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「魔法使いが父上を…?」
「はい、奴らの使っていた武器は見たことも聞いたことも無いものでした。あれが魔法以外にあり得るというのですか?それに…」
「ははっ!」
少し興奮したような様子で続けようとする彼女を少し狂気じみた声が遮る。腹を抱えて笑い出したレーナは睨みつけるメイを見て咳払いをしたが、抑えきれなかったのか、聞くものによっては神経を逆なでされるような笑い声をこぼした。
「何がおかしい」
「いや…」
ひりついた空気を纏う彼女に答えようとして、レーナは口を閉じた。食堂の出口を一瞥した彼女はまたこちらを見てその後、姿を消した。
「!?」
メイが一歩踏み出して身構える。けれど何も起こることはなかった。なぜなら、この場に彼女はもういないからだ。そのことを教えようとメイの袖を引っ張った瞬間に食堂のドアが開く。
「お前、洗濯場の担当の者だったな、なぜここにいる?」
「…」
現れたのはダフニーだった。メイを一瞥して片眉を上げた彼はとても機嫌がいいとは言い難い表情を浮かべている。
少し委縮したような表情になったメイはすぐには答えなかった。今この場でさほどの出来事を告げればどう返ってくるかは分からない。彼女の今の主人は慈悲深いとともに定められた規律には厳しい。主にこの屋敷で起きたことを報告するのは義務だが、それがセシルの不利に働くのであれば告げたくないというのが本音だった。
「僕が食べるのが遅すぎて様子を見に来てくれたんです。ちょうど部屋を出ようとしていたところでした」
「…」
交互にこちらの顔を見たダフニーは、少し震えている使用人に何かを感じたのか、小さく息をついた。
「まぁいい。もう夜も遅い。早く寝るといい」
厳しい顔をしながらも何も追求せず去って行く背を見送って部屋に戻った。部屋まで送ってくれたメイに礼を言ってドアを閉めようとしたときに彼女の少し納得いってなさそうな不満げな顔が見えた。
「…」
「メイ、まだ魔法使いのせいだと思っているの?」
「…分かりません。あのような武器は他国でも見たことがなかったんです。あんな威力の武器が人間に作れるのですか?」
セシルにも何もわからない。今までせいぜい触れたことがある武器といえば父が与えてくれた小さな短剣くらいだ。それもあの屋敷と共に燃え尽きてしまっただろうが。
「とにかく今日会ったあの人は本当に優しい人なんだ。それだけは信じて、メイ」
少し不満を残した顔で頷いた彼女は礼をして去って行った。




