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ある天才科学者の手記  作者: テスト
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file.001 空間移動装置?

1.エマージェンシー


実験ポッドの中には、様々な色と形のLED、計器類、そしてモニターには複雑な計算とデータの流れが映し出されていた。

彼のポッドは先進技術の結晶であり、数々のデバイスやシステムが詰め込まれていた。


「これで絶対にうまくいく」

夢藤健一博士は、こぼれる笑みをおさえながら自信満々にスイッチを押した。

マシンはガタガタと揺れはじめ、動力装置からキューンと音が段々高くなっていく。

計器類がくるくると回っている。

「ここまでは理論通りだな」


次の瞬間、すごいG(重力加速度)を感じ、博士は意識を失った。


「エマージェンシー、エマージェンシー、エマージェンシー・・・」

のけたたましい音で、博士は目を覚ました。


少し朦朧とした頭が徐々に明晰になってきて、


「実験の途中だったな」


警告音は大きかったが、博士はそれを無視して、堂々と計器類を確認した。


「おーー実験成功じゃないか」


ポッドの自動音声案内が通知した

「外部酸素濃度低下、外部圧力低下、外部温度低下、放射線量増加・・・」


計器類を読むのが面倒だったので、博士は読み込み機能を付けていた。


「・・・内部温度低下」


博士の吐く息が白くなってきた。


その時、ポッドのAIシステムが自動的に緊急プロトコルを発動する。

「エマージェンシー。エマージェンシー。環境データ異常を検知。ユーザーの生命を守るために自動コールドスリープに移行します」

とのメッセージが流れ、博士の座席が微妙に変化し、彼を優しく包み込むようになった。


「あれ?少し ゃ ゔ ぃ ゕ ・ ・ ・」


彼の意識が遠のく中、ポッドの内部は安全な状態に保たれていた。


そして博士は深い眠りに落ちていった。。。


2. 異常電波観測


ペルーの高地、標高数千メートルに位置するサンクチャン電波望遠鏡天文台。サンクチャンはインカの言葉で「高い場所」を意味し、その名の通り、天に近いこの地で数々の重要な天文学的発見がなされてきた。高地特有の透明で澄んだ空気は、星や宇宙の観測には絶好の条件を提供している。


野川ゆみ博士は、このサンクチャン天文台で特定の電磁波を用いたデブリの選別と分析の研究を進めていた。彼女は、宇宙に漂う無数のデブリを特定の電磁波で分析し、それぞれのデブリの素材や起源、軌道を明らかにすることに情熱を注いでいた。


ある晩、彼女は天文台の大型の電波望遠鏡を操作していた。この望遠鏡は、その巨大なアンテナが宇宙に向けて開かれ、微弱な電磁波をも捉え取ることができる精密極まる機器だった。彼女の目的は、新たに発見されたデブリの一つを特定の電磁波で観測し、そのデータを解析することだった。


ところが、その観測中に突如として望遠鏡は異常な信号を拾い始める。この信号は、彼女がこれまでに経験したことのないもので、一瞬、機器の誤動作かとも思った。しかし、データを確認してもその信号は消えず、逆に次第に明確さを増していった。


「これは一体…?」彼女の驚きと興奮は抑えきれないものだった。この異常な信号が示すものは、未知の可能性を秘めているかもしれない。彼女はすぐにデータの解析に取り掛かった。その信号の波長、周波数、強度…それぞれのデータを細かく分析し、その信号の起源を特定しようとした。


博士は速やかにその信号の源を特定しようと試みた。数時間の努力の末、彼女はその信号が未知のデブリから発せられていることを突き止める。そのデブリは地球に向かって高速で接近しており、その軌道や特性からして、通常の宇宙デブリとは異なるものであることが判明した。


興奮と興味で胸を膨らませながら、野川博士はすぐさまそのデータを天文台のチームと共有する。この異常な信号の発見は、彼女の研究キャリアの中で最も大きな発見となるかもしれない瞬間だった。


3. 消えた博士


夜明け直前、日の出を迎える静寂の中、東京大学の一角にある先端物理学の研究施設が佇んでいた。この施設の中心、最上階には夢藤健一博士の研究室が位置していた。


研究員の田中は、いつものように早朝から実験の準備をしに研究室へと足を運んだ。

しかし、ドアを開けた瞬間、彼は何かがおかしいことに気づく。通常、博士の研究の真っ只中で賑わっているはずのその部屋は、一際静かで、中心部に焦げた床の跡が広がっていた。

博士のいつもの席には、無造作に「少し出かけてきます」と書かれたメモが一枚だけ残されていた。


田中は驚きと困惑の中でそのメモを手に取った。

夢藤博士は、その天才的な才能と同時に、突如として消えるような奇行も持ち合わせており、そのため、研究員たちは彼の予測不可能な行動には慣れていた。

しかし、今回の彼の消失は、以前とは何かが違っていた。

その最大の理由は、部屋の隅に設置されていた、彼が開発した最新の実験ポッドもまた、跡形もなく消失していたことだった。


田中は急いで他の研究員たちを呼び寄せ、状況を伝えた。部屋に集まった彼らもまた、焦げた床と消失したポッドに驚き、不安げな表情を浮かべる。

夢藤博士のこれまでの行動の中でも、これほどの大胆な行動は前例がなかった。


「彼がどこかに行ってしまったことは明らかだが、どこへ?」一人の研究員が声を上げる。


「そして、なぜこのような焦げ跡が残されているのか?」と別の研究員が問う。


話し合いの中で、彼らは夢藤博士が新しい実験を試み、何らかのトラブルが発生した可能性を考えた。

それにより博士とポッドが共に消失したのではないかという仮説が浮かび上がった。


しかし、どれだけ話し合っても結論は出ず、不安と疑念だけが残される。

研究室の中には、夢藤博士の存在を強く感じるものが多く残されていたが、彼自身はどこか遠くへと消えてしまっていた。


その日から、彼の消失をめぐる騒動が研究所内で広がり、多くのメディアもこの奇怪な事件に注目することとなった。


博士が研究室から消失して3日後の夜。


4. 地球に落下


夜のとばりがおり静寂が広がる中、突如として天空から明るい光が地表へと疾走し始めた。

それはまるで夜のカーテンを裂く一筋の光の矢のようで、その輝きにはどこか神秘的な美しさがあった。

夢藤博士のポッドが高速で大気圏に突入してきたのだ。

大気との摩擦で生じる熱がポッドを真っ白に輝かせ、流星のように美しく光りながら地上へと落ちてきた。


その光景を目の当たりにした野川ゆみ博士は、その特異な電磁波のパターンと、研究中のデータが一致することから、このポッドが夢藤博士のものであることを確信した。


彼女はすぐさま東大の研究者たちと連絡を取り合い、情報を共有した。

彼らは一致団結して、この驚くべき現象を解析しようとした。大部分の研究者たちは、これが何らかの物体移動の実験結果であるとの見立てを立てた。


ポッドは次第に速度を落とし、高度を下げてきた。

その時、青白く光るポッドの上部から小さな爆発が起き、赤白く光るパラシュートが展開された。

このパラシュートのおかげで、ポッドは徐々に減速し、安全に地上へと向かうことができた。


やがて、ポッドは静かな田園地帯の中心に、ふわりとやわらかく着地した。

辺りは一瞬の静寂の後、多くの人々やメディアがその場所へと駆けつけ、夢藤博士の新たな実験の結果であるとの報道が始まった。

その中心には、夢藤博士のポッドが静かに佇んでいた。


5. 博士の会見


夢藤健一博士の失踪とその突如としての帰還は、国内外のニュースで大きく報道された。

ポッドが着地した場所には、テレビカメラやジャーナリストたちが群がっていた。

中には、彼の研究を熱心に追い続ける学者たちや研究員も含まれていた。


ポッドの扉が開くと、夢藤博士が現れた。

その後、メディカルセンターで軽く検査を受けたが、コールドスリープ装置で眠っていただけで筋力低下などはなかった。


一週間後、博士の会見が開かれた。


冷静かつ堂々とした様子で、自身の発見に関する会見の準備が整った大学の講堂へと足を運んだ。


講堂内は、彼の話を待ちわびる熱気に包まれていた。


彼はマイクを手にし、まず、自身が行った実験が、物質転送ではなく時間移動装置であることを簡潔に説明した。

そして、10000年の時間軸は移動できたのだが、地球の公転、自転などを計算に入れなかったため、宇宙空間に放り出されたことを少し恥ずかしそうに説明した。


そして、幸い、私が開発したもう1つの装置には、自動コールドスリープ機能があったため、自分の身を守ることができましたと、どや顔をするのだった。


10000年のコールドスリープをしても、健康状態が良好で、その場でぴんぴんと跳ねる元気な博士の姿があった。


その実験成果に会場内はどよめきが起こり、その後の奇行にも再びどよめきが起きた。


その後、外核部のタイムマシン部分は全て燃え尽きてしまったこと、実験が成功したのですでに興味がないこと、実験の詳細についてはWEB上にアップするので誰でも見れること、この件はもう語らないことが博士から語られた。


そして、内核部のコールドスリープ装置については、公開するので希望があれば、データ含めて全部公開するとのことだった。


彼の言葉は、講堂にいるすべての人々を魅了し、彼の研究とその結果は、科学界にとって大きな衝撃となった。





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