第一章2 《スタンド、実在する?!》
――放課後――
既に三月なのに、日がちょっとずつ沈んで行く。 クラスの連中も既に学校から出て、今日の掃除当番のやつらもとっくに教室を片付いた直後行ってしまって、そしてクラスに残った者は――俺、零香と健次、この三人だけだった。
静かに教科書を片付いてる俺たちは、ほんのわずかが部活をしている者たちの声が聞こえる。 その静かさやな教室が実に心地よかったが……健次が本を机に軽く叩きつけたおかげで、実に不愉快な気分がほんの数秒が俺は思った。
そして健次はにやりと俺に声を掛ける。
「おい、詩狼! お前もこれからバイトに行くだろ? 俺もだ、途中まで行こう!」
健次はカバンを肩の後ろに持ち上げ、こっちに近づいてきた。
「悪い! 今はちょっと用事があるので、先に行け」
ちょうど本をカバンの中に入れ、俺は健次のいつもの誘いを断った。
――そう、俺はこれから大事な用事があるのだ。
「用事って?」
――お前には絶対言えないことだ!
「個人的なことだ」
「なるほどー、その《個人的な》って?」
――えええ?! まだ聞くつもり?!
健次はしつこく質問の連発を俺に襲い掛かって、どう誤魔化すか、本当に迷っていた。
「そ、それは……」
その時、俺は無意識なんだろうか…視線を零香へ見た。 健次も俺の視線を気づき、チラッと後ろを見る……。
そこに可憐な姿の零香がいた。 夕方の赤い光が彼女の存在をより一層輝く、いつも通り、美しくに見えた。 金髪の部分の髪は赤い光と相性がいいし、そして黒髪の部分はまた夕焼けと似合う。
俺はもちろん、見惚れていた。 彼女に……零香に見惚れていた。
――やっぱあいつ、こうして静かに片付いてる姿、きれいだな……。
そんな彼女は俺の最初の幼馴染みであり、一番信頼できる人でもある。 だからこそ、今日の放課後に、ってもう放課後か!
コホンッ、改めて、今日の放課後の体育館の裏に、彼女には大事な話がある。
零香はまだ教科書を片付いているみたいだ、そして――
「へ~、用事ってあれか~~(ニヤニヤ)」
健次のやつが先からニヤケ顔が止めていない。
――笑うな! 気色悪い!
「違うって! これはお前が考えてることじゃないから!」
俺は少し焦った。
「分かった分かった、じゃ! 俺は先に行くぜー! Goodbye~」
健次はさっそく教室から飛び去った。
――怪しい……あいつ絶対内心から笑っている。 っと、そんなことより、零香は?! あ、ちょうど片付いたみてえだ。
少し焦ってた俺は、再び零香の様子を見た。 彼女はすでに片付いたのだ、そして深呼吸しながらちらりと俺の方へ見てる。
俺は鈍感じゃないから、先にこちらから声をかける。
「零香、俺は先に体育館に待っているから」
自然と彼女に今朝のこと注意した。
「わ、分かったわよ! いちいち言うな!」
しかしなぜか顔が真っ赤にして大声でしゃべった。
――なんで怒った?! 俺はなにか失礼な発言でもしたのかい? ないよね? ね?
そして俺は零香の肩に軽く叩いて、そのまま教室から出た。 目的地、体育館の裏!
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
詩狼が教室から出た後、教室の中が再び静かになった。 でも私には聞こえた、ある音が……。
(ドキドキ……ドキドキ)。
そう……私は自分の心臓の鼓動音がはっきりと聞こえている。 しかもさっきから収まらないの!
これも詩狼のせいだ! なんでこんな時に言うの? ココロの準備はまだ……! ……でもびくびく怯えたら詩狼を待たせるし……まず落ち着いて零香、教科書を片付いてる間は十分深呼吸をしたではないか?
それでも緊張感からほぐれなかった。
――仕方がない! このまま体育館へ向かうとしよっ!
私もカバンを持って、教室の中から歩き出して、ドアを閉める。
そして私は口を開けず、心の中に決心を決めた。
――私の14年の、詩狼に対する気持ちをぶつけよ!
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
――数分後――
場所、学校の体育館の裏。
俺は体育館の裏に着いた後、零香は時間もかからずやってきた。
「待たせたわ……」
「やっと来たね」
彼女は来た、風と共に凛々しく登場した。 左手で髪の毛を抑えてながら、徐々と俺に近づいている。
そして俺はバカみたいに再び、零香に見惚れてた。
「う、うん……」
彼女は緊張に見えた。 うなずく動きと返事の声が少しだけ震えてた。
「…………」
「…………」
そのまま沈黙の二十秒。 俺と零香ただただ足が地面に張り付けて、言いたかった言葉も喉まで這入りあがったのに、口にあったよだれと一緒に再び胃袋の中へ落ちた。
頭の中ははっきりと何をやるべきなのか、わかっている。 しかしそれは……いざと正面から零香と立ち向かうと、体の動きが……! ガチガチになるぅぅ!!!
しかもこの雰囲気は――、
――気まずい!! 雰囲気は実に気まずい! もうここまで来たんだ! 男らしく、先に言え!
ココロにあった微かな揺らぎを決心と言う名の槌で叩きこんだ。 ハンマーでまだ叩き込んでいない新品な釘を木の棒に思いっきり叩き込んだみたいに決意が固まったんだ。
そんな回りくどい説明をして、俺はいっぽ前進した。
「あのs……」
「私も驚いたわ……」
しかし俺はなんにも喋っていないのに、零香が先に口を開けた。
――おえええーーー!! 俺はまだ三文字しか喋ってないだろ?! なんで急に口を開けた!? なんか男として……なんか情けない。
決意と肉体はそのまま灰になっていた。 《灰よ、風と共にこの勇気を誰かが必要とする者へ舞い上がれ。 その者に勇気を与えてくれ、俺はもう……尽きた》。
「あなたからこんな事を言うなんて、私も思わなかった……」
ところが零香は頭を下げ、地面を見下ろしながらところをかまわず自分の話しを進んでいた。 俺がすでに灰になったというのに……。
――空気を読めっ! この状況の定番は俺が先に言うだろ? 普通……。
ココロでツッコンだ。 しかしここは零香のペースに乗って、話を進もう。
「……お、俺もだ……。 こんな日が来るだなんて思いもしなかった……でもこれは、お前だからこそ言えるんだ!」
緊張で言葉がちゃんと言えたのかさえわからない俺は再び真剣な表情して、零香に近づく。
一歩を踏み出す時、俺は自分の足が重くなっていくと錯覚している。 勇気と恐怖のバランス常に不安定に傾く。
一歩を踏み出した、勇気のおかげ。 体は硬くなって身動きが取れない、恐怖にひれ伏せた。 そんなわけのわからない状態で俺は少しずつ彼女に近づいていく。
零香も緊張しているせいなのか……さっきから同じ場所で動いていない。 まるで足元に木の根が地面に植え付けていたみたい……でも構わない、これはこれで俺にも都合がいい。
そして――、
「零香」
俺は今朝と同じ、両手を零香の肩に乗せた。 真剣なまなざしで彼女を見つめる、零香もほっぺたの顔が……夕日のせいだろうか、いつも以上に赤くなっている。
い、息が詰まりそうな雰囲気! 呼吸も荒くなっていく……思い出せ! 女の子に大事な話をする時、怖い顔をしない、相手にプレッシャーをかけない、そして勇気をしぼってココロに思ってる声を吐け!
「は、はい……」
零香は怖がっていると見える、両手が彼女の自身の胸元に抑え、唇の動きもなにが嫌がってるみたい……。
しまった! 鏡が持ってないが、きっと俺、今、怖い顔をしていると間違いはない! 今更どうだっていいのさ、言え!
「じ、じじ実は……」
堅苦しい!! 全然言えてない!
――くぅぅ!! ダメだ! ここまで来たのに、また緊張して来た!!
「…………」
「…………」
二回の沈黙。
静かな体育館の裏に俺たちふたりが、僅かだが、心臓の鼓動が聞えている……そのままお互いの目を見詰めている時、俺はココロの中から再び勇気をしぼる!!
――いっけぇぇぇ!!!!!!
「実は俺――」
「待って!! まだココロの準備が……」
零香はいきなり右手でストップの合図して、俺の言葉をシャットアウトされた……。
――なにぃぃぃ?! ここまで来たのに、いきなりそれ?!
俺がココロを込めてしぼった勇気が……風と共に吹っ飛んだ~。 でもって零香は背を向いて、深呼吸を始めた。
その間の俺はこう思ったんだ。
――もしここに椅子とコーナーがあるなら、俺はそこに座って燃え尽きて、灰になりたい……。
深呼吸を続けていた零香はまだ俺に背を向けている。
「よし! 準備を整った!」
自信満々な顔の零香はバッチリとこっちを向いたが――、
「そうですか……」
その時の俺は、目の光がすでに消えていた。
「って……なんでそんなに落ち込んでるの?」
――なんでって? お前がいきなり背を向け、深呼吸している間、俺のココロは既に冷たい風に冷えたんだ!
思いっきりココロの中でツッコンだ、さすがに彼女の前ではこれは言えないセリフだ。
「んん……なんでもない」
――このままじゃダメだ! はやく言わないと俺はきっと後悔する!
自分に言い付けながら、真っ白にであった俺、一つ一つ、徐々に色が染まれていく錯覚。
一歩を踏み出すと、靴が元の色に戻った、二歩でズボン、三歩で上着……そして四歩は俺の顔と勇気と言う名の炎が俺の瞳に燃えている。
――ええい! もうどうでもいい! 今から言う! なんとしても言う! 何かあっても言う!
「零香!!」
大声で彼女の名前を呼ぶ。
「はいっ!」
そして答えする彼女は震えた。
「実は! お前に頼みたいことがある!」
恐れを知らず勇気! 今しかいない!
「う、うん……」
零香は初々しい表情で俺の目を見つめる。
ここだ! この瞬間を待っていた!!
――もう少し! あともう少しで言える! 行けぇぇぇぇぇ!!!!
「俺に!!! ノートの宿題を写させて!!!!!!!」
――や、や……やった! ついに言った! うおおおお!!!! やっと口に出した!!! いや~「実は俺、プリントの宿題がやってませーん」なんて、しゃれにもならないからな~! だから俺は愛しいの幼馴染みに頼んだのさ! どうだ? 零香がこのお願いを聞いてくれた?
嬉しくてしょうがない俺ははしゃぎ過ぎて、零香は俺の頼みを聞いてくれるとそう思い込んだ俺は、視線を再び零香を見た瞬間――、
「ひっ!!」
俺はココロの底から恐怖した。 腰が抜ける程びびってしまった。
零香の周りに、鬼のようなオーラが漂っていた、最初だけ。 その後、しかも物凄く速さで! 全開! マックスで! 放っていた!
その黒と紫っぽい色のオーラの隙間から何かが見える(幻、覚か……?)、人型の幽霊が見える!
その幽霊は……サクラの紋様と純白な着物を着ている黒髪の“女性”が鬼の仮面を被せて(顔がまったく見えないけど、美人は断定できる)、腰の左右がカタナのようなモノを持っていた(日本刀?!)。
この零香の後ろに現れた“悪霊”! まさか……まさか……まさか……!!
――スタンド?!
零香は実はスタンド使いだったのか?! いや待て……! 俺が零香のスタンドが見えるってことは…もしかして! 俺もスタンド使い?!
だとしたら俺の――、
「俺のスタンドの名前は……ザ・ワール――」
「用件はそれ?」
「はっ!?」
まだ最後まで言ってないうちに、零香の怖い声が俺を一瞬に現実へ引き戻した(?)。 しかも――、
――声が明らかに怒っている…でもなんで?!
「は、はい……」
ビビッてしまった俺は、おとなしく返事した。
――こええ……!!! 体の震えも止まらない!
「そう……ハァ~私はてっきりあなたの口から長年の……あの約束の言葉が聞えると思ったのに……やっぱ詩狼は鈍感過ぎるというか、なんと言うか……」
呆れた零香はため息をつく、そして言いたい放題を始めた。
――え? やく……そく? なに言っているの? こいつ……。 あと、俺は鈍感じゃないぞ!?
「ただノートの宿題を写させてだけでだ! だからここへ呼んだのさ――」
またしても最後までいってないうちに、零香のやつが――、
「問答無用!! 成敗!!!」
俺のセリフシャットアウトし、そして俺には一瞬だけ、なにか高速のなにかが飛んで来やがった。 でもそれがなんなのは知らないままそのなにかを食らった。
しかし俺は気絶する寸前に、己の力を絞って、一言を言った――、
「なん……で……?」
視線が地面の高さにあった。 そして零香が逃げる背中、俺はなにかが起きたか知らないまま……完全に気絶した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
真っ暗な空間に、僅かながら、風の音が聞こえる。 草が呟く声を聞こえる、そして音の中に、なにか別の音が聞える……。
「……い……ろ! ……ろう!」
音ははっきりと聞こえない、まるで大雨の中にある音を見分けると同じくらい聞きにくい……。
――いったいなに? この音?
でも次第に時間が経つと、どんどん声がはっきり聞えていく。 人の声だ……しかも耳覚えのある声、だけだ……?
「おい、起きろっ! 詩狼! 寝るな!!」
声の主は……健次だった……。
俺はその時、目を少しずつ開けると、影がいたからおかげで目があんま眩しくなかった。 そして奇妙なことに、視線はなぜか赤い空を見上げていた…しかも地面に寝転んだ体勢のまま。
「うん……? 健……次?」
まだ完全に状況を把握してない俺は、先に俺のそばにいた健次を呼んだ。
――頭が重い……、これはいったい……?
「おおお!! ようやく目を覚めた! お前な……こんなところで寝込んで、なにかあったのかい?」
心配そうに見える健次は俺に肩を貸して、起きるのを手伝ってくれた。 でも健次が言ってた言葉に疑問を抱いた。
――寝込んだ? 俺が? ここで? そう言われると……なんで俺は体育館の裏で寝込んでいるだろ? いて! 首がいて! めっちゃいて! ん?
「どうした? どこか痛いのか?」
――そういわれると、確かに痛みを感じる……。
「ああ……でもなんでだろ? あ、もう大丈夫だ。 ひとりで歩けるから」
少しだけ足が回復したので、ちょっとずつ健次から離れていた。
「おい、大丈夫か? まだふらついてるじゃないか」
「平気だよ平気。 それより、俺はどうして体育館の裏に寝転んでいるか……心当たりでもあるのか?」
健次には期待していないが、一応聞いておこうと思った。
そして健次はいつも通りのチャラな口ぶりでしゃべる――、
「そりゃまァー、お前はあんなモノを食らったからな~」
うん? なにか引っかかる単語が……!
「ちょっと待って、今なんて言った?」
――『あんなモノを食らったら』? いったいどういうことだ。
「やっべ! なんのことだ? 俺はまだなにも言ってないぞぉ?」
明らかにビクッと震えた……。
――とぼけている、このやろう。 ハァ……これ以上喋っても時間の無駄だし、さっさと学校から出よ。
俺はすぐに横にあったカバンを拾って、そのまま正門に向けて歩き始めた。
「まあいいさ。 それより、はやくバイトへ行こう」
俺は敢えてなにも聞くことにした。
「本当に大丈夫? なんか歩いてる姿勢が妙だぞ?」
健次も、すぐに俺の横に並んだ。
「平気平気、さぁ! さっさと行こう! 俺は店長に怒りたくないから!」
それを言った直後、俺は走り出した。
「それもそうだ、な! ……イェーイ、お先に~~!」
「この野郎っ!」
健次は俺の後に走ったのに、二秒で俺を追い抜いた……。
そして俺たちはそのまま学校から出て、バイト先へ走った。 その時、俺はあるところからはっきりと痛みを感じた。
――首がいて……。