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ころしや探偵の事件簿「記録に残されたアリバイ」――転生先は探偵助手――  作者: 烏川 ハル


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第九回 警部は語る・その二

   

 狭い部屋だったので、入り口からでも十分、見てとれた。室内に足を踏み入れる必要は全くなかった。

 山田原やまだわら豪次ごうじは仰向けで、部屋の中央に倒れていた。目を大きく見開き、口をだらしなく開いた状態で。

 首には素手で強く絞められた痕跡が残っており、近づくまでもなく、死んでいるのは一目瞭然だった。まあ厳密には『素手』ではなかったわけだが、森川もりかわ涼子りょうこの目には、そう映ったのだそうだ。まあ彼女は、部屋の入り口から見ていたわけだしな。

 森川涼子は、しばらく言葉もなく立ちすくんだ後、その場にぺたりと座り込んで、悲鳴を上げる。それを聞きつけて、近所の住民が集まってくる。その中の誰かが警察に通報し……。

 殺人事件ということで、私の捜査チームの出番となったわけだ。


 現場に駆けつけた私は、鑑識が仕事をしている傍ら、邪魔にならない場所で、森川涼子から話を聞いた。要するに、今ここで述べてきたような話だ。

 彼女は、山田原豪次の家族関係に関しては「奥さんも子供もいない」としか知らなかったが、部屋に残されていた被害者の手帳には、同じ山田原やまだわら姓の連絡先もいくつか書かれていた。これが家族か親戚だろうということで、私たちは、そちらに連絡をとった。


 山田原やまだわらおさむは、被害者の甥にあたる人物で、警察からの電話に驚きつつ、

「叔父は父と親しかったはずです。叔父については、父に聞くのがよろしいでしょう。私から話すことは、特にありません」

 親族が死んだ悲しみではなく、面倒事がやってきたという想いが、言葉に滲み出ていた。それでも、こちらの質問には逐一答えてくれた。実は、この時点では、彼の父――つまり山田原豪次の兄――とは電話が繋がらず、最後にそれを告げると、

「父と連絡がとれない? それは変ですね。時間的には在宅のはずで、まだ眠るには早いし……」

 心配そうな声色こわいろで、私は「初めて人間的な感情を示したな」と思ったくらいだった。


 山田原やまだわらただしは、同じく被害者の甥で、修の弟。正は、兄の修とは対照的で、

「えっ? 警察? えっ、叔父が? 殺されたですって?」

 慌てふためくだけで、話をしていても要領を得ない。最後まで落ち着かない口調の彼と、頑張って問答を続けたが、特に新情報は得られず。ただし正は、彼の父親に連絡できないという状況に関しては、兄の修と同じように心配して、動揺していた。


 ……おい、響谷ひびきだに君。

 言っておくが、今の「ただしただしは」は偶然だぞ。ダジャレでも何でもないからな!

   

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