告白
山櫻の切り株に腰を下ろした僕らは、真っ暗になった世界を無言で眺めていた。
「……あのさ、ここが無くなってるって知らなくて……」
暫く沈黙していた彼女は、申し訳なさそうに口を開くと俯いた。僕はフォローしようとして、彼女が切り株を愛おしそうに撫でているのを見てしまい、口を閉じる。
多分、今何を言っても彼女には届かないだろう。
「彰、何か隠し事してるでしょ」
突然、彼女が僕を指差して言った。暗闇で顔がよく見えない。
また“今だ”と声がした。
今が最期のチャンスだと。
けど、僕は…
「……ああ……この前通知が来て……“選ばれた”」
そう言った時、彼女は暫く固まっていたが、そっと僕の頭を撫でてくれた。
「……泣いちゃだめだよ。泣いたら……私達はどうなるんだよ」
泣いてなんかないと彼女を見ると、頬を温い水滴が伝って顎から墜ちた。
暗闇に慣れたからか、彼女が近付いたからか、彼女が微笑んでいるのが分かった。
「ごめ……ごめん……ごめん……ぼ、僕……」
涙を隠そうと袖で拭うが、後から後から涙が溢れてくる。駄目だなぁ。
「じゃあ私の秘密も教えるね」
そう言って、彼女は僕の肩に顎を乗せて最初で最期の
「ずっと好きだった」
告白をした。
彼女の体温を感じながら目を閉じる。瞼の裏に、櫻の花びらが舞っているのが見えた。