第2章:誕生(過去編)
「シン…あなたの名前よ…」
祖母の優しく心地良い声が響く。
「真実の愛を深く浴び、真理を見逃さないように」と祖母は言っていた。
祖母の温かい両手に包まれながら
名前を呼ばれたのが産まれた時の
最初の記憶だ。
いつ思い出しても、ここから僕の人生が
始まっている。
祖母の記憶もここで最後になっている…。
ーー0歳。
【シン誕生】
僕が産まれてすぐ祖母は亡くなった。
母親と父親はよく怒声を浴びせ合いながら
喧嘩していたのを覚えている。
毎日毎日、何の事で喧嘩が起きていたのかは
解らないし、理由なんか邪魔でしかない。
生後3ヶ月。
地獄が加速していく…
お互いの怒りは僕に向けられるように
なり、怒声は暴力に変わってきた。
(暑い熱い…重い…苦じぃ…)
布団蒸しにされ僕は全く身動きがとれず
泣きわめいているのに上からその様子を細目で母はニタニタ笑いながら覗いていた。
親の怒りを軽減する為に
僕は産まれてきたのかと思うほど
残酷な愛情、軽はずみな暴力が日々与えられる。
僕はこの頃の記憶がはっきり残っている。
産まれる前…胎内の記憶もある。
稀にこういうケースもあるみたいだ。
まるで忘れさせないように…
この光景が染みつけられるように…