第一章26 《学校タイム、終了》
―5時間目終了―
「OK,今日はここまでだ! Everybody,さらばだ!」
その直後、伊達先生は物凄くはやいスピードで教室から出た。 そして何人か体を伸ばし、或いは椅子から立ってきて伸ばす。 そんな中で――、
「うーん・・・あー疲れたー」
俺も体を伸ばした。
「行儀悪いぞ、詩狼。 エリヴィラちゃんも詩狼の動きを真似しないで」
零香が俺たちを説教している中、エリヴィラと俺は聞いてないふりで体を伸ばしていた。 ちなみにエリヴィラは俺の上で体を伸ばした。
「随分と仲がいいね、三人とも。 保健室になにかあったのか?」
騒いでる教室の中に、健次がいきなり俺たちに声をかけ、ニヤニヤと笑っていた。
――気持ち悪いにやけ顔だ。
「まぁー、エリヴィラの看病は零香がやったので。 それでエリヴィラが零香にココロを開いた・・・かな?」
文字通り、俺は健次に説明したが――、
「なんだそりゃ?」
この野郎は理解できなかった。
「ところで、坂本くん。 君は確か苅尾先生に呼ばれなかった?」
零香がエリヴィラを抱っこし、俺の上から彼女を降りした後。 健次に何か言った。
「あれ? そう言えば・・・確かにそうかも。 んじゃ! 俺は先生に探して来る」
用事を思い出した健次は、チャラ口ではやくも教室から飛び出して、職員室に向かって、走っていた。
「おう、早く行け!」
そして健次を見た俺が、彼と同様、大事な用件を思い出した。
「そうそう、俺もはやく行かないとやべかも・・・」
「詩狼? どこに行くの?」
俺は席から立ちあがって、教室の出口を向かってる途中、零香に声をかけられた。
「ちょいとトイレに行くだけさ、エリヴィラのことを頼むぜ!」
――はやく行かないと漏らすそうだぁぁ!!
両足が廊下に立った直後、俺は全速で一階にあるトイレへ向かって、走り出した。
そして思った通り、俺は全力で走っているが、他のやつに見たら、俺はウォーミングアップような走りをしていた、9㎞/hr...
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「パーパはどこに行った?」
教室に残ったエリヴィラと零香が突っ立ったまま出口を見続けて、そしてエリヴィラは零香の後ろに近づき、彼女の手を握った。
「ん? あー、詩狼はちょいと花摘みに行ったの」
「花摘み・・・?」
疑問であったエリヴィラは、首を少し坂にして、わからない顔をして。 あるイメージを想像した。
綺麗で美しい花園の中で、蝶が舞い踊って、そしてそこに詩狼が蝶々たちと一緒に踊って、花を摘んでいたところを。
そのイメージがあまりにもインパクトがあって、エリヴィラは思わず爆笑を必死にこらえていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
――はやく! あともう少しでトイレに着く! この階段を降りたら・・・!
俺は必死に走っていて、階段を二階ずつ降りていた。
「なっ?!」
「きゃっ!!」
一階に到着した直後、俺はうっかりと誰かとぶつかって、その人を転ばせた。
そして声を聴く限りでは、女の子だ。
「わ、悪い!」
俺はすぐに謝って、彼女の手を掴んでついでに彼女を床から立ち上がるのを手伝ったが――、
――やっべぇ!! 漏れそうだ!!!!!
急に股間が破裂そうな感覚が襲い掛かって、腰の力が少し抜けていた。
「俺、急いでるので、ぶつかって本当にごめん!」
「あ、あの・・・!」
再び謝った後、女の子がなにか言おうとしたが、俺は女の子の顔も見えもせず、頭を振り返るもせず、トイレへ行きたいと一心で走って、その場を離れた。
「また、チャンスを見逃してしまった・・・雪月花先輩・・・」
少女は握った手を胸を押して、少し残念そうな表情で詩狼の背中を見つめていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
4分後、俺は用事を済まし、教室に戻った。
そしてそこに、妙な景色が見た。
「なにやってるの? お前ら」
「し、詩狼?! こ、これはっぽ!!」
その奇妙な景色は、エリヴィラが零香の太ももの上に座っていたこと。
そして俺が急に声をかけたせいで、零香の語尾が出てきて、幸い、教室内はうるさいから、誰も聞き取れなかった。
「おかえりなさい、パーパ!」
「ただいま。 んで? なんでこんなことになったの?」
――気になるが、まぁー大予想にエリヴィラがわがままを言ったなんだろ・・・
「私がわがままを言って、母さんがそれを聞いてくれた」
やっぱりそうだったのか。
「詩狼、あんまエリヴィラをいじめないでね。 このくらいのわがまま、私だって受けるのさ」
零香は母らしき、子供を庇った。
「いや、俺は別にいじめていた訳じゃないぜ? 単純に好奇心で聞いたまで。 俺だってエリヴィラを悲しむことは絶対しない」
当然じゃないか、俺は絶対にエリヴィラを悲しめないし、零香も・・・
「あら、上手いことを言うじゃないかー。 詩狼はそういうところだけが取り柄だもんな」
――“だけ”は余計だ!
「ね~パーパ、最後の授業は保健・・・ですか?」
俺が零香といつもの会話をしていたら、エリヴィラが俺に次が保健体育の授業なのかを質問された。
「うん、そうだよー。 保健体育だ」
俺が答える前、零香が先に答えてしまった。
「保健・・・体育。 それはなんの授業ですか?」
「「え?」」
好奇心であるエリヴィラは、予想外の質問で俺たちを凍らせ、アホな顔で唖然。
そしてエリヴィラは興味津々な表情でこっちを見ていた。 目まで光ってる・・・
「どういう授業って・・・母さんに聞いてくれ」
俺はエリヴィラの質問に答えにくいので、零香にまるなげした。
――すまない零香! あとのことは頼む!
「私?!」
零香が驚きそうな表情をした。
「なんの授業ですか? ナイトさん」
エリヴィラは視線を零香に向けて、キラキラで、期待してる顔で見つめていた。
――お~、ちゃんと零香の約束、守っているじゃねえか。
そして俺は驚いたのは、エリヴィラがちゃんと零香と約束を守っていたこと。
「保健体育はなんの授業、かー。 ええと、簡単に言うと、健康を保つため、どうすればいいのかを教える授業だ」
――ナイス!
俺はエリヴィラの後ろで零香にグッドサインを見せた。
「なるほど・・・健康を保つための授業かーすごい!」
納得したエリヴィラはふむふむとうなずいた。
「でしょう?」
「なんで詩狼がドヤ顔で言う? 恥を知れ」
俺が「でしょう?」っと言った途端、零香にツッコまれた・・・
――そこはツッコまないで~。 これじゃ、「俺はバカだ」という宣言をしているみてぇじゃねえか? 俺はバカじゃない。 これだけ言える!
そんな俺たちが楽しく話してるうちに、ダークブルーのスーツを着ていた男性が教室に入った。
「チース、こんにちはクソガキ共。 今日はラストの授業だ、気合を入れなくてもいいんだぞ?」
先生でした。 先生が教室に入った後、生徒たちが自分の席に座り、俺の自分の席に座った。 しかし今回は、エリヴィラが零香のところに座ってた。 もちろん、太ももの上に。
今日の最後の授業が始まった。 保健体育を担当している先生、永村先生だ。
「先生、気合を入れないと、じゃーこの授業はなんの意味あるんですか?」
っと、黒川さんが質問した。
「意味などない! 今日はね、娘と遊ぶ約束をしたんだ! だから、こんなところでモタモタしてる暇がないんだ! あー時間を加速する能力がないのかなー」
授業より、娘の約束の方が大事とぎゃーぎゃー文句を言っていた親バカの先生でした。
「なにをそれ! 意味分かんない!」
しかし黒川さんは相変わらずマイペースで話を進んでいて――、
「ははははは・・・!」
そしてみんなが笑った。
永村先生は所謂「オタク」ってやつ。 学校の授業と試験の答え合わせ以外の時間は、ゲームとか、マンガとか、ライトノベルとか、あとは・・・娘と遊ぶとか。
そういう毎日が送っていた。 家族とは仲がすごくいいと聞いたんだ。
「そう言えば、苅尾に聞いたんだ。 しばらくこのクラスにいる「ピンクの髪色をしている雪月花くんの遠い親戚のロシア人のハーフ」はどの子だ?」
――またそのネタだ・・・いったい苅尾先生がなにをやってるの?!
「はい! ここです!」
エリヴィラが先に手をあげ、自分の存在を示した。
「うーん? うおおおお!!!」
エリヴィラは少し後ろの席にいたので、先生は少し上半身を伸ばしてこっち見た直後、なぜか大きな声で叫んだ。
「ど、どしたんですか?! 先生!」
曲本さんが先生の叫び声にびっくりして、心配な顔で質問した。
――いったいどうしたんだろ?
「び、美少女だ! まるでギャルゲーの中に登場するヒロインだっ! ピンク色の髪、真っ白な肌、顔が人形みたい、目も大きい、しかも左目の瞳の左上隅に星の形が見える! これは、もはやアニキャラだ! うおおおお!!! 燃えてきたぞ!」
「――――」
クラス全員が沈黙を選んだ。
――えっと、俺はどこをツッコめばいいの?
「先生、はしゃぎ過ぎです! エリヴィラちゃんが怖がってるじゃなですか?」
元原さんが手をあげ、永村先生に注意をした。
「はっ! す、すまない。 昔の熱い魂が甦ったのでつい・・・それにしてもカワイイなー、俺の娘と同い年かな? エリヴィラちゃん、君、今年が何歳?」
少し冷静になった先生は別の質問を追撃した。
――まだ聞くつもり?!
「十一歳です!」
エリヴィラは考えもせず、即答をした。
「あ、やっぱり! な、エリヴィラちゃん・・・もしよかったら、俺の娘と仲良くしてくれない?」
――いきなりなにを言っているのだ?
「Конечно!」
ニコリとエリヴィラが答えた。
「え? 今なんて言った?」
そして先生は予想通りの反応をした。
「エリヴィラは今、「もちろん!」と言ったのだ」
エリヴィラのロシア語の通訳者である俺がさっきエリヴィラが言った言葉を通訳して、クラスと先生が驚きの顔で俺を見ていた。
――な、なに? 俺、もしかして、やっちゃった・・・?
「なるほどー、雪月花くんもロシア語が分かるのだー。 ところで雪月花くん、本当にエリヴィラちゃんがお前の遠い親戚なのか?」
永村先生は更に質問を俺に向かった。
――今さらなにを言い出すと思ったら・・・
「はい、遠い親戚です。 今は俺の家に住んでいます」
しかし俺がエリヴィラは俺の家に住んでると聞いた先生は――、
「なにぃぃぃ??! 一緒に住んでいる・・・だと? これはなんのラノベ展開? お前はすでにナイトさんという特別な幼馴染みがあるのに、みろっ! 彼女の髪、黒髪と金髪がきれいに割れている、これはもうマンガだ! そして俺はきっとこの物語の教師Eだ。 それにお前の苗字、「雪月花」、これはなんの主人公の苗字だ!? あと名前、「詩狼」、読み方が普通だけど、書き方がかっこい過ぎるぜ! 俺はなんか、「永村 永治」、名前と苗字に「永」が二つがいます・・・そして今は! 妹みたいな存在、エリヴィラちゃんがお前と一つの屋根で暮らしている! あとは――」
――止まらない勢いでぺらぺらと喋り始めていて、どんどん俺に近づいていた。
「先生、はやく授業を始めちゃってください」
しかしながら、先生の長いツッコミが終わらないと思った俺が、零香の一言で先生を黙らせた。
「あ、はい。 すまない、つい昔の癖で・・・じゃ、授業を始めよ!」
先生と俺の距離は一メートルで止まり、逆戻りして、自分の持ち場へ戻った。
「ふぅーありがとう、零香」
安心した俺は、ため息をついて、零香に礼を言ったが――、
「礼はいらぬ。 ただ永村先生が無駄な話をしていたので、注意をしただけ」
断れてしまった~。
――相変わらず素直じゃないやつだ。
それから、永村先生がちゃんと授業を始めた。 俺は時々零香たちの様子をチラリと見て、そこにはワクワクしてるエリヴィラと授業を真面目に受けていた零香であった、「なんという奇妙な光景だー」っと俺がニコニコと笑っていた。
その後、俺たちは先生の授業に専念したが、いつの間にかチャイムが終了の時間を鳴らした。
――これにて、今日の授業が終わった。




