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発端、もしくは押しかけ師匠 その3

プロポーズとかされたの初めてだからちょっと心揺れて危うくその場の勢いで返事するところだった。


仁王さんは18歳。俺は学年一つ上の19歳。お互い十分結婚できる年だ。

とはいえ俺と仁王さんそれぞれに条件を出してお互いそれを満たしたらという話になった。

特に好きな人もいなかったし、俺にとっても悪い話じゃない。

仁王さんがすぐにお義父さん、……お父さんである現仁王家当主に連絡を取ったところ、今晩しか時間が取れないといきなり会う羽目になった。


仁王家の屋敷には行ったことないけどとりあえず制服でいいかな。うちの学校が制服で助かった。日常と冠婚葬祭どこでも使えるオールマイティ装備。地味に耐刃、耐魔性能が高いからちょっとした模擬戦くらいまでこなせる万能装備。


会食、というほど豪勢なものではなかったけど、仁王さんに戦い方を教えることを報告し、仁王さんが上手くいったら結婚するとまで話してしまった。


今はその帰り。寮まで仁王さんを送っているところだ。

仁王さん実家暮らしじゃなくて寮生活だった。いや、仁王さんの事調べたといってもどこに住んでるとか特定してないよ。近くに実家があるのは知ってたし普通に実家から通ってると思ってたよ。


なんというか常に護衛がついてて専属の執事かメイドが一声で出てきたりするの想像してたんだけどそんなものはなかった。仁王家という肩書にビビっていたんだけどご飯は仁王さんのお母さんが作っていたし専属の給仕係がいるとかもなかった。家も確かに豪勢な和装の屋敷だったけどなんか、思ってたより普通だった。


「お嬢様という存在に夢でも見てましたか?」


「見てた。ドレスコードとかあると思ってた。仁王を継ぐ覚悟とか問われると思ってた」


「ここ現代日本ですよ。世襲制とか時代錯誤もいいとこじゃないですか。婿養子が仁王を継ぐとかもないですよ。私は単なる一人娘です。多少恵まれた環境にいるかもしれませんが、相応の結果を見せないと、いえ、見せ続けないと私の伴侶となったとしても仁王には関わることすらできはしませんよ」


「世知辛い。それにしてもずいぶん簡単に話通ったね」


「お父様があなたを簡単に私の婚約者候補とした意味、分かりますか?」


「好意的に捉えるなら娘に絶対的な信頼を置いていて、娘が選んだ人物なら認めるってこ……」


「頭お花畑ですね」


「落ちこぼれの娘がとうとうどこの馬とも知れない男を連れて来たって雰囲気だったもんね」


仁王さん冗談とか嫌いなのかな。

俺けっこうこういうの好きなんだけどひょっとしてストレス与えてるだけかな。

仁王さんの前ではもうやらない方がいいかな。


「一応お父様公認で戦闘指南できるようになったのはいいことですが……」


戦い方を教えるのだからそれ相応の戦力を求められる。


「それを理由に絶対俺を殺そうとしてくるよね」


殺そうとっていうのはもちろん比喩表現だ。比喩表現のはずだ。

殺される心当たりなんて一つ、二つ、三つ……。


あれ? 俺の過去絶対調べるよね。たぶん生かしておく理由の方が多いから大丈夫なはずだけど仮に殺されなかったとして戦闘指南はともかく結婚とかその辺は認められるの難しくない?


「今からでも降りますか?」


仁王さんが不安そうな目でこちらを見上げてくる。

いや、このくらい想定通りだから。

不安そうな声と表情しないでくれ。君の救世主になれるかどうかは分からないけど、少なくとも今の地に落ちた立場よりは絶対良くして見せるよ。


「降りない。後輩の女の子には優しくしたい方なんだぜ」


「実際のところあなたはこれからある仁王家の襲撃に対抗できるんですか?」


「少しは反応して欲しいな。相手が一人なら理事長クラスの人が来ない限り大丈夫。物量で来られたら死ぬしかない。毒とかは俺を狙ったものなら防げる。よっぽどのことが起こったら周りの人守るのは無理」


小鳥遊祭の弟子を舐めたら駄目だよ。理事長にいくら鍛えられたと思っているんだ。毎朝三十分だけとはいえ死ぬほどボコられているんだ。正直そこらの暗殺者(そこらにいるのか知らないけど)が束になったって返り討ちにできる自信がある。

……相手が六、七人くらいまでなら。


「私に命を賭ける価値があるんですか?」


「ある」


とは言っても命を賭ける展開にはしない。させない。


そこまでしなくても、俺の望んだ展開にできそうだ。それはあくまで二番目以降の目標の達成を無視した場合の話。

そっちの目的のためにはわざわざ命を張ったりはしない。


「なら最初の襲撃です。彼女たちを倒して認めてもらってください」


「了解、お姫様」


俺が気付いていることは仁王さんも襲撃者――仁王さんが彼女たちといったので一人は女性のはず――にも伝わっている。そういうことを警戒していたし、わざわざ足を止めて見せたのは不意打ちは効かないというアピールだ。


「そういう訳でえっと……、五人いるね。精一杯手加減してあげるから安心していいよ」


「舐められたものだ」


五人の女性が姿を現した。伏兵はいない。

全員、見覚えがある。仁王さんを調べているときにいろいろ情報が出てきた。せっかくだから仁王さんには、俺のオリジナルの魔法と、オリジナルではないけど今まで理論しかなかったものを俺が完成させた技術を見てもらおう。仁王さんと戦っていた時の縛りを一つ、解く。


俺は左手に魔力結晶、外部から魔力を供給するアイテムを持つ。

俺の得技は魔力操作。俺の弱点は総魔力量。

充電があまりできないなら外部バッテリーに頼るのは自然な帰結。


さぁ魔道具の解禁だ。

気軽に使えないくらい高価な品だけどここが使いどころ。魔法の力を魅せてやる。


「君達、彼女の戦闘指南の方達ですよね。君達を押しのけて彼女を教えることにしたんだ。なら、ここは実力を示すのが礼儀ってもんです」


「どうやってお嬢様を騙しているのか知らないが、貴方には消えてもらいます。大方お嬢様一人を御せばなんとかなるとお考えでしょうが、仁王家はそこまで甘くはありません」


……それさっき聞いた。


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