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31.私は、甘かったのかもしれない

「まずは見てもらえるかしら?」


二人はまだベッドにいたほうが良いと言うのでお言葉に甘え半身を起こしたまま両手を開らき、来てと願えば空中から日記帳が現れた。


「以前見たユリ様と女神との連絡…それはっ!」


見てもらったほうが早いと思ったんだけど、予想以上の驚きだったみたいで、いつ、何処から取り出したのかルビーさんは、キリみたいな武器を構え振り上げた。


まさかの戦闘モードに!


「ちょっ、違うのよ!」


ここまで過剰に反応するなんて!


「ルビー、待て」

「しかし危険です!」

「声を抑え武器を降ろせ。まずユリ様をちゃんと見ろ」


副団長さんの声に反応した彼女は、私の目を見た。


「女神様に頼んで眠らせているの。この器からは出られないから安心して」

「でも、ソレは魔物です!」


ルビーさんが、指差したのは、私の手のひらに乗るビー玉。といっても直径五センチくらいだろうか。


「怖がらせてごめんなさいね。席を外しても構わないわ。聞く聞かないは二人に任せるわ」


一方的に話を聞いてというのは間違っていたわね。


私は、魔物という存在がこの世界の住人にとっては、どれほど恐れる存在か理解しきれていないのだとルビーさんの剥き出しの憎しみを目の当たりにして思い知った。


「……取り乱し申し訳ございませんでした」


「謝る必要なんてないわ。私が浅はかだったわ。やはりこの話は止めましょう」


「お待ち下さい」


諦め、再び日記帳と共に消そうとすれば、黙っていた副団長さんが口を開いた。


「その魔物の気配、北の森、ミルノアの魔物ですね」


凄い。彼は魔物が作り出した結晶の塊しか見ていないのに。


「ミルノアの森の魔物? でも、あそこにこのような力のある魔物が生息しているなんて。副団長はご存知だったのですか?」

「ああ。ただ、あの時ユリ様は倒したと言っていた」


そう。あの死を身近に感じた瞬間、女神様からの防御の力で死なずに済んだ。


「気を失わせたのは確かよ。ただ、殺したくなかったの」


「何故です?! ユリ様が誰にでもお優しいのは理解しています。だけど! 魔物までだなんて!」


私は、ルビーさんとの付き合いは長いとはいえない。けれど、今の彼女の取り乱し方は普通ではない。


「ルビーさんは、魔物をとても憎んでいるのね」


私の言葉に、彼女は苛立ったようだ。だけど、それも長くは続かず力なく武器が手から落ちた。


「私の弟は魔物に喰われたんです。当時、弟はまだ五歳でした。私は、弟が飲み込まれていくのをただ見ている事しかできなかった」



それは、あまりにも悲しい話だった。



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