第一章8 《速読》
俺とエリヴィラが少しのぼせてしまって、ふたりの頭がくらくらとまわっていたように、まともに立てられなかった。
――2分後――
その間、俺たちはその2分の間、ただ立ったまま、頭に上がった血を少しずつ下がっていた。 それでも顔は真っ赤のままでした。
「エリヴィラ、君は先に服を着ろ。 俺は後でする」
「Хорошо」
そして彼女は俺が渡した服を取り、すぐに俺の目の前で着替えを始めた。 本当に無防備な子。
俺は敢えて二回を言おう、俺はガキの裸に興味ない! でもここは素直に視線を逸らそう、これは最善の選択だ。 俺は間違っていない。
そして更に1分後(長かったと感じた)――
彼女は着換え終わったのだ、服は実にシンプルでごく普通のショート パンツと胸元に星マークがある半袖の衣装であった。
でも彼女がその服を着換えたあと、逆に眩しい~ すっごく似合っている、うん! すっごくいい。
「似合っているぞ」
「Спасибо」
笑った、カワイイ・・・そしてエリヴィラを見ている間、俺は再び疑問を持っていた。
彼女はなんであんなところで倒れたんだ? 服もただのボロイ布で被っていたし、おまけに傷だらけだし。 あと、記憶喪失、エリヴィラはまるで謎の塊だ。 分からない点、多過ぎる・・・でも、本当になにも覚えてないの?
疑問に持った俺は、再びエリヴィラに質問をした。
「エリヴィラ、本当になんにも覚えてない?」
頼む! なんでもいい、手掛かりが欲しい!
強く願った俺は、彼女はひとつのシンプルな返事をした。
「Да...」
うん? 今なんて言った? 緊張したせいで、ほぼ聞えなかった! だ? だー? ンダ? どっち?
少し聞き逃した俺は、脳味噌を絞って、彼女が言った言葉を必死に思い出していた。 そして答えを見つけた。
今は「ンダ」、言ったよな? あれは確か・・・秋田弁・・・だよね? もしかして・・・エリヴィラはこの返事を何度も繰り返して、何かを俺に伝えようとしていた? だとしたら・・・希望が見えてきたぞ!
確か、俺の部屋にあれがあったよな? すぐにそれをエリヴィラに見せよ、そうすれば、彼女にも少しでも日本語は喋るかもしれない! あと記憶の方もなにか思い出すかもしれない。
そうと決まれば、さっそく部屋へ行こう! っとその前に――
「俺は自分の部屋に戻って、エリヴィラに見せたいモノがある、お前はリビングで少し待ってて。 すぐに戻るから」
「не оставить меня в покое」
エリヴィラは急に俺の服を右手で掴んでなにかを言った。 俺はいつも通り、エリヴィラがなにが言ったのかをまったく理解できない、ごめんエリヴィラ。
でも見る限り、エリヴィラはまだひとりになるのが怖がっているみてえだ。 やれやれだぜ、どこにでも付いて行くつもりか? あと、さっきのセリフ、今思い返すと、あれもロシア語・・・だよね? 確か前にも似たような言葉が言ったみてえだ。 確か・・・あれ? よく考え見れば、俺はまだこの長いセリフを解釈していないみてえだ。
その時はちょうどエリヴィラに引き止めた、だったよな? うん・・・思い出せ、あの状況から言える言葉は――
考えている内に、相応しい言葉を見付けた(だと思う)。
そのセリフをこうする、「私をひとりにしないで」という解釈で認識しよ。 んん・・・俺はいったい何遍このセリフを言うの? “「・・・・・・」という解釈で認識しよ”。 正確な数字は覚えていないが、きっといっぱいいるだろ・・・自分でも信じられない。
ともあれ俺はエリヴィラのわがままを聞き、一緒に俺の部屋に戻った。 あるモノを探すため。
自分の部屋の扉を開いた後、まず、エリヴィラを先に入らせた、そして次は俺。 入った後、俺はエリヴィラに自分のベッドの上で座って、待ってろっと言った。 彼女は素直に俺の言うことを聞き、ベッドで待ってた。
「少し待っててね、お前に見せたいモノがある」
「Хорошо」
エリヴィラは返事をした後、俺はあるモノ探すのに集中した。 あるモノとは、この状況に突破口を開くかもしれない。 でも――
「あれー? 何処にあったけ? 確かここにいたのはず・・・」
どこにいるのかは、見当も付かない。 本棚の一番下? いや、あそこは勉強用の資料だ。 一番上? いや、上の三つの列は全てジョジョのマンガだ。 んん・・・どこにいるんだろ? 真ん中の列は?
「ええと・・・お! あったあった! ようやく見付けたんだ! これを」
俺は探していたモノは、日本語とロシア語の辞書と・・・「秋田弁を二週間でマスターせよ!」というわけの分からない本だ。
――ていうか、俺はなんでこんなモノを買ったの? まあ、昔から俺は色んなものを勢いで買って来たから・・・なんとも言えない・・・これは正しく、金の無駄使い! だ。
でも、もう買ったモノは仕方ない。 そんなことより、この辞書で少しずつエリヴィラと話しをしたい。 あとこの秋田弁の本も、以前から、エリヴィラの口から「ンダ」と返事来るから。
もし可能性があるだとしたら、掛けてみたい。 でも・・・エリヴィラはロシア人、日本語は理解できる、もしここで秋田弁を思い出し、俺と秋田弁で喋ったら・・・
そして俺はその光景を妄想した。
「エリヴィラ! もう朝だぞ? 起きろ」
まず俺は彼女を起こすというシチュエーションで始まる。
「んん・・・・・・」
エリヴィラはなかなか起きない。
「ほら、はやく起きて。 朝ご飯はもう出来ているから」
ここでエリヴィラは目を少しずつ開け、上半身を起こし、そして――
「おはえんし、あんつぁ」
エリヴィラのイメージが・・・! 恐ろしい・・・秋田弁。 どうする? エリヴィラに見せるの? この「秋田弁を二週間でマスターせよ!」・・・いや、念のため、この本を元の場所に置いていこう。
そして封印しよ・・・これはエリヴィラにとって、俺にとって天敵だ!
こうして、俺は辞書だけを持ち出し、もうひとつの本をガムテープで封印した。
「お待たせ、エリヴィラ。 はい、これ」
「Это?」
エリヴィラは疑問を持って、質問した(だと思う)。
「これは日本語とロシア語の辞書だ、君は日本語とロシア語の文字、読めるだろ? 少しでも日本語が喋るできたら、俺も気がらくだし。 もちろん、俺も一緒に勉強する」
ロシア語はたぶん半年くらい覚えられないかも・・・本当だ。
そしてエリヴィラは俺の話を聞いてながら、速読で辞書を読んでいた。
おいおい、本当に読んでいるのかい?! 俺はただ本のページを遊んでいるにしか見えねえぞ?!
俺はツッコミを終わった後、エリヴィラも本読み終わった(だと思う)。 彼女、辞書をベッドの上に置き、視線を俺に向かった。
「ええと・・・ど、どうした?」
ちょっとこわい! なにかこわいって? エリヴィラのあの速読だ! 生で見たの初めてだ、あれは本当に速読なの?
「ハ、ハチネ、ママシ、シテ・・・・・・」
にゃに? って、今のは・・・・・・日本語?! だよね? ちょっと聞きにくいが、今のは「はじめまして」だよね?
「エリヴィラ! 日本語、喋るの? あの僅かの数秒で!?」
「ハ、ハイ」
うおおおおおお!!! 凄い! これは凄い! エリヴィラはもしかしたら天才かも! よーし! ここは俺の出番だ、エリヴィラに上手に日本語を喋るの手を貸す!
「エリヴィラ、お前の日本語の音調はまだ未熟が。 ひょっとして、二日で日本語をマスターするかもしれないぞ? もちろん、俺も手伝ってやるよ!」
俺の話を聞いたら、エリヴィラは嬉しすぎて、俺に飛び込んだ。
「うおおお!! そんなに嬉しいの?」
「ハイ!」
今度はちゃんとした日本語で返事をした、それにしても、今までの「ンダ」はなんだったの? もしかして、あれもロシア語? とりあえず、エリヴィラをどいておこう・・・
「な、エリヴィラ。 ちょっとどいてくれない? 床に座ったままじゃ、日本語の勉強はできねえぞ?」
「Простите!」
エリヴィラは慌てて俺から離れた、しかもロシア語で。 まだ日本語を慣れていないから、慌ていたら、ロシア語で喋る。 まあ、普通のことさ。 あんま気にしてないし。
「大丈夫大丈夫。 そんなことり、ここに座って、日本語の基本を教えてやるよ」
「ハ、ハイ! ヨ、ヨロシク、オネガイ、シマス」
「うお? 今、「よろしくおねがいします」っと言った? 覚えるの早いなー」
「ウン!」
うん、今度はロシア語で返事をしていない、順調だ。 あ、俺も少しロシア語を勉強するか、なんか面白いかも。 エリヴィラに頼んでみよ。
「な、エリヴィラ。 俺はお前に日本語を教えてやる代わりに、俺にもロシア語を教えてくれない?」
「ウン、イイヨ」
そして俺も自分のベッドの上に座った直後、急に謎の音がした。
くぅーーーー。
なに? そのカワイイ音? どっから聞えるの? 外から? いや、窓は閉めたままだし・・・いったいどこ――
なぜか、エリヴィラは目を逸らした、顔が赤くなっていた。 まさかと思うが・・・ひょっとして――
「エリヴィラ・・・お腹すいたの?」