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第三回 姉の家にて・その二

   

 ここで、姉――響谷ひびきだにあい――の容姿も、少し具体的に記しておこう。

 少女漫画に出てくる、主人公の友人ポジションで見たような感じ……と言いたいところだが、俺と皆さんの思い浮かべる漫画も違うだろうから、これでは伝わらないに違いない。


 年上の女性に対して使うには、少しばかり失礼な言葉かもしれないが……。姉は「美しい」というより、「可愛い」という言葉が似合う女性だ。

 まず髪は、どちらかと言えば長め、という程度。鬱陶しいのか、おしゃれなのか知らないが、左右で軽く束ねている。今日のような、病床にあってさえも。

 顔立ちは少し丸っこくて、くりっとした瞳が特徴的なので、童顔と言っていいだろう。童顔に相応しく背丈も小柄なのだが、胸だけは似つかわしくなく、むしろ巨乳の部類に入る。俺の元の時代――二十世紀末――なら、『ロリ巨乳』と呼ばれているに違いない。


 もちろん、この1985年の時代にも、すでに『ロリ』という言葉はあるだろう。でも今だと『ロリ』という言葉は『ロリコン』の略だと思って、ネガティブなニュアンスで捉えている人が多いよな? 『ロリコン』という言葉のマイナスイメージは、今から数年後に、もっと酷くなるんだが……。その最悪の時代を経て1999年では、本来の「『ロリ』は幼女や少女を示す言葉の略」という理解も、今よりずっと広まっていた。だから、女性の愛称に『ロリ』という単語を含めるのも、俺の元の時代なら――場合によっては――許されたかもしれないが、この時代なら絶対にダメだろう。

 そうそう、この時代における『ロリコン』に対する扱いといえば。

 転生前の話だが、俺は今でも覚えているぞ。ちょうど1985年頃、俺がロボットものとして楽しんでいたアニメを、「それはロリコン御用達アニメだ! あんなの見てるなら、お前もロリコンだ!」と言って馬鹿にしてきた友人を。あの時の悔しい気持ちを。ただ、ヒロイン相当が幼女型アンドロイドというだけでロリコンアニメ扱い……。

 いや、今にして思えば、あのアニメなら1999年でも同じ扱いだったかもしれない。

 ちなみに。

 そのうち大学生でもアニメを見るような時代が来ると言っても、1985年の皆さんには、信じられないかもしれないが……。

 子供の時に見たテレビ番組の影響、つまり子供の頃に形成された嗜好は、大人になっても続く。アニメを見て育った世代が増えてくると、そういう時代も来るものなのさ。

 転生前の俺の父親などは、いわゆるトレンディドラマやハリウッド映画すら「あれは大人でも一部の若者だけが見るもの。あんなものが面白いなんて、理解できない」と言って、西部劇の再放送ばかり――彼にとっての昔懐かしい番組ばかり――見ていたくらいだからね。


 話を戻そう。

 とりあえず風邪薬を飲ませた俺は、続いて姉に尋ねた。

「姉さん、ちゃんと栄養のあるもの食べてますか?」

「何言ってるんだい。こんな状態で、作ったり買いに行ったり出来ると思うかい?」

「はあ……」

 俺はため息をついて、キッチンに向かう。

 冷蔵庫を開けると、それなりに食材は残っている。いつ炊いたものかわからないが、タッパーに小分けされた冷やご飯も入っていた。

 これならば……。

「では、姉さん。俺が作るんで、ちゃんと食べてくださいね」

「お前が?」

 驚いたような姉の言葉を背に、俺は食事を用意し始めた。

   

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