目覚め
「う、ここは・・・?」
意識が朦朧とする中で、僕は時空間ホールに吸い込まれたことを思い出す。
「マスター、お目覚めですか?」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「ナナリー!」
僕は慌てて飛び起きると、ナナリーが無事な事を確認する。
「ナナリー!どこも異常はない?」
「マスター!私の心配より、マスターはどうですか?痛いところはありませんか?」
「僕は大丈夫だよ!ナナリーは?」
「私も大丈夫です。」
とりえず、2人とも無事で良かった・・・。
周りを見渡してみると、広大な草原と森、それに川が見えた。
「しかし、ここはどこなんだろうか?日本ではないよね?そこの花とか見たことないから、海外とかかな〜?」
「マスター、残念ですがここは異世界と思われます。」
「へ?」
「実験のログを確認しましたが、装置の暴走により、xyzの空間軸に時間軸t、そして世界軸wの異なる場所に転送されてしまったようです。」
「・・・フフフ」
もう研究所へ戻れないかもしれない恐れより、おそらく人類で初めて世界を超えたことへの嬉しさが勝り、笑みがこぼれる。
「ナナリー!すごいよ!すごいよ!偶然とはいえ、世界を超えるなんて!早速研究の続きをしよう!」
・・・そこで、僕は気付いた。ここには研究設備がないことに・・・。
がっくり・・・。
「・・・」
あからさまに落ち込んだ僕にナナリーが声をかける。
「マスター!研究設備はこちらで造れば問題ありません!ナナリーも協力するので元気を出してください。」
「そ、そうだよね!こっちで設備を造れば問題ないよね!」
「そうです!マスター!マスターの頭脳があればすぐですよ!」
「えへへ〜、そうかな〜」
ナナリーに褒められれば、嬉しくないはずがない。
僕の落ち込んでいた気分は、一気に回復した。
「とりあえずは、この世界の情報を集めることから始めようか!」
「先程、上空から周囲を確認してみましたが、北西に約10km行ったところに街がありました。時間にして、2時間から3時間くらいでしょうか。取り敢えず、そこに向かってみてはいかがでしょうか?」
「うん!じゃあ、その街に行こうか!ナナリー!」
「はい、マスター!道案内はお任せください!」
・・・上空から周囲を確認したって、どうやったんだろう?
まぁ、細かいことはいいか〜!
そして僕達は街に向かって歩き出した。