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異世界の成金道  作者: (ちきん)
第一章カンガール食堂と未亡人
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1-6お手伝い

カンガール食堂の食事はとても美味しかったが、

現時点で潰れかかっていた。

家畜の世話の報酬としてご馳走になれるミーアさんの料理は

とても美味しかったのだから、腕前どうこうの話ではないようだ。


原因はオーナー夫婦の食材の仕入れを担当していた旦那が亡くなり、

これまではなかったライバル店が

村長の息子により先月開店したこと。


村長の息子を六太はちらっと見かけたことはあったが、

きっとあれは職業山賊と思われたいのだろうというのが感想だ。

顔も全身から発せられる雰囲気も山賊寄りであった。


「(これってやっぱりミーアさん狙われてるよな……)」


村長の息子のおかげでカンガール食堂は大赤字。

いくら腕が立つ料理人が居ても、

使える食材がなければどうしようもない。


ならばと、食材調達に手を挙げたのが

ガスティであるが、この一週間ほど狩りでどうにか

こうにか頑張ってみたモノの、

小さい獲物が3匹ほど。

ガスティの割には頑張った、と六太やミーアは評価してくれる

ものの、この程度では店の食材としては足りない。


「お店で出すには量が少なかったけど、

 今はお客さんも少ないから。

 ありがとうガスティさん」


「だめだっぺ。

 こんなんではギルやミーアさんに受けた恩には

 報いられたとは言えないっぺ」


自身で食べるためなら、大して獲れなくとも

気に病むことも大してない。


しかし、カンガール食堂の食材調達業務を引きうけた身としては

それでは気の小さいガスティでも

そのまま引き下がるわけにはいかないかった。


「隣の村まで食材調達に行くっぺ」


男の宣言をガスティがミーアと六太、シャルにすると

彼の行動は速かった。


あっという間に荷物をまとめて飛びだそうとした。


「待って!!」


ミーアがガスティを呼び止める。


「止めないでほしいっぺ!!

 これは男の意地だっぺ」


「でも外はもう夜だし、危なすぎます。

 行くのならせめて早朝に出て下さい」


「…………はい……」


周りが見えない状況になってしまっていたことに気付き

恥ずかしそうにしながら、ガスティはその日は自宅に帰り翌朝早く出立した。


「おいおい、また南の街道に賊が出たんだとよ」


ガスティを見送り、六太が日課の家畜の世話をしていると

森へと向かう冒険者の話が聞こえた。


「なら賞金また上がったのか?」


「30万ジェジェだったか、そろそろ狩り時かもな」


「でもよ、何人いるかもはっきりしない状態で

 そんなクエスト受けるよりまだ樹海の探索の方が儲かるだろ」


「そうだな」


二人組の冒険者の姿が森の中に消えていく。

ガスティは片道1日程度だからそんな大した距離じゃないからと

それほど旅路の心配をしていなかったのが、

六太には少し気になった。


しかし、既に出かけていった以上、

自分がやるべきことは家畜の世話と森への植物採集。

いつもより気合を込めてやろうと六太は思い、

ヤギニワトリの排泄物の処理に精を出す。


無事帰って来て欲しい。

この世界で唯一の家族だから。




家畜の世話を一通り終えると、六太は卵とミルクを持って

カンガール食堂に向かう。

卵もミルクも落としたら共に簡単にダメになるため、

慎重にゆっくりと運ぶ。


カンガール食堂の裏に周り、厨房の扉から荷物を運び込み終えると一安心。

ふぅー、疲れたというよりまた今日も家畜の世話を完遂したという達成感。


「ここに置きますね」


客席の掃除をしていたミーアが、六太に労いの言葉をかけてくれる。


「ありがとう、大変だったでしょ。

 毎日朝早くから家畜のお願いしちゃってゴメンネ」


「いえ、家畜の世話とか初めてやるんで、新鮮で楽しいです。

 それに困っている時はお互い様ですし」


「……ありがとう。

 でもこの前怪我したばかりなんだから

 辛かったら休んでね」


あんまり優しくされるのには慣れていない。

六太にとってこの世界は危険や貧しさがそこら中にあって

恐怖と不安を感じることが大きい。

しかし、それでもガスティやミーアさん、この村の多くの人は

皆親切で居心地がいい。働きがいもあるというものだ。


ミーアさんからお昼用の弁当を貰い、六太は家に戻る。

お弁当はサンドイッチなので温かくはないが、

そのお弁当を持っていると温かく感じる。


これから六太が向かう苦手の森での植物採集も

がんばれそうな気になってくる。




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