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21.百合の堪忍袋の緒が切れる

ズズッズズッ


「流石に重いわ。しっかし転移するには体力が影響するって事かしら? 今日はもう質問ノートを使ってしまったから明日聞くしかないか」


やっぱり質問やお願いは一日一回なんて酷いわよね。


「ユリ様?! その格好は! それにその鉱石はどうされたのですか?!」


いつもなら玄関前に転移出来るのに今日に限って安全エリアギリギリの場所に移動し、しかも自分の身長くらいある石を試しにと持ってきていたという運の悪さ。


まぁ正確には抱えられずやむなく引きずってきたのだけどね。


「怪我は!? 魔獣に遭遇したのですか?! 小さなキズでも毒素がそこから体内に入れば命の危険もあります。見せてください!」


──何よ。ずっと素っ気ない態度だったくせに。


以前の副団長さんだったら終盤にかかっているし、今まで魔獣に遭遇してこなかっただけに一緒に付き合ってもらおうかなとか思ってたのよ。


「痛む箇所はありますか?」


眺めるだけで満足しようと決めていた相手はいまや目の前にいて今にも服を脱がされ傷の有無をチェックしかねない雰囲気を出している。


「今更、何?」

「ユリ様?」

「ずっと自分の殻にこもって自己完結して人が話しかけても適当に流してたわよね?いきなり態度が変わって分からないわけないじゃない!」


久しぶりに目があったけど、あまり嬉しくない。


「おばさんだって傷つくんですからね!外じゃなくて心が!」


最初、彼がこの場に現れて戸惑いもあったけれど、嬉しい気持ちのが強かった。


期間限定で距離が近すぎだけど眺めていられるから。


「お気遣いありがとうございます」


私は、何故この人がとても気になるのだろう。未だに素顔も見た事もないし、この気まずい関係になる前ですら彼からは線引がされていた。


パンッ


「助けは結構よ」


よろめいた私を支えようと伸ばされた手をはたけば軽い音が鳴った。


「…ユリ様、部屋まで送ります。また手にしている鉱物は魔石ですので長時間触れないようにして下さい」


随分冷静ね。


「必要ないわ。それより最近のこの空気の悪さを改善する気があるなら夜に来てちょうだい」


これ以上口を開けば今の私は彼を罵倒しかねない。そもそも、この泥だらけな状態をなんとかしなければ。 


とりあえず湯船にゆっくり浸かるか。


まだ何か言いたそうな彼を無視して再び鉱石らしいソレを抱きしめるように抱えなおし、仮の我が家へと足を進めた。





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