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ラノリトン王国 リーリカ姫のお誕生日~ナセリア13歳 3

 その夜、夕食の際にも、僕は遠慮したのだけれど、リーリカ姫様の強い要望によって同じ席に着くことになってしまった。

 リーリカ姫様とお会いして、お話をさせていただくのも随分と久しぶりだったことから、会話は面白いように弾んだ。

 リーリカ姫様も、オズワルド様も、特に位を継がれてかはお忙しく、お城から出られたり、他国はおろか、ラノリトン王国内ですらほとんど出歩かれることはないということで、リーベルフィアや、僕の出かけた場所のことを聞きたがっていらした。

 僕とではなくても、姫様方や若様方とはお会いしてお聞きになっていらっしゃることだろうに、僕たちがリーベルフィアに戻ってからのことを、あれもこれもとお尋ねになられたし、逆に、リーリカ姫様がラノリトン王国でなさっていた事、最近読まれた書籍の事、ご自身でも魔法についてのお勉強を、僕の、僕達の編纂した魔導書などから魔法についての勉強を始められたのだということも、とても楽しそうにお話してくださった。

 リーリカ姫様は魔法のことについて、より詳しいお話を望まれていたし、おそらく、魔導書に載っていることであれば、僕はこちらのお城にいらっしゃるどなたよりも詳しく話を出来ると思っていたので、中々お会いできないだろうということも含めて、リーリカ姫様の望まれるまま、尋ねられたことに対しては全てお答えしていたので、食事の時間の大半はリーリカ姫様との会話に占められていた。

 夕食が終わってからも、お風呂をいただいた後、滞在の間借りさせていただけた部屋で持ってきた書物を開いて勉強していると、オズワルド様とご一緒に就寝具姿のリーリカ姫様とシルフィーナ様が尋ねていらした。


「こんばんわ。お邪魔だったでしょうか」


 机の上に開かれている書物を僕の肩越しに見られたのだろうか、真っ白なサテン系のネグリジェ姿のリーリカ姫様は控え目な口調でおっしゃられた。


「いえ。丁度一区切りついたところでしたので」


 とくに区切りが良かったとか、そんなことでもなかったのだけれど、リーリカ姫様とオズワルド様、それからシルフィーナ様が尋ねてきてくださったのだ。自分の勉強などいくらでも後回しに出来る。


「本当ですか? それなら良かったです」


 疑われるように黒い瞳を細められて、可愛らしく頬を膨らませられたリーリカ姫様は、すぐに嬉しそうに頬をわずかに緩められた。

 あらためてシルフィーナ様にご挨拶をさせていただいて、リーリカ姫様には、これからナセリア様達のところで一緒に遊ぶのだと聞かされて、僕も一緒にどうかとのお誘いを受けた。

 時間も遅いし、ナセリア様は成長のことを気にしていらしたので参加なさらないのではないかとも思ったけれど、皆様、先にお声をかけてすでに集まっていらっしゃるという事だったので、ご迷惑でなければと、僕もご一緒させていただくことにした。

 リーベルフィアで、お城で魔法顧問を務めさせていただいていた時には、こんな風に暇な時間などほとんどなかったし、若様、姫様方も、それから僕も勉強やお稽古事、訓練に警備や、その他にも色々とあって、あまり集まって遊ぶなどということはなかった気がする。もちろん、家族で集まられないということはなかったはずなので、僕が知らなかっただけなのだとは思うけれど。

 お祭りのときなんかは別だったけれど、特にエイリオス様は王様になられるための勉強も含めて、姫様方よりも忙しくしていらしたので(かくいう僕も暇な時間があれば図書室でミラさん達に勉強を教えていただいていたのだけれど)皆で集まるところは、僕のところに限って言えば、魔法の授業くらいしかほとんどなかった気がする。

 もちろん、ナセリア様をはじめ、個々人ではよく訪ねていらしたけれど。


「では参りましょう」


 自然な笑顔でリーリカ姫様に手を握られて、先を歩かれるオズワルド様とそのお隣の微笑まれているシルフィーナ様について、やはり高そうな瓶や絵画の飾られている廊下を歩く。

 リーリカ姫様は楽しそうに、繋がれた手を強められたり、軽くされたりなさりながら、夜空を切り取られたかのような綺麗な黒髪を揺らされて、笑顔を浮かべられながら歩かれるので、なんだか僕も落ち着かない気分になっていた。


「お待たせしました」


 女性の寝室に入ることに、一瞬躊躇われたのだけれど、リーリカ姫様に手を引かれたままだったので、立ち止まるわけにもゆかず、失礼致しますと扉をくぐった。

 姫様、若様方は、揃ってとても大きなベッドの上に座っていらした。


「こんばんわ、ユースティア。お母様がいらっしゃらないから夜更かしするのは楽しみ。ユースティアも報告したりはしないでしょう?」


 フィリエ様は、日中は結んでいらっしゃる金の髪を真っ直ぐに下ろされていて、赤とピンクのフリルのついた、肩紐の、薄い寝間着を着ていらした。

 季節を考えると少し、いや結構寒いのではないだろうかとも思えたけれど、思いに反して、室内は結構温かく、おそらくは暖をとる魔法を使われているのだろうと思われた。

 そのフィリエ様の隣にはミスティカ様が、こちらは見るからに暖かそうな、もこもことした丸い熊のような耳のついたフードをかぶって、着ぐるみのような寝間着を着込んでいらした。

 ナセリア様は首元や袖に清楚なレースをあしらわれた薄く光沢のある生地の寝間着を着ていらして、わずかに身体のラインが透けていらした。


「そんなにじろじろとみないでください」


 頬をほんのりと赤く染められて、両手で身体を掻き抱くように、潤んだ瞳で上目遣いに睨まれて、危うく僕は倒れてしまいそうになった。

 薄い肩からは月の光のような銀の髪がサラサラとこぼれて、膝の辺りまで流れ落ちている。

 首筋から鎖骨までのラインも綺麗で、開かれた胸元も真っ白で、膨らみは、ナセリア様の名誉のために敢えて考えないようにはしたけれど、そのことが逆に余った布の間から中を覗けそうになってしまっていて危険だった。

 裾の方からも真っ白な素足が覗いていて、触れたら折れてしまうのではないかと思えるほどに繊細だった。もちろんそんなことはしないし、しようとするような輩が居れば即座に排除するけれど。

 見るなと言われて目を逸らしても、脳裏にこびりついてしまった光景が、そちらをちらちらと意識させる。

 というよりも、そこまで気になさるのだったら、そのような格好をなさらなければ良いのに。

 まあ、寝具なんて、それこそ事情がない限り他人に見せることを想定してなどいないのだろうけれど。


「ほら、ユースティアもいつまでもお姉様に見とれてないでこっちに来て座りなさいよ」


 フィリエ様がご自身の隣を叩かれて、他人のベッドの上に勝手にあがるのもどうかと思ったのだけれど、リーリカ姫様もお気になさらずとおっしゃられるので、フィリエ様とナセリア様の間に腰を下ろさせていただいた。

 反動で身体が揺れて、ナセリア様の白い肩と寝間着の丁度境界の辺りが僕の腕と触れ合う。

 

「も、申し訳ありません」


「い、いえ、気にしないでください」


 自分で自分を排除してしまおうかと思ったけれど、もちろんそんなことも出来ず、ベッドと身体が揺れるたびにそちらを意識してしまっていた。

 

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