔女は何が最適か、なんと伝えるか悩んだ。

 彼女には自信をつけてほしい。これにしよう。


「よし!あなたは抑え込んでいるものすべて解放なさい!って言ってもすぐには難しいと思うから、婚約者のお母様に悩んでいること全部話しなさい!」


「思っていること、すべて......婚約者のお母様に......」


 ネモフィラは驚いてオウム返しになってしまった。

 だが安心させるように続ける。


「ずっと、あなたの味方なのよ。」


 その一言にネモフィラの瞳が潤んだ。

 身に余る立場から、ずっと孤独に頑張ってきたのだ。

 それがまさか、関係が希薄だった婚約者の母が自分の味方であったということに戸惑う。


 魔女が言ったことは嘘ではない、紛れもない事実。ただ少しすれ違っているだけでもともときっかけがあれば仲良くなれる二人なのだ。たまたま今回魔女がきっかけになったに過ぎない。

 とは言え、急には難しいだろう。


「そうね、たまにアイリスを誘ってあげて。彼女も逃げ続けるのは大変だと思うから二人でかばってあげて。」


 何も言わないネモフィラに優しく問う。


「無理そう?」

 心配しているように催促する。


「いえ…今まで婚約者との関係性を変えられなかったのです。お話を聞き、(わたくし)も変わってみなければと思いました。最善を尽くしてみせます。」


 決意したような凛々しい顔つきになっている。

 アイリスは殊更(ことさら)嬉しそうな顔をしている。


「そうよ!その意気よ!」

 魔女もネモフィラの変化に嬉しくなった。


「じゃあ次、隣のあなた。お名前は?」


 ネモフィラの隣に座る珍しいコーラル色の髪の利発そうな少女に声をかける。


「ジェシカと申します。」



ここまでお読みくださりありがとうございます!!


この作品を面白い、続きを読みたい!と思っていただけたら嬉しいです!


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