表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

告白



山櫻の切り株に腰を下ろした僕らは、真っ暗になった世界を無言で眺めていた。


「……あのさ、ここが無くなってるって知らなくて……」


暫く沈黙していた彼女は、申し訳なさそうに口を開くと俯いた。僕はフォローしようとして、彼女が切り株を愛おしそうに撫でているのを見てしまい、口を閉じる。

多分、今何を言っても彼女には届かないだろう。


「彰、何か隠し事してるでしょ」


突然、彼女が僕を指差して言った。暗闇で顔がよく見えない。



また“今だ”と声がした。

今が最期のチャンスだと。

けど、僕は…




「……ああ……この前通知が来て……“選ばれた”」


そう言った時、彼女は暫く固まっていたが、そっと僕の頭を撫でてくれた。


「……泣いちゃだめだよ。泣いたら……私達はどうなるんだよ」


泣いてなんかないと彼女を見ると、頬を温い水滴が伝って顎から墜ちた。

暗闇に慣れたからか、彼女が近付いたからか、彼女が微笑んでいるのが分かった。


「ごめ……ごめん……ごめん……ぼ、僕……」


涙を隠そうと袖で拭うが、後から後から涙が溢れてくる。駄目だなぁ。


「じゃあ私の秘密も教えるね」


そう言って、彼女は僕の肩に顎を乗せて最初で最期の



「ずっと好きだった」



告白をした。



彼女の体温を感じながら目を閉じる。瞼の裏に、櫻の花びらが舞っているのが見えた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ