プロローグ、はじまりの想い 弓削紗夜香
今まで読むだけだった素人です。いつかなろう作家になる、と思ってようやく一巻分書き溜めたのでちょこちょこ投稿していきます。週一って結構なハイペースだったんだなって先駆者に尊敬の念を送りながら初投稿です。
その少女は、過去に強くなると誓った。
きっかけは、少女の所為で私が少なくない代償を支払ったこと。
それは、その少女の弱さが原因だった。だから、少女は自分の弱さが赦せなかった。
でも、現実の壁はあまりに厳しくて、一般的な同年代の子とは比べられないほどの力を手にしても、目標には遥か遠い。
このままでは、私には届かない。
それは仕方のないことかもしれない。だって、持って生まれたものが違うのだ。双子とはいえ、その素質は私の方が大きい。同じ努力を重ねたら、先に強くなるのも、その最大値が大きいのも私の方だ。ちょっとやそっとの努力で埋めることのできる差ではなかった。私も、努力を怠るようなことはしなかった。あの子もそれを望んだりはしなかった。だから、その差は縮まることはなく、むしろ開いていく一方。
いつしか少女は、諦めを前提に努力するようになった。
今はまだかろうじて私について来ることができる。でもこの先はどうだろう。五年後、十年後、ひょっとしたら私は、あの子を遠ざけるようになるかもしれない。どうしようもない。誰が悪いということもない。
今でも、あの子は私を好きでいてくれているだろうか?
未来の私はあの子を好きでいられるだろうか?
いつだって幸運は私の方に訪れた。その度に私は飛躍的に強くなって、それはあの子の真っ当な努力を踏みにじっているかのようだった。
強いことが嫌いだった。
これ以上強くなったら、あの子と一緒にいられなくなる。
これ以上差が開いてしまったら、あの子に嫌われてしまう。
――お姉ちゃんはそのままでいいんだよ。私は、絶対に追いついてみせるから
子供の頃に何度も聞いた言葉。
それも、最近は聞かなくなってしまった。
別にギクシャクしているわけじゃない。
ただ、なんとなく分かってしまう。あの子は、もう私を同格とは見てはくれない。
生まれ持った素質が大きな私には何も言えなくて、何もできなくて。
それでも努力を重ねるあの子は何より尊いもののはずなのに……。
誰か、あの子より無才の人が私たちの前に表れて、そのままあの子を、私を圧倒してくれないものか。
そんな都合の良いことを考えてしまう。
同年代どころか大人でさえ、私はおろかあの子に届かない人もたくさんいる。私たちの特別は、生半可なものじゃない。
その少女たちに転機が訪れるのはもう少し先の話。
切羽詰まった姉妹は龍殺しに希望を託す。他者を顧みない姉妹の自分勝手な願いは、とある無才の人物がその身の丈に合わない非常識な強さを持って証明されることになる。
人は、どこまでだって強くなれる。
ここの伏線を回収することをモチベーションに続けていきます。