15わ
私は魔人とタルっ腹の男の間に着地すると、お互いの武器をそっと降ろさせた。
「く、クリストスさん」
「汝の愛、実にビューティ」
彼の美しさに、私はにっこりと微笑んだ。
しかし、争いは美しくない。
「やめないか。こんな不毛な戦い」
「ふざけんな…こいつ……くそっ、なんで体が…」
「閃光の魔術に移動速度を落とすディレイの魔術を込めておいたからな」
「なん、だと…っ!?」
見えない糸に縛り付けられたかのように、魔人も人間も動けていない。
さすがに私の「まりょく」ならば、いくら魔人でも問題ないようだ。
「き、傷も気づいたら、癒えている…?」
「広域持続回復魔法、リザレクションだ。今この一帯を包んである」
地区ふたつを包む回復魔法を放ち、敵味方ともども完全回復させていく。
「ディレイどころかストップ並みに強力な負荷魔法を一帯にかけ、同時にこの広範囲をこの密度の回復魔法で包むだと!?我ら魔人でも、そんな真似は……」
と狼狽する魔人。
「クリストスさん、どうして俺たちの動きまで縛るんですか」
「ちっ、ちっ、ちっ」
狼狽するタルっ腹。
わかってないなぁ、と言うように、私は指を振った。
「汝、魔人を愛しなさい」
「は?」
「愛こそ至高。愛こそ全て。この世界は美しい。この美しい世界の中で、どうして争う必要がある?どうして愛せないものがある?それはね、心にノットビューティがあるからなんだよ。私は、ノットビューティを取り除いて、世界を愛で包みます」
「ふざけんな、この狂人が」
魔人の男が、忌々しそうにそう吐き捨て、こう続ける。
「圧倒的な魔力で俺たちを押さえつけておいて、愛で包みたいだと?笑わせる。要は力あるものが力なきものを蹂躙する世界なんだ。今がそうであるように!」
「なるほど。一理あるな。では…」
ぱちん、と指を鳴らして、展開していた魔術を解除した。
「なっ」
「さぁ、おいで」
そして戸惑う一同を前に、私は諸手を広げてこう宣言した。
「私こそがあなたたちの宿敵であり、憎むべき悪魔であり、倒すべき仇である。さぁ、おいで」




