file.003 高温超伝導?
♪縦の糸はアルミ~、横の糸はスチール
いつもより上機嫌な夢藤博士。水素爆発によって研究棟内の研究室が壊れてしまったため、大学の敷地内の空き地にプレハブを建ててもらい、そこで研究活動を続けている。
今は、高温超電導の研究に取り組んでいる。
ある日、超電導研究を行っている研究員が大学内の道で博士に出会い、博士と会話を交わした。
「今回の研究の肝は何でしょうか?」
「少しずつ温度を上げていく方法ではブレークスルーが起きないんだ」と博士が説明する。
博士はさらに話し続けた。
「超電導には一種の谷があり、この谷を越えた先に未来が広がっていると考えているんだ」
そして、博士は続けた。
「私は450度から実験をスタートするつもりだ」
研究員は驚いて尋ねる。
「それはどういうことなのですか?」
その質問には答えず、博士はさらに情報を追加した。
「素材については、アルミ、銅、鉄といった容易に入手できる金属素材をメインに使用するつもりだ」
研究員は懸念を示した。
「それは少し無謀ではないでしょうか?」
博士はにっこりと笑って反論する。
「それを試したことがあるか?」
と言って、プレハブの研究室に入っていくのであった。
・・・
博士はアルミニウム、鉄、そして銅を使ってナノレベルの糸を作成し、それらをナノマシンを使用して編み込む作業を進めていた。その結果、10mの新たな素材が完成した。
彼は新素材を計測器に接続した後、加熱を始める。徐々に温度が上昇し、450度に達したときに、博士は満を持して電源をオンにした。
博士の独自のナノ構造を持つ新素材は、450度で確かに超伝導状態を示し、彼の予想は見事に的中した。
しかし、その成功の瞬間、突如研究室全体が強く揺れ始める。初めは地震だと思われたが、研究室が浮き上がり始めることから、何か異常事態が発生していることが明らかとなった。
「これは...マイスナー効果!?」と夢藤博士は目を見開きながら驚きの声を上げた。
超伝導物質は外部からの磁場を排除するマイスナー効果を持つが、彼の作った新素材はその効果が極端に強力で、地球の磁場に反応してプレハブの研究室ごと浮き上がってしまったのだ。
そして、どんどん研究室は浮き上がり、外部と接続しているケーブル類がぶちぶち切れ始めた。
夢藤博士のポッドはエマージェンシーを検知し、自動的にコールドスリープモードに切り替わった。
その後、研究室は30mの高さから地上に落下し、室内の装置や実験道具はほとんどが粉々に破壊され、大損害となった。しかし、ポッドだけは無傷で、中の夢藤博士は安全だった。
近くの研究員たちが急いで駆け寄る中、再び彼の実験が終わったことを知った。
博士はマイスナー効果といっているがハッチソン効果の可能性もある。。