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ころしや探偵の事件簿「記録に残されたアリバイ」――転生先は探偵助手――  作者: 烏川 ハル


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第二十八回 警部は語る・その十八

   

「犯人は、仕事関係の書類は全て持ち帰っていたが、秋座あきざ吾郎ごろうの私物に関してはノータッチだった。私的な書類は現場に残したままだったが、これも処分するべきだったのだ」

 無表情な上司にしては珍しく、少し仰々しい言い方だった。そして彼は引き出しから、一冊のファイルを取り出す。

 ルーズリーフ用バインダーだった。全体は青色で、リングは金属製。一般的なサイズ――確かA4と言うんだったかな――よりも一回り小型。中には、かなりの枚数がファイルされているようだった。

「机と机との間、完全に死角になるところに、挟まっていたそうだ。隠していたわけではなく、偶然そこに落ちていたと思われるが、そのために犯人は見落としたのかもしれん」

 おいおい。『見落とした』のであれば『私物に関してはノータッチ』とは少しニュアンスが違うが……。まあ、いいか。

「どうやら、今月分だけ事務所に置いてあったようだ。先月以前の分は、全て自宅で見つかったからね」

 確かに、開いてみると、全て今月の日付ばかり。秋座吾郎の日記のようだった。

 それぞれ一枚の用紙には一日分しか書かれておらず、たった三行で終わる、紙の無駄としか思えないページもあった。『日記』ではあったが、毎日続けられているわけでもなく、かなり飛び飛びになっていた。私的な日記でありながら、どうやら仕事があった日だけ記載していたらしい。

 ただし、仕事の詳細は読んでもわからないようになっていた。何をしたのか、秋座吾郎の行動そのものはある程度書かれているが、依頼者の個人名は皆無で、どれも『客』とだけ。これでは、どの『客』とどの『客』が同一の依頼人なのか、それすら判別できない。

 勝手な推測だが、正式な仕事の書類と区別するために、あくまでも私的な記録ということで、曖昧な書き方をしたのだろうね。

 そうそう、正式な仕事の書類ではないから、わざわざワープロなどは使わず、全て手書きだったよ。見る限り、お世辞にも達筆とは言えないレベルだったがね。

「どうだい、君の担当事件の役に立つかね?」

 上司がわざとらしい質問をしてきた。一番最初に「時間が起きたのは先週の木曜日と金曜日だったな?」と言った時点で、全て想定済みだろうに。

「はい、もちろんです」

 そう。

 この日記は、役に立つなんてものではなかった。

 二十二日のページはなかったが『二十三日』と記されたページはあり、次のように書かれていたのだから。


『夕方、客に指定された通り、待ち合わせの場所へ。客と入れ替わった後、打ち合わせていた通りに時間を過ごした。いつもと同じく、簡単な仕事だった』

   

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