第3章:目覚め
「うう…………?!?!」
頭痛と共に視界が覚醒していく。
最悪な目覚めだ。
夢で見たのは、、、、
俺だった…
永遠と思われた悪夢が蘇った気分だった。
「そうか…俺の名は…シン」
祖母が付けてくれたこの名前に
懐かしさが込み上げてくる。
「うう…」
また頭痛が襲いかかってきた。
記憶が少し戻ったからだろうか
その痛みに少し慣れてきた頃
部屋のドアが開いた。
---ガチャ
「ひどくうなされておったが大丈夫かの?」
老人がそう言いながら心配そうに近づいてきた。
「すまない。嫌な夢を見ていたようだ」
「ほう。なにか思い出したかの?」
「ああ…少しだが。俺の名はシンという」
「ふむ。シンか。そういえば名をお互い名乗っていなかったのう」
「わしの名はオースティン…ただの老人じゃ」
そう言ってふぉっふぉっふぉっと笑っている
ただの老人?そんなはずはない
なぜかは分からないがオースティンへの警戒レベルが
とてつもなく上がっていることが分かる。
悪いやつではないことも事実なので
安心しているが常になにがあってもいいように
気を張っている………つもりだ。
「シンよ」
?!?!?!
考え事をしていたせいで驚いてしまった。
「なんだ?」
「物思いにふけておったからのう
これからどーするつもりじゃ??」
ふむ。たしかにオースティンの質問は
俺も考えていたとこだ。
「どーするか……一旦街の方に向かおうとは思うが
生憎、土地勘もそして目的もない。
強いて言うならば記憶を取り戻したいかな…」
「そうじゃのう。この辺りは辺境の地でのう
夜は獣や盗賊も居る。街までは早くても5日はかかるじゃろうな。」
そう言ってオースティンはジッとこちらを見て
続けてこう言った。
「シンは……ふむ。深いな」
???????
深い???
何を言ってるんだ??
「深いってなにがだ?」
疑問をそのまま口にした。
「強いて言うならば…闇がじゃな
内に秘めたる力は相当なものじゃ
じゃがその力は眠っておる
いや、正しくは忘れているが正解じゃな」
「忘れている…」
オースティンの言う忘れているの表現は
恐らく正しいだろう。
自分の中に忘れてはいけない何かがあることは
薄っすらではあるが感じることができる。
「この世界の事を知らなすぎる点から
シンはもしかしたらこの世界の人間ではないのかもしれぬな」
「?!?!
そんな…まさか…」
頭が混乱してきた。
たしかにいくら記憶喪失とはいえ
知らなすぎることが多すぎる。
俺は一体なんなんだ…
「まぁ仮説じゃがのう。
ここで話し合いを続けても思い出せるもんも少ないじゃろう
今後の話なんじゃが提案がある
シンよ。ここで少し修行しないか?
今のままでは街にたどり着く前に野垂れ死ぬのが目に見えておる。わしが着いていくのはいいが…昨日説明した通りこの世界は力が全て。わしが居なくなった後も1人で暮らせるようにある程度の力は必要になるじゃろう」
力か…………
なぜかは分からないが
力と聞くと心の中からふつふつとなにかが燃えてくる
これは…俺は…力を欲している…のか?
だがなぜなんだ。なぜ俺は力を求めている
それが分からない。
記憶を無くす前の俺は力をふるっていたのか?
思い出そうとすると息が詰まる。
だめだ。頭が混乱している
思考がまとまらない。
どれぐらいの時間、自問自答していたのだろう
「…ン…………シ……ン……シン!……シン!」
ハッとしてオースティンが俺を呼んでいることに気がついた。
「ああ…すまない!考え事をしてしまっていた」
「なんじゃ。いくら呼びかけても反応がなかったから心配したぞ」
オースティンはそんなシンを見てホットしていた。
「とにかくわしの提案に対しての答えは?」
「………世話になる」
頼りにできる人はオースティンしかいない。
目的も特にはないのでこの世界の理に従うほかない
力が全てなら力をつけておいて損は無い
そしてなにより…
この老人…オースティンからは尋常じゃない力を感じる
教わっておくのに越したことはない。
「よし。では明日から力の修行を開始しようかのう
今日は調子が悪そうじゃ。ゆっくり休んでおくのじゃぞ!」
「わしも色々準備があるので少し出かけてくる」
そう言ってオースティンは部屋を後にした。
明日から力の修行か。
一体どんなものなのか想像もできない。
この世界のことをもっとよく知らないといけないな。
そうこう考えているとお腹が空いてきた
辺りはもう夕刻時
外にでて、机に置いてある果物を平らげ
またベッドに戻り、明日に少し不安を残しながら
目をつぶった。
「ふぅ。シンか…あの内に秘めてる闇が
邪悪じゃなければいいがのう。
もう隠居している老人に最後の仕事かの…」
ブツブツと独り言を呟きながらオースティンは
暗くなりつつある森の中へ消えていった。