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ボウリング場
最初に来たのはボウリング場だった。彼女と来るのは、確か同窓会の時以来だから2年前だ。こんなご時世だから誰もいないと思っていたが、娯楽施設は意外にも大盛況だった。
「そういや、ここだったね。彰がメールで彼女にフラれたの。ユウちゃんだっけ?」
そう言ってプラスチック板を壊されたUFOキャッチャーの中に手を突っ込む。その中に遺された不細工な鳥の人形を引きずり出した。
「言うなよ…。思い出したくない」
その時の僕はボウリングどころじゃなくなって、友人と店員合わせて3人がかりで押さえ込まれるまで暴れていた。
「荒れてたよねー、何だっけ?『彰には好きな子がいるみたいだから別れる』だっけ?あの後レーン滑って頭からストライクした時は笑った~」
なんつー事掘り返すんだ。忘れようとしてたのに…。
いたたまれなくなった僕は逃げるように外へ出た。
「あ、待て!」
彼女は鳥の人形を床に投げて僕の後をついてきた。よく見ると、鳥だと思っていた人形は白い芋虫の人形だった。