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ころしや探偵の事件簿「記録に残されたアリバイ」――転生先は探偵助手――  作者: 烏川 ハル


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第二十五回 警部は語る・その十五

   

 おさむただしの共犯説。

 これを考えたのだろう、響谷ひびきだに君。

 ほら、やっぱりそうだ。その通りです、と顔に書いてある。


 まあ、事件が二つあって、容疑者が二人いて、それぞれ片方ずつアリバイがあるからなあ。いわば『割れ鍋に綴じ蓋』で、二人が共犯で一人ずつ殺したならば、ぴったりなんだが……。

 実はこの二人。兄弟仲が、かなり悪かったようなのだ。互いの妻同士は仲良しなのにねえ。まあ、だからこそ香也子かやこ理恵りえも、実際に顔を合わせて話すのではなく、いつも電話で済ませていたのかもしれないが……。

 二人の兄弟仲を踏まえると、修や正が父親の山田原やまだわら安壱やすいちと仲悪かったのも、安壱が頑固者だったというより、二人の人格の方に問題があったと思われるな。

 何にせよ、とても二人で示し合わせて犯罪を、という間柄ではなかったのだ。遺産のために親族を殺そうという大仕事をするなら、互いに強い信頼関係がないと駄目だろうからな。

 確かに推理小説などでは「共犯者同士が仲悪いと装って周囲を欺く」なんてトリックもあるにはあるが……。あれは所詮、物語おはなしだよ。だいたい、この二人。仲が悪いのは、昨日や今日の話じゃない。借金返済という動機を考えても、そんな昔から示し合わせていたとは考えられないだよ。

 というわけで、私も一度は考えたものの、共犯説はボツになった。


 これくらいの段階だったかな、私が上司の部屋に呼ばれたのは。

 あの部屋に呼ばれるのは、なぜか、いつも決まって夕方だ。これが嫌でねえ。西側の壁に大きな窓があるから、西日が入り込んで眩しくてたまらない。しかも上司の席は、窓に背を向けた位置にあるもんだから、自分だけは、この眩しさからのがれられるって寸法だ。

「失礼します」

 私がドアを開けると、いつものように上司は、西日を背にして座り、机の上には書類が散乱していた。

「ああ、君か」

 呼んでおいて、この言葉だ。上司は書類から顔を上げたが、いつも通り無表情。

我孫瓦あびがわら警部。君が担当している、例の老兄弟絞殺の件だが……」

 上司は椅子に深く座り直して、

「事件が起きたのは、確か先週の木曜日と金曜日だったな?」

「そうです」

「ふむ。では聞くが、秋座あきざ吾郎ごろうという人物に心当たりは?」

「ありません」

 まあ、この事件の話で私は呼ばれたようだから、その男は、事件関係者なのだろう。だが、少なくとも、私や部下の捜査した範囲内では出てきていないからなあ。

「ふむ。君は、もっと視野を広げるべきだな。自分の担当事件だけでなく、同僚の担当にも、少しは関心を持っておいた方がいい」

「はい、わかりました」

 私の返事は薄っぺらく聞こえたらしい。無表情の上司が、一瞬だけ顔をしかめたよ。それから彼は話を続けた。

   

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