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絵美 街コンのその後で

どきどきの展開・・かな?

街コンが終わって、絵美たち3人は駅への道を歩いていた。


路面電車に乗ることも考えたが、喫茶店の椅子にずっと座っていたので、運動がてら今日の反省をしながら歩いて帰ろうということになったのだ。


繁華街から駅へと続くこの道を歩くのは久しぶりだ。


絵美たち3人の母校である女子高がこの町にあるため、3年間通い慣れた懐かしい道でもある。

学生時代にはお金もなかったので路面電車やバスに乗ることもなかった。



そんな思い出もあって、今日の反省といいながらもコンサートホールや楽器店を目にすると、3人が所属していた吹奏楽部の話になる。


「二年の時の定期演奏会で、麻巳子が部長に言われたこと覚えてる?」

「あれはきつい一言だったね。」


「プロになった先輩に指揮者として来てもらった時は、練習時間が長くなったよね。」

「あの人は完璧主義者だから。」

「でも綾香はあの人のことヅカの男役みたいでカッコいいって言ってたじゃない。」


そんなおしゃべりをしながら三人でにぎやかに歩いていたら、後から走ってきた人に突然声をかけられた。

最初はびっくりしたけれど、よく見るとあのどこか見たことがある男の人だった。


辰野(たつの)さんだったかしら?

あの街コンの4番目の、若い人たちばかりのグループにいた。



息を切らしていたその人は、真っすぐに絵美を見ていた。


「すみません、突然。その上急にこんなことを言うのも失礼だとは思いますが、・・僕、辰野文也と言います。先程、街コンでお会いした。あの、高木絵美(たかぎえみ)さん、僕とつき合ってもらえませんか?」


その突然の告白に絵美たちは全員、固まった。


固まるよね普通。



最初に自分を取り戻したのは、仕切り屋の麻巳子だ。


「えーと辰野さん、随分突然ですね。たぶん絵美と連絡先も交換していらっしゃらなかったんじゃないかと思うんですが…。まずメール番号を交換して、その後で女性側から連絡を取らせていただいたほうがいいと思います。ほらっ絵美、携帯出して。」


麻巳子の催促で我に返った絵美は、カバンの中からのろのろとアイフォンを出した。


どうして、今頃? 

どうして、私?


頭の中は疑問文でいっぱいだったが、この街コンのために事前準備していた通称「捨てメール」の番号を相手に教えて、自分でも辰野さんの番号を記録した。



辰野さんとは「後ほど連絡をさせていただきますね。」と言ってその場は一旦別れた。


しかしそれからの話題は、さっきの辰野さんオンリーになってしまった。


「過激ねーー。ああいうアプローチは若さゆえかねぇ。あのひと、大学出て社会人二年目って言ってた人じゃない? うちの後輩と同じ年だー、と思ったからそれは覚えてたけど・・。」


麻巳子はそう言って、辰野さんの学生のような告白に感心していた。


何度も麻巳子に若いなーと言われると、本当に6つも年が下なのに何を考えているんだろうと絵美も思う。


綾香は、どうして今更交際申込をしてきたのか? というところが腑に落ちないらしい。


「なんで一緒に話してた時に切り出さなかったんだろうね。絵美ちゃんのことをチラチラ見てたから、連絡先を聞きたいのかなぁ、とは思ってたよ。でも先輩に数合わせに連れてこられた風だったから、彼女なんてまだ作るつもりもないし、…。年上だし、…って感じで躊躇したんだと思ってたよ。まさかここに来て、連絡先どころかいきなりの付き合ってください宣言だよ。別れてからこっち、彼の身に何があったんだろうねぇ。」


絵美も本当にそう思う。



「で、絵美はどうなのよ、彼。うちの後輩と同い年の割にはしっかりしてそうじゃない。」

「うん。年の割にはしっかりしてそうな人だとは思うよ、私も。でも6歳下だよ! つき合うとか全然考えてなかったから、なに話したのか覚えてない。」


そう、あのグループとは楽しく話ができたなとは思うが、結婚相手として全く意識していなかったので、これから真剣につき合う相手としてお互いを探り合うような会話は全然なかったように思う。


ここで、本当に何を思って絵美を選んだのか? という堂々巡りの疑問に立ち返ってしまう。



「まぁ、相手に聞いてみればいいじゃない。メールをしたって、必ず次に会うところまで行かなきゃいけないっていうわけじゃないんだし。」

「だねー。私も彼の心境の移り変わりが気になるから、どういうことだったのか後で教えてね。」


麻巳子も綾香も、2人とも他人事だと思って言いたい放題だ。


でも…正直私も気になる。



「そうだね。私も街コンで話してた時から、どっかで見たことがある人のような気がするって、気にはなってたんだよね。…帰ってから思い切って電話して聞いてみるよ。」


絵美が珍しくそんなことを言ったので、また2人が盛り上がった。



「えっ、そうなの? まさかの知り合い? コンビニの店員じゃない? いや車関係の会社だって言ってたね、彼ら。」


「いやいやもしかして、園児の叔父だったりして。」


今度は2人で「どんな知り合いかなのか当てよう」合戦が始まってしまった。



知り合いなのかな…それとも、誰かに似ている?


でもそんな疑問の中に、わざわざ走って来て自分に声をかけてくれたという嬉しさも徐々に湧いてきていた。


辰野…文也さんか。

…さっき絵美の方を向いた時に、真剣な目をしていた。


どんな人なんだろう。

いったい彼に何があったのか、・・・。



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