file.002 常温核融合?
夢藤健一博士は研究室の中心に立ち、複雑な計算を手に握りしめていた。彼の目には確信が宿っていた。それは、常温核融合の鍵が微細な表面構造にあるという確信であった。
「まずグラファイトで基底部を作り、その上にプラチナとパラジウムを蒸着させれば・・・」彼は独り言を漏らす。
まず彼はグラファイトで微細ハニカム構造を作り出すことに成功し、次にプラチナとパラジウムを1:2の割合で蒸着させて、微細ハニカム構造の素体を簡単に作る。
この構造が、核融合を促進するための特殊な環境を作り出すのに適していると彼は考えた。
次に、博士はこの板を装置の中にセットし、三重水素水を充填していった。
そして、スイッチをオンにする。
彼の期待は高まり、計器の読み取りを目で追う。そして、確かに微小ながら核融合反応が発生しているのを確認する。
夢藤博士は微細ハニカム構造のさらなる特性に気づく。このハニカム構造は、ただ核融合を促進するだけでなく、強力な水素触媒としても機能していた。
「これは...予想以上の反応だ!」と彼は驚き、その声が研究室に響く。しかし、その喜びも束の間、大量に発生した水素ガスが研究室を満たし始める。すぐに彼は危険を感じ、研究室の換気スイッチを押そうとするものの、その前に何かのスパークで爆発が起こる。
周囲は一瞬の光とともに白く染まり、研究室は大混乱となる。しかし、夢藤博士のポッドはすぐにエマージェンシーモードを検知し、自動コールドスリープ装置が作動。博士は瞬時にコールドスリープの状態に移行され、その身体は瞬く間に保護される。
研究室のメンバーや隣の部屋の研究者たちが急いで駆けつける中、破壊された実験室の中心に、夢藤博士のポッドが無事に立っているのを見つける。再び彼の冒険が始まることを、彼らはまだ知らない。