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ころしや探偵の事件簿「記録に残されたアリバイ」――転生先は探偵助手――  作者: 烏川 ハル


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第十六回 居酒屋にて・その四

   

「……なんて芸当は、時間的に不可能と判断できた」

 ここで、我孫瓦あびがわら警部は、再び話を中断した。

 また一休み、ということだろう。

 先ほどと同じように、警部は、ビールとつまみを口にする。

 その間に俺は、今聞いた話を、少し頭の中で反芻してみた。


 山田原やまだわらおさむという男。

 二十二日の事件――山田原やまだわら豪次ごうじ殺害――は不可能であるが、二十三日の方――山田原やまだわら安壱やすいち殺し――は可能であるという。

 そして、自ら動機について語った。商売が上手くいっておらず、金が必要だった、と。

 彼は、注文を受けて客の家まで配達するサービスをおこなっている、とも言っていた。

 俺は、この『サービス』について、少し考えてしまう。


 客の注文を受けて……。

 この『注文』というのは、おそらく、主に電話だろう。場合によっては、手紙などの郵便で依頼を送ってくる客もいるかもしれない。

 電話で注文するのは、手軽で簡単だ。電話なら、思い立ったその場でその瞬間に――相手が電話を受けさえすれば――すぐに注文できる。ただし、口頭で伝えられる注文だ。後日書面で確認するとしても、最初の段階で何らかの行き違いが起こる可能性もあるし、商売の上ではトラブルになりかねない。

 その点、手紙などで、最初から書面にしてしまえば安心だ。しかし、速達で出したところで、なかなか当日には届かない。電話のように「すぐに」とはいかない。

 まあ、どちらも一長一短だ。電話で書類を送れるファックスという機械も、あるにはあるが、1985年の現代では、まだまだ一般家庭に広く普及しているとは言えないだろう。たとえ店側が用意していても 注文する客の方が持っていなければ、利用できないのだから。

 そう、あくまでも『1985年の現代では』だ。

 これが、確かあと五年か十年だったと思うが、それくらいしたら、ファックスどころか『電子メール』というものが開発され、大勢が使うようになる。

 こう書くと、1985年を生きる皆さんは「電子メール? それは一体、何物ナニモノだ?」と思われるかもしれない。簡単に言うなら、文字通り『電子の郵便メール』だ。ネット接続したパソコン同士でやりとりされるものだから、これも以前に話したネットの一種だと思ってもらえればいい。いや、厳密には違うんだろうが、俺の知識では、この程度しか説明できない。まあ、長生きせずとも普通に生きてりゃ自分の目で見られるようになるから、興味があったら、その時に色々調べてくれ。

 そう。あと数年、いや十数年くらいかな。それくらいで、世界は劇的に変わるのさ。

 そうなると、いずれは商売の注文なんかも、ネットやメールを使う方が一般的な時代となる。その時、そうした最先端のテクノロジーに乗り遅れる小さな個人商店などは――中には頭の固い頑固親父が経営する古臭い店などもあるだろうから――、ますます経営不振に陥ることとなるだろう。

 この山田原修の店なども、どうなることやら。


 ……などと俺が考えていたら、また少し飲み食いに満足したとみえて、警部が話を再開した。

   

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