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初めての召還

今の地球ではないどこかの世界の、とある国。



中世ヨーロッパを思わせる世界に、これまた中世ヨーロッパを思わせるお城。


この世界には科学技術がない代わりに魔法が存在していた。


そして、そのお城の一室に高名な魔法使い5名と国王が集まり、神妙な面持ちをしていた。


「では、魔法使いたちよ。研究の成果を聞かせてもらおうか。」


「ハイ。私たちは研究の末、異世界からの召還魔法の開発に成功しました。」


「本当か!よくやった!これで我が国も安泰だな。」


心から嬉しそうな国王であったが、一人の魔法使いが申し訳なさそうに話しを続ける。


「ただし、その、、、この召還魔法は万能ではなく、実は制限がありまして、、、」


「なんだ。申してみよ。一度に勇者を一人しか召還できないとかだったら、問題ないぞ。」


「い、いえ。実はですね、、、、この召還魔法では勇者は召還できません。」


「召還できない、だと。」


国王の顔が歓喜から一転、国王と呼ばれるにふさわしい鋭い目つきとなった。



魔法使いは頭を下げたまま続ける。


「はい。勇者どころか、生きているものは召還できないのです。」


「では、何が召還できるというのだ。」


「生物でない『もの』であれば召還できますが、こちらから何が欲しいといった指定する事が出来るかどうか不明です。」


「ふむ、実際に呼び出すまで何が出てくるかわからないとうことか。」


「その通りでございます。」


「生きているものが召還できないとして、死霊やアンデッドといった類のものは呼び出せるのか?」


「いえ、そういったものも無理です。純粋な『もの』のみとなっています。」


目を閉じて、思案する国王。


どれほどの時間がたったのであろうか。実際にはそれほど時間がたっていないはずなのに、緊張感が感覚を麻痺させ、時がたつのを遅く感じさせたようだ。頭を下げていた魔法使いが耐えきれずに国王を見上げると、



「とりあえず、一つ出してみるか。」


なんともお気楽な感じで国王が決定した。


「よろしいのですか?」


「せっかく作ったんだし、危ないものが出てきたら今後使わなければいいだけだろう?」


「そうおっしゃるのなら、おい、お前たち今すぐに召還魔法の準備をしろ!」


「「「「ハイ!」」」」




国王と魔法使いたちは、「儀式の間」と呼ばれる部屋へ移動した。この部屋は重要な儀式を行うための部屋で、ドアは一つのみで中から鍵をかけると外からは絶対に開けることが出来ず、窓もない。ありがちな隠し通路もない、完全な密室だ。


魔法使いたちが魔方陣を囲み、魔法を唱え始め、最後に5人一斉に


「しょーーーかーーーん!」


と大声を上げた。


なんとも安直な締め言葉に国王は「コケッ」という言葉がこれ以上似合う男はこの世にいないと思わせるほど、盛大にこけた。


(もっとまともな詠唱はなかったのか?)



その瞬間、魔方陣に描かれた線、記号、文字が青白く光ったかと思えば、まるで無数の蛍が飛び交うかのように光の粒子がらせん状に舞い上がり始めた。その光が5mはあろうかとい天井にとどいたかと思うと、魔方陣の1点めがけて一斉に集中降下を始める。全ての粒子が集まったかのように見えた瞬間、強烈な光が儀式の間を覆ったかと思うと、次の瞬間には全てが幻であったかのように静まりかえっていた。そして、今起こったことが幻ではなかったと証明できる「もの」が魔方陣の上に乗っていた。


「お、おぉ、、、あれが異世界からの、、、」



「国王様!危険です。お下がり下さい。まずは私が危険がないか確認いたします!」



「そうだな。では、頼む。」



「ハイ」



魔法使いの一人、この国の魔法使いの頂点に立つ魔道師と呼ばれる者が、おそるおそるといった足取りで魔方陣の中央へ向かう。ほんの3mほどの距離のはずだったが、その魔法使いが後に「あれは死刑台に向かうほうがよほど気楽だったかもしれない」と語るほどに緊張していた。



そして、近づきながら魔方陣の中央にたたずんでいる「何か」を確認する。




「なにやら、書物のように見えます」


「書物、だと?」



「はい、それもかなり高度な技術をもって描かれているらしく、この国では見たことがないほど色彩豊かな『もの』です。」



魔道師はおそるおそる本を手に取ってみると





盛大に鼻血を吹き出しながらよろめいた!


「おぉぉぉぉっっっ!!!」


儀式の間に緊張が走る!!



「魔道師さま!」


「大丈夫ですか!」



「来るなっ!来てはならん!!」



魔道師はまるで隠すように書物を片手に持ちながら立ち上がり、集まろうとする魔法使いたちをもう一方の手をあげて制止させる。



「国王様!この書物は禁書にございます!見る者の精気を吸い取る魔書にございますゆえ、誰にも見せることは出来ません!即刻、この部屋から出て行ってください。この魔書は私が命に代えて封印します!」



「おぉ、魔道師よ。その身を犠牲にしてまで・・・」



魔道師の命がけの行為に感動する国王。



ところが、魔法使いの一人が魔道師と呼ばれた男を見つめながら、何やらおかしいことに気がついた。


魔道師と呼ばれた男の顔には、恐怖よりもむしろ歓喜を押し殺しているような表情が見て取れたのだ。


どうやら、国王と他の魔法使いたちも気がついたらしい。


(なんだか怪しい)



そう思った国王と他の魔法使いたちは魔方陣へ歩み出した。



「何のつもりだ!来るなといってのが聞こえなかったのか!」



その声を無視して、一人の魔法使いが魔書と呼ばれた書物を取り上げた瞬間、


鼻血を吹き出して崩れ落ちた。


そして、倒れた魔法使いから書物をとりあげた魔法使いたちが次々と鼻血を出して崩れ落ちていく。


とうとう、国王までもが崩れ落ちた。



「おぉぉぉっっ!!! 確かにこれは禁書であるな!」


「こんな汚らわしい魔書をこの部屋から出すことは断じて出来るはずがない!」


「そうだそうだ!!!」


「というか、魔道師さま。これを独り占めする気でしたね!!!」


「何を言うか。こんなものが出回ったら城内が大変なことになるだろうが!」


子供のケンカが始まっていた。




魔法使いが手にもっていた本の表紙には、、、、





ナイスバディの金髪美女が裸体でなまめかしポーズをとっていた。



要するに、ただのエロ本だった。





それからしばらくの間、儀式の間には毎日のように国王と魔法使いたちが集まり、げっそりとしながらも笑みを浮かべて出てくる姿が見られるようになったという。


勇者じゃないものを召還させてみようと思ったら、いつの間にかこうなっていました。

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