絵美 街コン
短いですが、序盤戦です。
あの結婚式から3週間後の土曜日、絵美は綾香や麻巳子と一緒に街コンに来ていた。
梅雨時の六月という月のわりには、今日は太陽も眩しくよく晴れている。
これは晴れて良かったとまず思った。
雨だと、移動する男の人たちは大変だ。
ここの街コンというのは、大通りの商店街全部を会場にしているようだ。
どこかの会議室のようなところを借りて、パーティー形式で集うのかと思っていたら、全然予想とは違っていた。
喫茶店やレストランなどが場所を提供しているらしく、各店ごとに「街コンスペース」なるものが設置されていて、何組かのグループを受け入れられるようになっている。
そのそれぞれの場所で、女三人・男三人が向かい合ってお見合いをして、制限時間のあるスピード合コンが行われるらしい。
女の人は一つの場所に座ったままで、男の人達が何件もの店を決められたルートに沿って巡っていくというシステムだ。
参加人数は150人強だそうだ。
そのため全員と顔を合すのではなく、30分おきに5グループ、計15人と今日は顔を合わせることになる。
男性の移動時間を10分ずつ取っているようなので話をできるのは正味20分間だけだ。
これだとあまり込み入った話は出来そうにない。
本当に顔を合わせての第一印象勝負といったところだろう。
今日は、この2時間半の苦行?をこなさなければならないようだ。
まずは綾香と一緒に、労を取ってくれた麻巳子にお礼を言う。
「麻巳子、ありがとねー。いろいろ手続きしてくれて助かったわ。」
「私も、混ぜてくれてありがとう。」
なにせ綾香は中学校、私は保育園と、曲がりなりにも二人とも教職についている。
そうすると、どこで生徒や保護者に出くわすかわからないという問題を、二人ともが常に抱えている。
そのため住んでいる所からは遠い市外で行われる三対三の街コンを、麻巳子に無理を言って探してもらったのだ。
その街コンを探す所から始まって、事務局への申し込みや私たちへの連絡などを、麻巳子に代表者として全部やってもらった。
本当に手間暇かけさせて、申し訳ない。
「いいって。帰りの電車賃で手を打つよ。」
麻巳子はそう言って、絵美と綾香のお礼の言葉を軽く笑い飛ばしてくれた。
こんな面倒見のいい姉御肌のところは学生の頃とちっとも変わっていない。
「それより絵美はよく思い切ったね。というか綾香がよく説得したね。」
同じ女子高の同級生は、絵美が合コン嫌いなことをよく知っている。
絵美は初めての、特に男の人と話をするのが大の苦手で、高校時代合コンに誘われてもいつも断り倒していたのだ。
「まあ、絵美ちゃんも大人になったってことよねー。」と、綾香がさりげなくフォローしてくれた。
「あっ、始まるみたいよ。」
麻巳子が目を向けた先を見てみると、10人ぐらいの男の人が喫茶店のドアを次々とくぐって来ていた。
一気に喫茶店のスペースが狭くなった感じがする。
わぁなんだかドキドキする。
おまじない、おまじない。
この人たちも昔は子供。
うちのクラスの子たちと、一緒。
絵美が自分にそんなことを言い聞かせていると、最初のグループがやって来た。
「ここ、いいですか?」
代表の人がそう確認して、目の前に三人の男性が座った。
プンと、コロンと高級な背広の匂いがする。
最初のグループは、年上の人たちのようだ。
……コロコロの園児たちとはだいぶ違う。
溜息を隠しながら、絵美はなんとか最低限の自己紹介をすることができた。
ううっ、これから話をすることができるかしら?
これをあと四回……なんとも先が長そうである。
頑張れ、絵美ちゃん。
次に、展開を期待しましょう。