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3話「意外と悪くない感じです」

 国から離れた島へ送られてしまった、その事実はもう書き換えようがない。が、その島にてクリフィスに出会えたことは、不幸中の幸いであった。知らない場所へぽいと放り込まれ一人で生きていくなんて私には無理、だからこそ、時々でも話し相手になってくれる人がいるというのは大きかったのだ。


 また、クリフィスと親しくなったことによって、島内での人間関係も順調に発展してゆくこととなった。


「よう! お嬢! おはようさん」

「おはようございます。今日も朝早いですね」

「まき割りしてるからよ! 朝いちから仕事なんだ!」

「そうでしたか」

「お嬢は今から?」

「少し水浴びを」

「おう! そうですかい! お気をつけて~」

「ありがとうございます」


 ここへ来て数週間、知り合いも増えた。


 島流し先の島――そう聞けば極悪人が多くいそうなものだが、意外なことに、この島にいるのは大抵が理不尽な理由で島へ送られた人だった。それゆえ、真の極悪人というのは少数で。むしろ、話を聞くと可哀想と思ってしまうような人の方が多かった。王族に嫌われて、とか、偽りの罪をでっちあげられて、とか――わりと境遇が似通っている。


 だからだろうか、私は意外とこの島が好きになっている。


「はようさん!」

「あ、おはようございます」

「今日荷物届きますで!」

「食糧ですか?」

「そうそう! まぁまたちょっとやろうけど……でも何か良いのあったら貴女用に持ってきますわ!」

「え、いいですよそんなの。気を遣わないでください」

「果物とか入ってることもあるんで!」

「美味しそうですね」

「ほな見ときますわ!」


 島民は良い人が多いし、皆親切。

 そして環境も自然がたくさんで案外悪くない。


 空気も美味しいし。


「お姉ちゃんだぁ! 元気?」

「あら、ぼくちゃん」

「元気?」

「ええ元気よ。お母さんは?」

「向こうで洗濯してる!」

「そう、朝から偉い方ね」

「ぼくはその間遊んで待ってるんだぁ、下の子の面倒みたりしながら」

「あらそう! それは偉いわね!」


 両親に会えないのは寂しいけれど――ここで生きていくというのも案外悪くはないのかも。


 今は少しそんなことも思ったりする。


「気をつけて遊ぶのよ」

「うん! ありがとうお姉ちゃん!」



 ◆



 アイリーンが島での暮らしに慣れ始めていたその頃。


「な、何なのよ! こんなことして! 拘束するなんてっ……」


 ウルリエは城の地下にある牢屋に閉じ込められていた。


 イリッシュの気を引くためか否かは定かでないが王族の女性から暴力を受けたと嘘の主張をしたために女性の怒りを買ってしまい、ウルリエは拘束されたのだ。


 それでも彼女はまだ強気で。

 見張りに対しても高圧的な態度をとっている。


「これは王族の命令です」

「離しなさい! それかすぐにイリッシュを呼んで!」

「それはできませんね」

「あたしが嘘つきだって言うの!?」

「貴女の主張が事実であると証明されない以上仕方のないことです」


 拘束されてもなお、ウルリエはウルリエだった。


 その強気で圧の強い振る舞いに変化はない。

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