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ナセリア~ユースティアと出会って 3

 初めて他の国へもお出かけに行くことが出来た。

 他の国の方とお会いするときは、いつもリーベルフィアまでいらしていただいた方とだけだったので、興味を惹かれていた。

 国内ですら、お城から出かけたことなんて数える程度しかなかった私にとって、リーベルフィアを出るというのは初めての経験だったし、たとえ呼ばれているのがユースティアだったのだとしても、楽しみだった。

 もちろん、ただ招待されただけではないのだろうとは思っていた。

 お父様とお母様が治めていらっしゃるリーベルフィアは、大陸、少なくとも近隣の国と比べると、大国であると言い切ることが出来るだろう。他国の最新情報も図書館に保管されていたりもするのだけれど、他にギルドからあげられてくる情報の中で、他国の事に関するものをとりあげて考えてみても、それは事実であるように考えられる。

 つまり、それだけリーベルフィアは巨大な、力のある国であって、決して侮るとか、傲慢になるつもりはないけれど、本来ならばこちらへ出向かれるというのが普通であるようにも思える。

 それだけに、事が重大で、一刻も早い解決が望まれているということは推測出来ていた。

 初めてのお出かけは新鮮だった。

 私は別に宿に泊まらなくても、夜空の星を見上げながらユースティアと一緒に横になることができたなら、それは素敵で幸せだったとは思うけれど、もちろんそんなことにはならなかった。

 安全や健康の面から考えても、いくら魔法があるとはいえ、余計な仕事を増やしてしまうのは本意ではない。

 私たちが眠っている間にも、ユースティアや騎士団の皆さんは、安全と安心を守ってくださるために働かれることになるのだし、その負担を考えると、とても言い出すことは出来ない。

 そもそも、ラノリトン王国への招待は、ユースティアを個人的に指名しているのであって、私たちが居なければ、ユースティアならひと飛びに行って来られるはずだった。

 他国での見聞を広げるのが大切な事だというのは分かっているし、こういった機会でもないと、お父様がまだ未熟な私たちを手元から離したがらないということは知っていた。もっとも、お父様の場合、理由はそれだけではないのだろうけれど。

 お父様は基本的に私たちにとっては優しくて甘い父親だ。けれど、国王様としてのお仕事をなさっているときには、非情とも思える命令を、冷然と出されることもあるというのを知っている。

 けれど、お父様は私たちにもユースティアについて行くようにとおっしゃってくださった。

 私が自分でついてゆきますと言っても、お父様も、お母様も、ユースティアも反対したりはしなかっただろう。

 それは私がお父様の娘で、リーベルフィアの姫であるからだ。私が力になれるという事ではない。

 もちろん、全く力になれないということはないだろう。

 けれど、それ以上に余計な気を、私達個人の気持ちとは別に、回させてしまうことになるのは当然の事でもあった。

 ユースティアは、私とだってそれほど年齢は変わらないはずなのに、頼りないという感じはしない。

 それは魔法のこともあるのだけれど、私とは経験が違うからだろう。

 心配してくれているのはありがたいことだけれど、私もユースティアと同じように認めて貰えるようになりたかった。

 1人で行かせても大丈夫だと。

 ユースティアの隣に居ても、心配や迷惑をかけることなく、任せて貰えると。

 そうすればユースティアの隣に居られると思っていた。

 もちろん、リーリカ姫の事を任せて貰えたのは嬉しかった。半ば強引なものだったとしても、少しは認めて貰えたのだと。

 その晩から翌日にかけてのうちに、ユースティア達は宣言通りにリーリカ姫の容態に関して解決してしまった。

 ユースティア自身はそんなことはないと思っているようだけれど、その行動によって救われた人は多いはずだ。

 魔導書の件にしてもそうだし、リーリカ姫に関してもそうだ。

 その結果、自身にどのような感情が向けられるのか、考えが甘いようだ。

 他人からの好意には気づいているはずなのに、過去のこともあってなのか、それをいまいち信じることが出来ないというのは、悲しい事であるように思えていた。

 だからといって、リーリカ姫にキスされたのを、見過ごすことは出来ないけれど。

 ラノリトン王国で開かれているパーティーなのだし、今回の件の中心であるリーリカ姫と、解決した本人であるユースティアが一緒に居るのは分かるし、2人が何をしていようとも、私に止める権利はないということくらいは分かっている。

 けれどやっぱり寂しくなって、悲しくて、不安になって、2人の事だと分かってはいても、つい、隠れるようについて行ってしまった。

 そうしたら、ユースティアは好きな人はいないと言うし、油断して隙は作るし、何でいつものように察することが出来なかったのかと、女性に対して甘いくせに、私の想っていることにはちっとも気付いてくれないし。

 その上、リーリカ姫にキスをされても平然としているし。

 動揺していたら動揺していたで、きっと面白くないと思ってしまったのだろうけれど、全く動揺していないように見えても、ユースティアにとっては女性とキスをするというのは特別な事ではないのだろうかと思えてしまって、それなら私にも、と思ったのだけれど、いざ言おうとすると、ただその一言が口に出せずに、いつも冷静でいなくてはと思っている頭も、心臓も、普段とは比べ物にならない速さで動いていて、とてもユースティアの顔をまともに見ることさえも出来そうになかった。


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