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プロローグ、はじまりの想い 紀伊原鏡

これはまだ魔力研究会が三人、俺、見城(みしろ)三月(みつき)音斑(おとぶち)(たすく)紀伊原(きいはら)(きょう)の三人だけだったころの話。

今でこそ女子四人、男子二人の女子比率高めの部であるんだけど、研究会発足直後は男子二人、女子一人のむしろ男所帯みたいなところだった。しかも男子二人は学院きっての問題児と魔力量底辺の落ちこぼれなのに対して女子の方は俗に言う十万越え――学年に何人もいない天才――でかつ容姿も整っていたからちょっとだけそういう話題になったこともある。佑と紀伊原さんが幼馴染だったという事実もそれに拍車をかけた。


まぁ、後に女子は全員十万越えとかいう弱小部のくせにちょっとおかしい面子が揃ったせいで当時の噂を覚えている人はほとんどいなくなったんだけど。


あの頃佑も紀伊原さんも口数は多い方じゃなかったから、俺が話題を振って二人がそれに答えるというようなことが日常的な光景だった。この日も、部室に集まったはいいが佑は何か一人で考え事をしているし、紀伊原さんは難しそうな学術書を読んでいた。


「ねぇ、最強の魔法使いってどんな人だと思う?」


この質問をした意図は特になかった。毎日何かしら話題に困ったときにぽろっと出てくるその一つに過ぎない。ようやく関心を持ったかのように紀伊原さんが本から目線を上げて俺の質問の意図を尋ねてきた。


「最強って理事長の事?」


「いや、実在する人物じゃなくて、自分の中の理想像っていうのかな。これができたらもう最強って概念みたいなもの。ほら、最強の理想像って人によって違うじゃん」


紀伊原さんが考える仕種をする。

この質問に思うところがあったみたい。そういう仕種をされてようやく思い至る。確かに紀伊原さんにとって、この質問はちょっと意地悪だったかもしれない。そういうことを思って言った質問じゃなかったけど、いい機会だ。今の紀伊原さんがどう思っているのか、知ってみたい。


「見城君はそういうの、あるの?」


「俺?」


「そう。そういう質問するからには、見城君には最強の理想像があるんだよね。ちょっと思い浮かばないから、先にそっちの理想像を聞かせてよ」


どうしよう。あんまり考えていなかった。でも、質問したのは俺だし、先に答えるのが筋だよな。


「実は俺もあんまり考えてなかったんだけど、強いていうなら」


頭の中で自分の中の最強像を聞いてみる。


すぐに思い至った。

いつも自分が心がけている戦い方。先輩に直せと言われた。それだと格下にしか勝てないと、相手を甘く見過ぎだと。それでも嫌だと言い切った。格下にしか勝てないなら、地力を上げて戦う相手より強くなると誓った。


「戦う相手に傷一つ負わせないで、相手に全力を出させて、それでもその上を行くような、何百回繰り返したって勝てないと思わせて負けを認めさせるような勝ち方を誰が相手でもするような人かな」


当時、紀伊原鏡は俺の実力を知らなかった。

だから、俺の言葉がどう映ったかわからない。魔力量が五桁に満たない弱者の憧れと映ったか、身の程知らずで夢見がちな絵空事と映ったか、その辺だと思う。でも、そんなことできっこないと思われたのは確かだと思う。


「最も強い、か。確かにそのくらい強かったら最強かもしれないね」


そう呟いた紀伊原さんの心情を、俺は推し量ることができなかった。諦めか、もしくは憧れか。ひょっとしたら後悔なんかも混じってたかもしれない。


「ねぇ、それって具体的にどうってわけじゃなくて、抽象的にこんな感じ、みたいな答えでもいい?」


「全然かまわないよ。むしろパッと出てきた疑問だから決まらなかったら決まらないでもいいくらい」


その時なんて紀伊原さんがなんて応えたのか実は覚えていない。

意外だった気もするし、しっくり来た気もする。ただ、その答えは全然抽象的じゃなくて、特定の答えをはぐらかしているように感じたことだけは覚えている。


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