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#2 下着泥棒

 夜風がひんやりと肌を撫でる静かな夜、ミサキは巫女装束に身を包み、街の路地を巡回していた。薄暗い街灯の明かりが点在し、周囲には人気がなく、どこか不穏な空気が漂っている。


彼女の足取りは軽やかでありながらも、常に警戒心を忘れない。心の中では、今日も無事に任務を果たすことを強く願いながら歩いていた。



「今夜は特に静かだな…」



 ミサキは小さな声で呟き、周囲の異変に注意を払いながら進む。妖気を感じることがない平和な夜もあるが、いつどこで悪霊が現れるか分からない。彼女は気を緩めることなく、目を光らせている。


街の隅々まで見渡しながら、路地の影や建物の陰を慎重にチェックする。すべてが暗闇に溶け込み、静寂に包まれているが、どこか胸の奥で不安がざわついていた。



「何も起こらなければいいけど…」



 彼女はそう思いつつも、心の奥には、悪霊との対峙に備えた決意が燃えている。すでに数々の悪霊を退治してきた経験が彼女の背中を押し、少しの恐怖をもかき消していた。


 ミサキは歩みを進めながら、街の裏路地へと足を踏み入れた。そこは昼間でも人が少ない場所であり、夜になると一層の不気味さが増していた。


 路地の奥に潜む影を見つめながら、彼女は一瞬立ち止まった。


「このあたりで悪霊の気配を感じたような…?」彼女は小さな霊符を手に取り、周囲の気配を探る。冷たい空気が漂う中、どこかから悪霊の気配が微かに漂っているような気がしてならなかった。


ミサキは目を細め、再び歩き出す。緊張感が高まる中、彼女の足音だけが静寂の中に響いていた。




ミサキが路地の奥に足を踏み入れたその時、不気味な笑い声が静寂を切り裂いた。影からじわりと現れたのは、異形の悪霊だった。背丈はミサキよりも少し高く、全身がぼんやりとした霧のような黒い煙に包まれている。


歪んだ顔には目がなく、代わりに口元だけが異様に大きく裂けていた。その口からは、鋭く尖った牙が覗いており、怪しい光を放っている。


「ほう、これは珍しい客が来たな。退魔巫女ミサキじゃないか。」


悪霊はにたりと笑い、気味悪い声で話しかけてきた。その声は低く、耳にまとわりつくような不快な響きを持っていた。


「私の名前を知っている……。何を企んでいるの」


ミサキは警戒を強め、霊符を構えながら尋ねた。彼女の目は悪霊を捉え、いつでも行動に移せるように身構えている。


「何って?ただ楽しんでいるだけさ。最近の人間どもは退屈でなぁ。だから少しばかりの刺激が必要なんだよ。」


悪霊は腕をゆっくりと上げると、その手を指先から爪が伸び、ミサキに向けて揺らめかせた。


ミサキはその動きをじっと見つめ、すぐに反撃の準備を整える。しかし、悪霊は彼女の緊張を楽しむかのように、ゆっくりと距離を詰めながらさらに言葉を続けた。


「お前のような巫女がうろつくせいで、我々もなかなか自由には動けなくてな。だから、少しばかりのお礼が必要だと思ってさ。」


悪霊はそう言いながら、手を擦り合わせ、奇妙な霧を発生させた。霧はミサキの周囲に広がり、彼女の視界をぼやけさせる。




「何をするつもりなの?」



ミサキは一歩後退し、霊符を構えて警戒を強めた。


悪霊はにやりと笑い、「何。少しだけ試すだけさ。君の精神力をね」


と言いながら、不気味な手をゆっくりとミサキに向けて伸ばした。その手からは触手のような黒い影が伸び、ミサキに絡みつこうとした。


「許さない!」


ミサキは怒りを込めて霊符を投げつけた。しかし、悪霊は軽々とその攻撃を避け、嘲笑を浮かべたまま彼女に迫ってきた。


「ふふふ、抵抗しても無駄だぞ。お前の清らかさ…旨そうだ。さあ、見せてもらおうか、その恥じらいを!」


悪霊は歪んだ口を開き、彼女の怯える様子を楽しむように迫ってきた。


ミサキはなおも霊符を手に戦意を見せるが、悪霊の不気味な力が彼女の体を蝕み、身動きが取れなくなる。


悪霊は、彼女の弱点を狙うかのようにゆっくりと手を伸ばし、次第に彼女の身に迫っていた。




悪霊は不気味な笑みを浮かべながら、ミサキの正面に立っていた。その姿が薄霧のように変わり、一瞬で彼女の体に向かって滲み出してくる。


「これから楽しませてもらうぞ」


悪霊はそう言い残し、その体がさらに霧のように薄くなり、ミサキの体を通り抜けた。




「なっ…!?」ミサキは驚き、身を引こうとしたが、体は依然として動かないままだ。悪霊がそのままゆっくりとミサキの体を通り抜け、冷たい感触が彼女の肌に染み渡っていった。


その瞬間、ミサキの体に何とも言えない違和感が走る。まるで冷たい風が体の中を通り抜けたような感覚だ。


痛みはなく、悪霊が入り込んだような感覚はない。憑依されたわけでもなかった。




しかし、悪霊の気配が消えると同時に、何が起こったのかがはっきりと分からなかった。


「今のは…何?」


ミサキは戸惑いの表情を浮かべ、周囲を見回す。悪霊が消えたことに安堵する一方で、体に微妙な違和感が残っていた。


胸元や背中に、何かが欠けているような妙な感覚を覚えたが、その正体が掴めず、彼女は混乱していた。


「ん…?」


歩き始めると、服が肌に擦れる感覚がいつもより強いことに気づく。胸元の布が肌に直接触れているような柔らかい感触が伝わってきた。


思わず手を当てた彼女は、そこで初めて異変に気づく。


「ま、まさか…!」ミサキは目を見開き、胸元に手を置いたまま固まってしまった。そこには、本来あるはずのブラジャーがなく、直接服の布地が触れていたのだ。


「えっ!?なんで…!?」


ミサキは顔を真っ赤に染め、思わず声を上げた。悪霊が自分の体を通り抜けた瞬間、彼女の大切なものを奪い去っていたことにようやく気づいたのだ。


彼女の頭の中に、状況がゆっくりと理解されていく。とても考えたくない状況が。


ミサキは咄嗟に胸元を押さえ、何とかして自分を隠そうとする。体を覆う布が直接肌に触れている感覚が、ますます彼女を焦らせ、全身が熱くなっていくのを感じた。




悪霊はミサキの目の前でブラジャーを掲げ、嘲るように笑みを浮かべていた。薄青色の可愛らしい下着が、悪霊の手の中でひらひらと舞っている。


ミサキは頬を赤らめ、胸元を押さえながら、怒りと羞恥で体を震わせていた。彼女の目には涙が浮かんでいるが、泣きたくないと必死に耐えている様子が伺えた。


「ふふ、これはなかなか良い香りだな。」




悪霊はミサキのブラジャーを鼻元に近づけ、ゆっくりと大きく香りを嗅いだ。今だ温もりを持つ柔らかなカップ部分が悪霊に押し付けられる。


その行為にミサキの顔はさらに赤くなり、思わず叫び声を上げた。



「キャァァァあああ!やめなさい!」


ミサキは怒りと羞恥に満ちた声で叫んだが、悪霊は無視して、さらにブラジャーを鼻元で楽しむように持ち上げた。


「おやおや、これは実にお前の香りが染みついているな。こんな匂いなのか」


悪霊は目を閉じて鼻をすすり、まるで宝物を味わうかのようにその香りを堪能している。


「退魔巫女が身に着けるにしては、随分と愛らしいな。お前もこういうものが好きだったのか?」


ミサキは羞恥心で言葉を失い、必死に怒りを抑えようとしたが、体が動かない状況ではどうすることもできなかった。彼女の目には再び涙が滲み、悔しさでいっぱいの表情を浮かべた。


悪霊はその反応を楽しむように、


「どうだ?お前の大事なものがこうして私の手にある気分は?」


と嘲笑しながら、再びブラジャーを手のひらで弄び始めた。彼はミサキの目の前でそれを回し、布地を指でなぞりながら楽しげに微笑んでいた。


「お前が必死に身に着けていたものが、こうして私のものとなったわけだが……どう使おうか?」


悪霊はさらに挑発的な言葉を投げかけ、ミサキの表情を見つめた。その顔には、明らかに屈辱と怒りが混じっていたが、彼女は耐えるように必死に唇を噛みしめていた。


「返して…それは私の…!」ミサキは涙目で懇願するように訴えたが、悪霊は嘲りを浮かべて笑い声を上げた。「さあ、取り戻したければ、もっと恥を耐えてもらおうか。」


悪霊はブラジャーを一度大きく揺らし、鼻元にもう一度近づけてから、彼女の目の前で高々と掲げた。




「腕を下ろせ」


悪霊の言葉がミサキの耳に突き刺さる。


いくら巫女装束を着ているとはいえ、今腕を下ろせば、下着を盗まれた無防備な胸元が布一枚で悪霊にさらすことになる。


ミサキは悪霊の嘲笑に耐えながら、心の中で必死に葛藤していた。しかし、体が自由に動かせない以上、悪霊の命令に従わざるを得ない状況に追い込まれていた。


「…わかったわよ…」


彼女は悔しさと恥辱に満ちた声でそう呟いた。


ゆっくりと、ミサキは胸元を押さえていた腕を下ろし始める。巫女装束の布地から彼女の腕が徐々に離れていき、その間に残っていたわずかな抵抗の感覚が消えていく。布の表面が腕と擦れる感触は妙に鮮明で、その動きは彼女にとって限りなく長く感じられた。


胸元にはまだ巫女装束がしっかりと掛かっているが、布が微妙にずれていることによるわずかな違和感が彼女を苛んだ。


布が守られているはずの素肌に直に触れ、軽く擦れる感覚が、彼女の意識を集中させ、心の中で恥辱感が高まっていく。


「そう、それでいいんだ…」


悪霊は満足げに笑みを浮かべ、ミサキの屈辱に満ちた表情をじっくりと味わっている。彼はブラジャーを手に掲げながら、その「戦利品」を誇らしげに見せつけた。


「くっ…!」ミサキは腕を下ろし終え、体を覆っている巫女装束の微妙な動きに耐えていた。


ミサキの体を覆う巫女装束が、胸元の素肌に直接触れていることが今更ながら強く意識される。


ふと、悪霊の気配が消えると同時に体が動くようになっていた。




どうやら悪霊はどこかへ立ち去ってしまったようだ。ひとまずの危機は去ったと安堵すると同時に、大事なことを思い出す。


「私の下着返しなさいよぉぉぉおおおお!!」


誰もいない夜の闇に、ミサキの悲痛な叫びが悲しく響き渡った。



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