表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/31

2わ

「お兄ちゃん、やめてよう」

「うるせー!お前、生意気なんだよ!」


5歳か6歳くらいの兄弟が、道の端で喧嘩をしていた。

このくらいの年の差では、兄が勝つに決まっている。

弟は泣きじゃくっていた。


私はそっとその場に近づいて、兄のほうの肩を優しく抑えた。


「汝、兄弟を愛しなさい」


優しい笑顔でそう告げた。


「は?おっさん誰?」


と言い返されたが、ともあれ兄弟たちの喧嘩は終わった。


世界がひとつ平和になった。


なお、私はもう10世紀は生きているので、おっさんというレベルではない。


「人里に降りるのも、もう数百年振りか…」


私は改めて各地を見渡した。

世界は大きく変化していた。


蒸気技術という新しい魔術が生み出されてから、人々の暮らしは大きく変わっていた。


夜は昼の明るさを手に入れ、離れた人とも気軽にお喋りができ、ひとつの家から無数の蒸気パイプが飛び出している。


「なるほど、面白い魔術の使い方をする」


私はかしこいので、見ただけで魔術の原理がわかる。


この蒸気技術は、火水土風の基本属性を、余すことなく使えているようだ。

水を火で熱し、風を生んで土を動かす。

これなら少ない魔力で動力を得ることができるだろう。


四属性の魔術を行使するなど、私が生まれ育った時代では賢者クラスでなければ思いつきもしなかっただろう。

時代の進歩というのは素晴らしいものだ。


「ああ、世界は、今日も美しい」


「な、なんだこのおっさん…」

「お兄ちゃん、怖いよう…」

「だ、大丈夫だ。俺が守ってやるからな…」


見れば先ほどの兄弟も喧嘩をやめて、仲直りの抱擁をしているように見える。

その姿に感動して、私は叫んだ。


「んん、世界!!ビューティフル!!!!!」


兄弟は大きな声で「ぎゃあ」と返事をすると、どこかへ走り去っていった。

子供が元気で世界は平和。

今日も世界は愛で満ちている。


「美しいおばちゃん…」

「ひっ!?」


ふふ、とニヤニヤしながら、私は街を歩いていった。


「ビューティフル野良猫」

「フシャー」


もうしばらく、この街を観光しようと思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ