第1話 薬屋へ
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お茶会にしては早い時間帯。トリンデン侯爵家の庭園に6人の令嬢たちがテーブルを囲んでいた。
艶やかな長い黒髪を大きく揺らしながら本日の主催のアイリスはテーブルを叩きながら立ち上がった。
大きな紫色の瞳が納まる小さな愛らしい顔は眉が寄せられ、顰められている。
淑女にあるまじき行為だが、周りの令嬢たちに注意をする者はいない。
「もう、我慢できませんわ!!!あの女を懲らしめてやりましょう!!」
とても高位貴族の令嬢の言葉とは思えないが、その様子を見ていた令嬢たちは、
『とうとう我慢の限界が来たのね。』
『まぁ、耐えた方か…』
『一か月だったかな?』
『婚約者と何かあったのかしら。』
と、アイリスの態度に慣れていた。
「ディオス様もディオス様ですが、あの女、私に『イディオス様との夜はとても素晴らしかった。激しくて圧倒されてしまいました。』とのたまったのですわ!!」
アイリスの怒りは収まらず、矛先は目の前の少女たちにも向けられる。
「ジニア様やカメリア様、ジェシカ様はあの女と婚約者様の所業に我慢なさっているようですが、その必要はないかと思われます!フィリー姉様やピオニー様も心中穏やかでないのも事実。」
" あの女 " とは、最近学園でこの6人のそれぞれの婚約者を侍らせる、モーレン男爵令嬢というピンク色の髪をした華奢な女学生のことである。
白髪をハーフアップにしたカメリアと、珊瑚色の髪を高いポニーテールにしたジェシカは気まずげに視線を逸らし、藍色の豪奢な巻き髪のジニアは平静に見えるが、何かを思い出したのか顔の前で広げる扇子を持つ手が震えている。ふわふわの淡い金髪のピオニーはきょろきょろと周りを伺い、銀髪のフィリー姉様と呼ばれたネモフィラは静かに事の成り行きを見守っている。
そんな6人の様子を気にせずにアイリスは続けた。
「そこで私、いい人を見つけましたの!」
「いい人?」と5人は不思議に思った。ジェシカやジニアは声に出していた。
「ええ、その方は最近王都に出店した方で、お薬を作られる魔女さんなのですが、占いもされるそうですの。」
「占い?」
ネモフィラとカメリアは馴染みのない言葉にきょとんとしている。
「そんなの信じるのか?」
現実的じゃないというようにジェシカは少し呆れた様子だ。それでもアイリスは構わずに続ける。
「その方の占いはまるで普段を覗いているかのように口に出していないことをお話しになるのですって!そして、的確な指南を授けてくださるそうですの!実際に結婚した方や、商いに成功した方がいらっしゃいますのよ!そこに本日はみんなで行ってみましょう!」
「まぁ、突然ね。」
「押しかけても大丈夫なの?」
急な誘いに驚きつい口に出してしまったジニア。ピオニーは大勢でお店に伺うことに難色を示している。
だが抜かりのない侯爵令嬢、アイリス。
「薬屋に調べに行かせた者によると口止めされているのか知られていないようで、普段はあまりお客様はいらっしゃらないようなので大丈夫かと思われます。」
こうしてアイリスの強行で6人は街に出ることになった。
トリンデン侯爵家から馬車を走らせること数十分。
王都の端にある薬屋に着き、侍女の後に続いたアイリスは、誰もいない店内へ声をかける。
「どなたかいらっしゃいますか?」
「はいはーい、いらっしゃいますよー。」
奥から女性の声が聞こえて、次いでこちらにやってきた。
黒と見紛うほど暗い深緑の髪に暖炉の灯りのような橙色の瞳をした20代くらいに見える女性はアイリス達を見てうれしそうな顔をする。
「まぁ!大勢でうれしいわ。どんなお薬をご所望?風邪薬?傷薬?惚れ薬?」
商売魂が逞しい女性だ。ローブを纏っているのを見るに彼女が魔女だろう。
ジニアが「惚れ薬?」と目を輝かせたが、ピオニーとカメリアにそっと止められた。
彼女は婚約者を射止めることに余念がない。
ブレないジニアは置いておいてアイリスは話を進める。本題へ移らなくては。
「どれもとっても魅力的だけど、本日は私たちを占っていただきたくて参りましたの。」
アイリスの話を聞いた途端に魔女はつまらなそうな顔になる。
「・・・えー。薬じゃないの?気乗りしないなー。」
すかさずアイリスは後ろの侍女に目配せし前に来させる。
「もちろん、こちらをお納めくださいな。」
じゃらっ…
侍女が受付に置いたのは金貨の入った巾着だった。
「いや、お金は別にいいんだけど...ってあなた達・・・」
魔女の視線がアイリス達の顔に移るとそれぞれの顔を凝視し始めた。
「いいわ、気が変わった。こちらにいらっしゃいな。」
そういうと店の奥へと歩き始めた。
どうやら気まぐれな魔女は占いをしてくれるようだ。
「うち、広いところが庭しかなくて。ごめんなさいね。」
寒くない?と魔法でテーブルセットや茶菓子を用意する魔女。
魔法で寒くない様にしてくれているためピオニーが大丈夫ですと返事をした。
「こちらの方こそ、突然押しかけてしまいましたのにお招きいただき恐縮ですわ。」
カメリアも気を遣って魔女に声をかける。
「いいのよ。かえって来てくれてよかったわ。」
「どうぞ召し上がって。」と紅茶と茶菓子を勧めてくれる魔女にアイリスとピオニーが口を付ける。
「それはなぜでしょうか。」
初対面時とは打って変わって、来てくれて良かったと話す魔女にジェシカが問う。
お茶を口にして魔女は真剣な顔になる。
「率直に言うとあなた達、魔法をかけられているわ。」
「え?」
衝撃的な魔女の言葉にみんなが驚いた。自分たちが魔法にかけられているなど、気付いてもいなかった。
「魔法というよりスキルの力なんだけど。あなた達、嫌いな人が一緒だったりしない?」
またもや衝撃である。
” 嫌いな人が一緒 ” という言葉にアイリスが飛びついた。
「そうなんですの!本日はそれについてご相談に参りましたの!」
「そうなのね。そうしたら先に話を聞こうかな。」
ネモフィラたちはスキルのほうが気になるが、魔女が背もたれにもたれて話を聞く姿勢になってしまったため、仕方なく言及することは諦めた。
魔女の話の続きを聞く前に、まずはアイリス達が事の発端を話すことになった。
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