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王妃様のお誕生日 2

 催される王妃様のお誕生日パーティーに出席されるためには、それ以外に条件はないのだけれど、ただ1つだけ、新年パーティーのときとは違い、下はレガール様と同じ5歳くらいから、上は学院を卒業される大体の目安くらいの15歳くらいまでのお子様をお連れの方、という一文がギルドの仲介を経て配られたチラシやポスターに明記されていた。

 今回のパーティーの目的を考えれば必要な1文であり、それがなければ、それこそ無制限に人が集まってしまう。それではいくらなんでもお城に収まりきるはずもない。もっとも、それでどれ程効果が期待できるのかは怪しいけれど。

 正規の条件ではないけれど、学院に通っていらっしゃるような方は、おそらくだけれど、いらっしゃることは出来ないだろう。すでに学院は授業が開始されているという事だったし、そちらを疎かになさるとは思えない。

 それ以外には、基本的に条件はなく、服装その他に関してもまったく自由にお越しくださいと記されていた。もちろん、家柄に関しても、だ。

 基本的には、というのは、入り口のところにいらっしゃる門衛さんに許可をいただく必要があるためだ。それにしても難しいものではなく、これこれこういうものです、と身元を証明して、身体検査を後に控えるメイドの皆さんがおこなうというだけのものだ。ドレスコードがあったり、王妃様へ贈り物などを持っていなければならないということもない。

 もちろん、あっても一向に構わないという事だったけれど、そのことによる非難の視線や声、そういったものを向けるような方がいれば、即座に対処するようにと、国王様から十分に言い含められている。

 騎士の皆さんではなく、メイドの皆さんに身体検査の役割が振られているのは、まあ、いらっしゃる方々には分かっていただけることと思う。

 簡単とは言ったけれど、王妃様や姫様、若様とお近づきになりたいがために、身分を偽るような方は即弾かれる。既に、年齢、家族関係を偽っていらっしゃった方は数組発見されているという報告があげられている。

 メイドの皆さんは交代制で、料理を運んだり、その他の仕事も受け持っていらっしゃる。

 それから、僕に対しても王妃様は、仕える立場としてではなく、1人の子供として参加して欲しいとおっしゃられた。


「そうおっしゃられましても、私はここにお仕えさせていただいている身ですから‥‥‥」


「でも、ユースティアさんだって子供たちにお友達を作ることには賛成してくださったでしょう」


「しかし、私が参加するのは違う気がするのですが」


「今日のところは我々に城の守りはお任せください」


 お城の警備をするという仕事もありますし、と断ろうとしたところ、にこやかなお顔を浮かべられた国王様の隣に、いつの間にやら魔法師団の方とリュアレス団長が立っていらして、そのように言われてしまった。

 

「で、ですが、私には、魔法の研究をするという仕事が」


「本日どうしてもなさらなくてはならない仕事はないはずです」


 同じ師団に所属している方を誤魔化すことは出来ない。


「お、お料理とか、お掃除とか、勉強などもやらなくてはならないのですが」


「お料理の支度は全てこちらで調えました」


「掃除はすでに我々で向かっております」


「勉強なら、後で私が見てあげるわよ」


 こちらにいらしての良いのか、料理長様と、僕に向かって笑顔を向けていらっしゃるフィスさんと、珍しく図書館以外に出てきていらっしゃるミラさんが、口々におっしゃられる。


「貴殿が向かわれないうちは子供たちも外に出ることは出来ないし、そうこうしているうちに––丁度外を見られると良い」


 国王様に促されて窓の外へ目を向けると、丁度、普段は厳重な警備の敷かれている、大きな門が開かれるところだった。普段、買い物などに出掛ける際には、正面の大きな門の横についている小さな門から出入りをしているので、この門が開かれることはあまりない。小さな、とは言っても、馬車が通るくらいの大きさはあるわけだけれど。

 門から入って来るのは、何台もの綺麗な馬車で、これは王妃様が準備なさったものだ。王妃様が準備されたとはいっても、実際に頼んできたのは僕なのだけれど。

 王妃様が仰られることには、こちらから頼んできていただくのですから、せめてそれ相応の準備だけはさせて貰いたいです、とのことだった。

 お城にある馬車だけでは足りないだろうということで、元々、お城の馬車は使われず、ギルドへ行って希望者を連れてきてくださるようにお頼みしている。

 降りていらしたのは、綺麗な格好をした母親に連れられた、やはり綺麗な格好をした子供たちで、やはり正確にはこちらの真意を伝えることは難しかったのだなあと思わせられた。

 いくらこちらから出したお知らせの上では『お友達』を作るという目的のお茶会なのだと説明しても、裏の意図があるのだと勘違いされたようで、どうも、先日の新年パーティーのときと同じような雰囲気を感じられる。


「‥‥‥分かりました。私が参加して、今回のお誕生日会の意図をそれとなく説明させていただき、その上で、仲介をさせていただきます」


「ありがとうございます、ユースティア様」


 クローディア様は純粋に喜んでくださっているみたいだったけれど、国王様が一瞬浮かべられた、してやったりというような意味深な笑みを僕は見逃さなかった。どうやら、僕が参加することは、国王様の中では確定事項だったらしい。


「いえ、感謝されることではございません。むしろ、私のような一使用人に対してこのような機会を賜ったこと、深く感謝を申し上げます」


 一応、名目上は主賓でいらっしゃるクローディア様が子供たちの元へ向かわれるのに僕もついて庭まで歩いてゆく。

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