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33.おばさんだって察する能力はあるのだ

私には抱きしめる事しか出来なかった。なんて声をかければ良いの?


どんな言葉も空回りしそうで、傷つけてしまいそうで怖い。迷っていたら彼が静かに口を開いた。


「ルビー、席を外すか? それとも、このままユリ様の話を聞くか。お前次第だ」


私の膝にはまだ交換日記と魔物が眠るビー玉が転がっている。腕の中の彼女は、ゆっくりと顔を上げ私を見た。


「最後まで伺ってもよろしいでしょうか?」


その目は、ただ凪いでいた。




***



「まず、私は隠し味。ようは調味料のような存在らしいのよ」

「調味料ですか?」


二人は困惑している。


まぁ、シリアスな話なのに何をふざけているんだと言いたいわよね。ええ、分かってますとも。私でさえ女神様って大丈夫なの?と思いましたよ。


「最初は私も馬鹿にしていたのよ。軽い冗談みたいに受けていたのだけど」


でもね、暮らしていく内に気づいたのよ。


「私の能力って、自分があまり望まないのもあるけど、全てがちょっとだけなの」


少しの治癒に少しの加護。


「でも、理にかなっていると思うの」


誰だって欲はあるじゃない?


「あれも叶う、これも創り出せる。それは素敵な事だけど、急激な変化は時に身を滅ぼすかもしれない。より良い生活は、人には良くても他の生物にとってはどうかしら?」


私が生まれ育った場所は、人が食物連鎖の頂点に立った結果、便利を追求した成果は、いまや地球の寿命をできる限り延ばさなければという状況である。


「魔物は、大昔はこんな攻撃的ではなかったそうよ。人や動物の負の感情を浴びて少しずつ壊れていった。そうよね? 女神様」


呼びかければ、日記から光が溢れ出した。


「ユリ様?!」

「えっ」

「見える?この世界の女神様だそうですよ。今日は」


交換日記の表紙の上にお山座りをしている女の子に挨拶をすれば、恥ずかしそうに顔を伏せた。


「め、女神様? まさか」

「ルビー、視てみろ。普通ではない気配だ」

「あ、確かにそうですが」


二人の動揺が予想以上でなんだか楽しいと思うのは私だけよね。肝心の女神様は凝視に耐えられないのか更に顔を膝に埋めている。


サイズもさることながら、こんなにも恥ずかしがり屋さんとは思わないわよね。とうとう白金に近い髪により顔が見えなくなってしまった。


これは、まあ予想はついていたけど話をするのは私かしらね。


「女神様、とりあえず私が一人の時にお話をしましょう」


そう伝えると、髪の隙間からほんの少しの笑みが見えたのも一瞬で姿を消した。


なんともシャイ過ぎなトップである。


「まぁ、援護みたいになってしまうけど、今の彼女は代替わりをしたばかりみたいなの。生まれて間もないみたいでね」


だからサポート係はオバサンが選ばれたのかと最近では納得している。


「で、魔物の話なんだけど。この子が寂しいって言うから相性がいい子がいる森に連れて行こうと思ってね」


あら?


「なんだか抜け殻みたいになっているわね」


静かなので、進めていいのかなと見やれば二人共何故か頭を抱えている。


「……やはりユリ様は、規格外のお方ですね」


ルビーさん、それって褒めてないわよね。

おばさんでも察する能力はあるのよ。





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