世界大戦勃発? 後編
国王たちは3名一組で、順番に儀式の間へと転送された。
儀式の間にはすでに魔方陣が描かれ、魔道師を除く魔法使いたちがいつでも召還魔法を使えるように準備済みであった。
招かれた国王たちはそれぞれ用意された椅子に座り、その背後に護衛の騎士が立っていた。
近隣諸国の王たちが全てそろったところで、この城の城主でもある国王が立ち上がった。
「皆様方におかれましては、此度の我々の行いについて誤解を持たせてしまったようだ。」
「ふむ、この部屋で何を行っているのか説明していただけるのであろう?」
「もちろん。すでに準備は整っております故、言葉で説明するよりも実際に見てもらったほうが早いだろう。では、頼むぞ。」
「ハハァ!」
魔道師を含む、魔法使いたちが魔方陣を取り囲むように移動した。
「しょーーーかーーーん」
この詠唱を聴いたとたん、この国の国王がぶるっと身震いした。顔付きもなにやら紅潮しているようにも見える。
部屋を覆い尽くさんばかりの光が消えた後には、いつものように「書物」が鎮座していた。
「こ、これは、、、召還魔法か!?」
「よくご存じで。ここにいる魔道師を筆頭とした我が国がほこる魔法使いたちが、その英知を結集して作り上げたものである。では、早速召還されたものをその目でご確認ください。」
「うむ、では私が取りに行こうとするか。」
立ち上がる国王を護衛の騎士たちが止めようとするが、「よい」と言いながらそのまま立ち上がる国王。
国王陛下に何かがあったら、、、という焦燥にかられながらその後ろ姿を見つめることしか出来ない護衛の騎士たち。そうしているうちに、国王はすぐに魔方陣の中央にたどり着き、片膝をつきながら「召還されしもの」を取り上げる。
さすがに2度目だからか、鼻血を吹き出したりはしないが、
「お、、おぉ、、これはなんとも素晴らしいものであるな。」
よく見ると感動の余り小刻みに震えているようにも見える。
老齢にて立ち上がれないはずの国王までもが立ち上がりよろよろと歩き出す。
「国王陛下!」
護衛の騎士たちが支えようとすると、その隣に座っていた国王陛下が立ち上がり、騎士たちを制止する。
「どれ、私でよければ支えとなろう。」
「うむ、すなまいな。年甲斐もなく興奮しておる。」
「私だって同じ気持ちですよ。」
「では反対側は私が支えよう。」
二人の国王に支えながら歩き出す、年老いた国王。
国王同士が支え合うという前代未聞の光景を目の前にした騎士たちは、驚きを隠せない。
(ナイフとフォークよりも重いものを持ったことがないはずの国王陛下たちが、自ら他国の国王を支えるとは。あ、女王陛下のほうがずっと重そうだな・・・)
と、口に出したら不敬罪で即刻死刑になりそうなことを思いつつも、感動に打ちひしがれていた。それは、その場にいた全ての騎士たちが同じ思いだったはずだ(女王陛下の体重も含めて)。
そして、魔方陣の中央に4人の国王たちが集まった。
「誤解してすまなかった。」
「私からも謝らせてくれ。」
「ワシも年をとって目がくすんでいたようじゃ。この通りだ。」
普段は人前で頭を下げることなど決してするはずのない国王たちが、迷いを見せることなく頭を下げる。
「いや、私も誤解を招くようなことをしていた。申し訳ない。」
これを見ていた一人の騎士は後に騎士団長になるのだが、こう書き残すこととなった。
「平和を望みながらも騎士になり争いに身をやつして、どれほどの時間がたったであろうか。大陸を四分する大国の国王たちが、間違いなく一つの思いを胸に歩み寄っていた。理想論でしかなかった世界平和という言葉が、現実に近づいた瞬間をこの目で見た。」
と。
実際にはエロ本につられたスケベじじいたちが集まっていたに過ぎないのだが。
「とりあえず、連合軍の兵は帰すか。」
「そうですな、誤解も解けたことですし。」
「国王陛下どの。申し訳ないが、護衛の騎士たちを転移魔法で送ってはくれないか。その者たちから撤退の指示を出させよう。」
「しかし、それでは陛下たちの護衛がいなくなってしまいます!」
騎士の一人が心配のあまり大きな声を出した。
「心配するな。お前たちは、今ここにいる私たちを見て争いが起こるように見えるのか?」
4人の国王陛下たちは、慈悲に満ちた顔をしていた。今なら国家反逆罪を起こしても恩赦を受けて無罪になりそうなくらいだ。
「出過ぎたまねを失礼しました。そのような心配は不要かと。」
「そうであろう。では、連合軍を引かせてくれ。」
「では、魔道師よ。騎士たちを送ってくれ。」
「ハイ。」
魔道師は何回かにわけて騎士たちを送り届けた。
「おい、そこにいる魔法使いよ。これまでの『成果』を持って参れ。」
「ハハッ」
「どれ、立ち話もどうかと思うのでな、座ってゆっくりと談義しようではないか。」
「そうですな」
移動して椅子に座る国王たち。
そこへ、魔法使いの一人が何冊かのエロ本を持ってきた。
「いや、しかし、これは見事な書物であるな。まるで生き写しではないか。」
「全くだ。今にも動き出しそうなくらいだ。」
「しかも、ここに描かれている女性たちはなんとも素晴らしい者たちばかりじゃのう。ワシはもう老い先短いと思ってばかりいたが、これを見るともう少し長生きしたくなってきたのじゃ。」
「ハハハッ。素晴らしいことですな。」
「そして、夜な夜なこれを召還していたという訳か。」
「そういことになりますな。」
「しかし、これを見ると『黒』が素晴らしいという気持ちがわかるな。」
「そうであろう?(ニヤ)」
「うむ。美しさと儚さ。奥ゆかしさの中に見える芯の強さ。そして、妖艶さ。この大陸では見たことがない女たちだな。」
「黒が一番だな。」
「一番じゃ。」
「疑うことすら愚行だな。」
「大陸四大国家の国王である我々がこのように気持ちを通じあうことが出来たのも何かの縁ではなかろうか。これを機に、国家間のありかたも平和にありたいものだとは思いませぬか?」
「たしかに。争いなどにうつつを抜かしていては、この素晴らしい芸術を楽しむ暇がありませんからな。」
騎士や軍の兵士が聞いたら(俺たちの存在意義はエロ本以下か・・・、と)泣きそうになる言葉だった。
「では、われわれ四大国家で平和同盟を結んではどうじゃろうか。」
立つことさえままらなかったはずの年老いた国王が、年を感じさせぬ笑顔で提案した。
「おぉ、素晴らしい。そんな発想はこれまで思いつきもしなかった。こうやって我々が集まることも出来たのも、全て召還魔法のおかげだ。ここにいる魔法使いたちはこの世界に平和をもたらした者たちとして後世に名を残してやらなければいけませんな。」
「ありがたきお言葉。身に余る光栄でございます。」
魔道師を筆頭に、魔法使いたちが膝をついて頭を下げる。
(エロじじいたちの仲を取り持っただけのような気もするけど・・・)
もちろん、思ったことは死んでも口にはしない。
この後、しばらく国王たちの猥談に花が咲いたという。
国王たちがなにやらやつれた感じでそれぞれの国へ戻って(魔道師が転移魔法で送り届けた)から間もなく、大陸平和同盟の締結が発表された。
これまで誰にも出来なかった偉業を成し遂げた国王たちは、賞賛を持って後世まで伝えられることになったという。
別にエロ本しか召喚できないわけではないので、他のものも召喚できます。いつまでエロ本ネタで引っ張ろうかというのもありますが、あと少しエロ本ネタが続きます。
思いつきで書き始めたので、すでにストックが尽きかけています。次のネタもなかなか浮かんでこない・・・