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30わ

「…親父?」

「…うそ」


一瞬の出来事だった。

もはやふたりの白骨だった物、風に吹かれて消える灰しか残っていない。


「誰だ」


私は怒りを抑え、雷槍を放った人物と向き合う。

それは暗闇の向こうから、軽快なヒールの音とともに現れた。


すらりと背が高く、鋭い目。

細身の体に似つかわしくない、ガスマスクをつけた女性だった。

青色の長髪に、オパールのような構造色の瞳をした女は、優美とも言える足取りで歩いてきた。


「君がやったのか」


女性は軽やかに首を振ると、長い髪がぱさりと踊った。


「ええ」


甘ったるい声で、くすくすと悪戯っぽく微笑みながら女性が答える。


「ならば、拘束させてもらう」


私は四つの光の輪を作り出し、彼女を拘束した。


「あンッ」


と、彼女は愉しそうに笑う。


「こいつが、助かったはずの命を、奪いやがったのか…!」


ぎりり、と万力を引き絞るような音が引き絞られる。

レアの怪力。

私は腕を出し、彼女を制した。


「邪魔すんな!」

「敵の目的を聞き出す方が優先だ。脅威は彼女ひとりとは限らない」


私の言葉に、レアは歯噛みして踏みとどまる。


「…私の名はクリストス。君の名前は」

「あたしの名はイスラ。やっとここを落とせそうだったのに、邪魔してくれちゃって」


彼女は私と色違いのような黒いローブを羽織っている。

異教徒、という単語が頭をよぎった。


身に纏う衣装そのものが、私たちと相容れない異物感を放っている。


「君の目的は何だ」

「あたしはただ、魔族を根絶やしにしたい人間と、そんな人間どもに恨みを積もらせている魔族の意思を尊重しているだけよ」

「それは君の意志だろう。彼らはわかり合おうとしていた」

「総意にブレがあったから修正しただけよ」


人ふたりを殺しておいてこの胆力。

この女もまた、心にとんでもなく大きなノットビューティを抱えている。


「…君は危険だ」

「ははっ。あんたがそれを言うの?六角の理から外れた化け物が」


ぎしり、とイスラを抑えていた光の輪が軋んだ気がした。

いや、気のせいだ。

魔人でさえも縛る光の輪だぞ。


ましてやイスラは、角も翼も持たない人間じゃないか。


…人間?


人間が、一撃で魔人の長を?

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