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ころしや探偵の事件簿「記録に残されたアリバイ」――転生先は探偵助手――  作者: 烏川 ハル


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第十回 警部は語る・その三

   

 電話で連絡がつかないのでは、直接出向くしかない。

 私たち捜査チームは、山田原やまだわら安壱やすいち――おさむただしの父、つまり山田原やまだわら豪次ごうじの兄――の家へと向かった。

 修と正から聞いた話では、山田原安壱は大学教授を定年で退官した学者で、今は悠々自適の余生を過ごしている。年齢は七十一歳。すでに妻はなく、親族は弟の豪次と、息子二人――修と正――のみ。

 豪次は若い頃に家を飛び出した身で、修と正もそれぞれ自分の家庭を築いているため、山田原安壱は現在、昔からの屋敷に一人で暮らしている状況だった。


 うん、先に言ってしまったが。

 実際、行ってみると『家』というより『屋敷』といったおもむきのある住居だったのだよ。豪次のボロアパートとは、なんとも対照的だったねえ。

 敷地面積云々よりも、まず雰囲気が『お屋敷』といった感じを醸し出していたねえ。ブロック塀のすぐ内側には大木がびっしりと立ち並び、それだけで自然の壁を形成していたから、もうブロック塀など要らんだろ、と言いたくなるくらいだった。庭には緑が溢れていたし、小さな池まであったぞ。


「豪邸にしては不用心ですね」

 部下の捜査員の一人がそんな言葉を口にしたのは、門が開いたままだったからだろう。何度インターホンを鳴らしても応答はなく、さらに不用心なことに、家屋の玄関扉も施錠されていなかった。

「これは、おそらく……」

 この時点で、部下の中には事態を察する者もいた。事前の思い込みは偏見にも通じ得るが、まあ、最悪を想定しておくのも悪くはない。

 私たちが入っていくと……。

 玄関からすぐのところに、洋室があった。テーブルや椅子は豪華だが、あまり使い込まれた様子ではない。調度品の印象が、実用的というより、人に見せるためのお飾りといった感じで、おそらく来客をもてなすための部屋だったのだろう。そして、あまり使われないくらい、来客も少なかったのだろう。


 そんな部屋の中央に……。

 一人の老人が倒れていたのだ。

 山田原豪次と似た顔立ちの男だったので、私たちの誰もが「これが山田原安壱だ」と思った。後日判明するが、私たちの判断は間違っていなかった。

 そう、それは山田原安壱だった。

 彼は、弟である山田原豪次と同様に、仰向けに倒れていた。だらしなく開いた口も、大きく見開いた目も、弟の場合と同じだった。首に残った絞殺のあとまで、そっくり同じだった。

   

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