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亡霊メギドと剣聖の弟子

演者グリードロックの弟子

作者: 仲仁へび
掲載日:2023/06/12



 とある世界スノウラヴァーに生きる少女。

 貴族令嬢のステラは、魔法が使えない少女だった。

 貴族であれば魔法は、だれでも使えるはずというのに。

 ステラは使えない。

「私にだけできる力があればいいのに。それか他の子よりも強い力が」

 その事を気にしていたステラは、何らかの取り柄がほしかった。


 そんなステラは、ある日小さな村で少年と出会う。

 名前はツェルト。

 ツェルトは人当たりがいいため、誰とでも仲良くなれる子供だった。

 そのため、ただの平民であったにもかかわらず、貴族のステラともすぐに仲良くなった。


 ステラとツェルトが仲良くなってから数年。

 二人は、冒険と称してあちこちへ出かけるようになっていた。

 村にいた同じ年頃の子供達と共に、平原や川などで遊ぶ、平和な日々を送っていた。


 しかし、ある日うっかり危険区域に立ち入ってしまう。

 そこは危険な魔物がいる場所だった。


 立ち入り禁止看板が朽ちていたのが原因で、ステラ達はそれを見逃していた。


 結果、危険な魔物に遭遇して、命の危機に瀕してしまう事になった。

 他の子供達を逃がすためにと、他の者より比較的ケンカの腕っぷしが強かったステラとツェルトが囮になった。


 だが、圧倒的に魔物の方が強かった。


 魔物に襲われて命を落とすかもしれない状況。

 ステラがもうだめだと思った瞬間に、その人物は現れた。

 ボロボロの姿の男性が、あざやかな剣技で魔物を撃退したのだった。


 その男性の名前はツヴァイ。

 行く当てがなく、記憶もない人間だった。

 そのためステラは恩返しをするために、両親に頼んで自分の屋敷に住まわせる事にした。


 ツヴァイは色々な事を知っていた。

 魔物相手に披露した剣技だけでなく、歴史や医療の知識にも詳しかった。

 貴族界の礼儀作法や王族のマナーなどについても、詳細な知識があった。

 そのため、長い間取り柄になやんでいたステラは、ツヴァイに様々な事を学んだ。


 向上心の強かったステラは、特に剣技をならい、めきめきと力をつけていく。

 そして、それを自分の取り柄だと誇れるまでになった。

 その話を聞きつけたツェルトや村の子供達も同じく、ツヴァイに剣を習うようになった。


 剣の腕や知識面を考えて、ステラはツヴァイの正体を推測する。

 ツヴァイはもしかすると、国に関わる重要人物かもしれない、と。

 それを確かめるために、ステラ達は両親や大人の力を借りて、色々情報を集めてみたが。

 手に入れた内容は、該当する人物はいないというものだった。


 気になったステラは、直接国の中心部へ向かってみる事にした。

 両親やツヴァイと共にやってきたその場所、王都はとても活気のある華やかな場所だった。


 都を見回っていく中で、ツヴァイは記憶を思い出していったようだった。


 ツヴァイが語った記憶は、悲惨なものが多かった。

 ツヴァイは国に利用された人間であり、呪われた人間で、実験体として扱われていたという。

 共に実験に参加する者は多かったが、その実験がすすんでいくにつれて他の多くの人が、亡くなっていった。

 ステラはその話にショックを受けた。


 ツヴァイの話を聞いたステラは決意する。

「私が偉くなったら、国を変えてみせるわ」と。

 そして、ツヴァイの様な人間が出ないようにすると。


 その日からも、熱心に剣の腕を磨き続けたステラ。

 才能があったため、ありすさまじい勢いで力が開花していった。

 それは、ツェルトも同じだった。

 剣技を習う学校に通い、良い成績を収めた二人は、国の中心部で働く事になる。

 そして、様々な手柄を立ててすぐに昇進していった。


 やがて二人は、誰も敵わないとと言われるほどの極致、剣聖にまで登りつめる。

 ステラは喜んだ。

 これで、国の環境を変える事ができると。

 しかし。


 国の王様はステラに向けてこういった。


「そんな実験は、この国では行われていませんよ」と。


 ステラは信じられない想いだった。

 けれども確かに、王様の言う通りだった。


 非道な実験の証拠は、いくら調べても、どこにもみあたらなかった。


 一体どういう事かと、ステラはツヴァイに話を聞こうとした。


 けれども、その姿は見つからない。

 ツヴァイは姿を消していた。


 やがてツェルトが、隣国に行った際に似たような話を聞いて来た。

 可哀そうな剣士のふりをして、人の良い剣士の卵に近づき、才能を育てる人間の存在を。

 その人物は、国の利益のために、剣士の卵の前で演技をしていると。

 ステラは衝撃を受けた。


 剣士を育てていたその演者の名前は、グリードロック。

 現役でいた全盛期には何人もの亡き偉人と共に、国のために行動。命を惜しまぬ作戦をこなしたという功績があった。

 ステラ達がいる国は、近い将来隣国とあわさり、二つの国になるだろう。

 だから、この国にも出没していたのだった。


 ステラ達はグリードロックを探しだそうとしたが、なかなか見つかる事がなかった。

 もやもやとした気持ちを抱えるまま月日を過ごしていく。


 ある日、ステラ達は困難な任務をうけおった。

 その任務は、他の剣士には任せられないほど、達成の難しい内容だった。


 なぜなら国が指定する災厄クラスの魔物を、同時に二体相手にするというものだった。

 その存在は、一体だけでも、村や町が滅びてしまう存在だったというのに。


 剣聖ですら危ない相手。


 任務にあたったステラ達は、当然の流れとして命の危機に瀕していた。


 相手は、同じく任務にあたったツェルトと力を合わせても、なおかなわないほどの敵。


 ステラは、今度こそはダメだと思っていた。

 子供の頃のように、奇跡で一命をとりとめたりはしないと。


 しかし、命を落とすと思ったのその瞬間、グリードロックがやってきてステラ達を守った。


 はじまりは偽りの関係だった。

 表面的にもそうだっただろう。

 しかし心の中には本物の絆が芽生えていた。

 グリードロックは、演者としてではなく師匠としてステラ達を助けたのだった。


 その後、ステラ達はなんとか魔物を倒して帰還した。

 しかし、魔物から受けた傷でグリードロックは息をひきとってしまった。


「俺の本当の名前はーーだ」


 ステラ達は、国に貢献した偉大なる人物、グリードロックの葬儀には参加せずにいた。

 師匠として慕っていた人物として、後日墓参りでささやかに別れの言葉を告げた。


 その墓には、グリードロックの本名と、好きだった雪の様に柔らかで白い花が添えられていた。



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